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【小説】原稿用紙殺人事件
万年筆に青いインクを入れた。
まっさらな原稿用紙に、カリカリ、カリカリ、物語を書き込んで行く。
あんなに真っ白だったのに、しばらくすると真っ青になった。
元々紙の様に白かった顔が、私のせいで真っ青になったのだ。
なんて、人に例えてみたりして。
「あ。」
ポタリ、青いインクが落ちた。吸い取り紙で抑える事をすっかり忘れて、手で拭いとる。
インクがズッと伸びてしまった。
「嗚呼、これは原稿用紙殺人事件だな。」
被害者は原稿用紙。
加害者は万年筆。
被害者の原稿用紙さんは常日頃から万年筆被告に傷つけられ、青い血を流していたと言います。
元は真っ白であったろう肌は、傷の無い所を探す方が難しい程に痛めつけられていたとか。
怖いですねぇ。
万年筆被告は、原稿用紙さんに私の物であると言う印を付けたいと言っていたとか。
ワイドショーの様に言ってみようと思ったが、これが中々難しい。
まだ白い所が残る原稿用紙を見てため息をつく。
現実逃避だ。分かっている。
現実から逃げ出した頭は止まらない。
どうでも良い、取り留めもない事ばかり、次から次へと頭の中に浮かんでくる。
まっさらな原稿用紙。
私は万年筆で一体何枚の、彼、又は彼女、を殺して、青に染め上げてきただろう。
後ろを振り返ると、真っ青になった、床に散らばった原稿用紙達が、私を恨めしそうに見てくる。
そんな気がしてきた。
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