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平松伸二先生のデビュー作『勝負』、オリジナル版とジャンプ掲載版の相違点

※この記事は5/31の夜の更新だったのですが、6/1の昼に、全体的に少し加筆修正しました。

 

平松伸二先生のデビュー作『勝負』

平松伸二先生は、『ドーベルマン刑事』『ブラック・エンジェルズ』『マーダーライセンス牙』といった作品で知られる、人気漫画家です。

このnoteでも、これまで『ラブ&ファイヤー』『キララ』『そしてボクは外道マンになる』といった平松作品に触れました。

平松先生のデビューは、高校1年生。

15歳で描いた読切『勝負』でジャンプの月例賞の佳作を取り、それが『週刊少年ジャンプ』1971年50号に掲載されたのでした。

(その後、19歳で『ドーベルマン刑事』の連載を開始。デビューも成功も早かったです)

デビュー作の『勝負』については、『ゴッドサイダー』の巻来功士先生が言及したこともあります。

巻来功士先生の自伝的作品『連載終了!』

巻来功士先生は、平松先生の3歳年下。
中学生のときに平松先生の高校生デビューを目の当たりにして、自分も同じように高校生でデビューするぞ! と目標にしたようです。

(平松先生の『ドーベルマン刑事』『ブラック・エンジェルズ』が1975年~1985年で、巻来先生の『メタルK』『ゴッドサイダー』が1986年~1988年なので、ジャンプ読者視点だと、もっと世代が離れてそうなイメージだったりします)

 

『勝負』の2つのバージョン

そして、平松伸二先生の自伝的作品『そしてボクは外道マンになる』でも、『勝負』について触れているのですが……。

実は、このコマには、少しだけ事実と異なる部分があります。

というのも、『勝負』という読切には2つのバージョンが存在していて……。

 

■平松先生が新人賞に投稿して佳作に入った、オリジナルバージョン

(単行本『地上最強の男』収録)

 

■それをジャンプに掲載するために描き直した、リテイクバージョン

(週刊少年ジャンプ 1971年50号 掲載)

 

『そしてボクは外道マンになる』では、「ジャンプに載った」と喜んでいる場面なのに、実際に掲載されたリテイク版ではなく、オリジナル版の絵になっております。

それから、この『ジャンプ』1971年50号の表紙も、実際には『男一匹ガキ大将』だったのですが……。

『そしてボクは外道マンになる』では、『勝負』の収録された単行本のような表紙のジャンプになっています。

……って、クッソどうでもいい揚げ足取りで申し訳ありませんでした。
いんだよ細けえ事は。

※「いんだよ細けえ事は」
『ブラックエンジェルズ』で死んだハズの松田が、『マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ』に登場して、どうしてマシンガンの弾丸を頭に食らったのに生きているのかを聞かれたときの説明。
松田が生きていたら色々な描写が矛盾しまくるのですが、すべては「いんだよ細けえ事は」の一言で済まされたのでした。

 

『勝負』の単行本収録

さて、平松伸二先生の受賞作『勝負』は、2002年に発売された『地上最強の男 平松伸二短編集』に収録されました。

私たちは長い間、1971年に『ジャンプ』に掲載された「リテイク版」しか知らなかったのですが……。
2002年になって、完全未発表作として「オリジナル版」が出版されたのでした。

この本は電子化されて、Kindle Unlimited で読むことができますし、スキマでも無料で読めます。

(これらでは、インタビューなどの「漫画以外の部分」をカット。
「本書に収められているのは、誌面に掲載されたものとは別ヴァージョンのオリジナル版である」
という説明部分もなくて、収録作がどういう背景のものなのか分かりづらいです)

と、現在では、投稿されたオリジナルバージョンがネットで無料で読みやすくなったのですが……。
逆に、1971年に『ジャンプ』に載ったバージョンの方が幻になっております。 

 

相違点

そんなこんなで、オリジナル版とリテイク版を見比べてみたいと思います。

以下、『勝負』のネタバレが含まれます。
(スキマでオリジナル版が無料で読めるので、この記事を読み進める前に、そちらで普通に読んで欲しいと思っております)

 

冒頭

2つのバージョンを比較すると、1ページ目からこんな感じ。

←オリジナル版(投稿された受賞作) リテイク版(ジャンプに掲載)→

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