愛を食べる鳥

それは不思議なモノだった。
鳥の巣の中にある、キラキラとしたモノ。
卵型をした琥珀。
中には鳥のヒナの姿が見える。
それと少しの液体。
これは1週間前にとある鳥-鳥と言って良いのか分からないが-が産んだモノだ。

その鳥っぽいナニカは、クオンッと空に向かって一声鳴いた後、中が透けてみえる程薄い琥珀の卵を、巣の中に5つ産み落とした。
中には液体が揺らめいている。

私がその姿を見れたのは運が良かったとしか言い様がない。
たまたま来た山で、たまたま足を運んだ先にあった大きな、大きな鳥の巣。
そこにいた鳥っぽいナニカ、いや、彼女に私は一目惚れをした。
夢見るようにフラフラと近づき、私より大きな彼女の首へと腕を回す。
そのまま彼女へ愛の言葉-恥ずかしいのでどんな言葉かは言わない-を3日3晩囁き続けた。
彼女は私を優しい目で見つめて、その柔らかな羽毛で包み込んでくれた。

4日目の朝の事だった。
彼女が空を見て鳴いた。
太陽の光を集めた琥珀の卵を5つ。
彼女はゆっくりと時間をかけて産み落とした。
私はその美しい光景を見つめる事しか出来ない。
彼女にしたように、産まれた卵にも愛の言葉を囁く。彼女は私の愛の言葉を聞くと、満足したようにするからきっと子供達も喜ぶはず。
甘い甘い言の葉で彼女と卵を包み込んでゆく。
産後の彼女は元気になったし、卵の中の子供達の成長も、心なしか早く感じる。

しかし、私はもう、10日も口の中に何も入れていないので限界に近い。
子供が産まれる所を見てから死にたかったな。
「嗚呼、愛しい貴方。どうか私を食べて。」
彼女が口を開けた。

クオンッ

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