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一反木綿の空

今は、外に出ずに出来る事が人気だ。
自分の為だけの1人喫茶擬きも、その内の一つである。
自分の為だからこだわって、映える雰囲気に料理を仕上げていく。

今日はお子様ランチをイメージした、爪楊枝の旗の立ったオムライスと、メロンクリームソーダ。
オムライスは、ごろごろチキンのケチャップライスの上に、ぽたんとした葉っぱの形の卵の座布団を置く。
メロンクリームソーダ、グラスに氷と、かき氷のメロンシロップ、ソーダ水を入れる。
バニラアイスを、丸くとる事が出来るスプーンで、掬って置く。ここが肝心。
失敗すると、アイスが沈んでしまうからだ。
最後に赤く染められた、小さな缶詰のさくらんぼを1粒。完成だ。

オレンジ色のダウンライトを付ける。
スマホでカシャリ、トイカメラ風に出来るアプリで撮った。
中々だと思う。

オムライスを1口、うん、我ながら美味しい。
オムライスを食べ終わる頃、メロンクリームソーダの方を見ると、バニラのアイスクリームが少しづつ溶けて、メロンソーダの中に一反木綿の様にたゆたっていた。

ヒュルゥリ、ヒュルリ、一反木綿は緑色の空を飛ぶ。
空気の弾丸に撃ち抜かれ、千々に千切られながらも。
こんなに楽しい事は無い。
そう言ってはばからない。

嗚呼、なんて自由なのだろう。
グラスの中という、極めて狭い空なのに、いや、だからこそ、こんなにも一反木綿は自由なのだ。

いつの間にかアイスクリームは全て溶け、1粒の赤いさくらんぼが、薄緑になった空へと沈んでいった。

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