ななふしで笑う

付き添い入院の余韻が抜けない私
入院中のあれこれを人に話したいけどその機会がない

聞いて欲しい

旦那は共感、傾聴タイプではないので
話してもイラっとするだろうなって思うから
ここに書いて出して昇華していこうと思う

小児の発熱外来受付ぎっりぎりに飛び込み
人の体温くらいの逃げ道がない暑さの中
15キロを抱えあっちこっちダッシュしてドッロドロの汗だっくだくで
鬼涼しい顔した受付のねーちゃんに保険証と診察券と受給券を複雑な感情で渡して
これまた涼しい顔して

「こちらのQRコードから問診票に入力してもらって車内でお待ちください」

って手にこれ以上何を持てというの状態の私に紙切れを手渡され
でもにこやかに正気を保った風を装ってないと気分が折れちゃいそうで

「あーーー、間に合って良かった!はい!わかりました!」

ってバグった声量で答え
くったりした娘を抱え車内へ戻り
いつ吐くかもしれん、機嫌の不安定な娘を宥めつつ
問診入力して1時間
いや、マジで医療従事者の方お疲れ様すぎる
でもお願い急変されたら病院の駐車場でもパニクるし
ここに来るまでに相当精神ボッコボコだから
怖い、勘弁して、早く、お願い
私は間違わず電話番号入力したのか??
電話かけるか??
と限界を迎えるタイミングで電話が鳴った

助かった

もうぐったりを通り越した娘を抱え
診察室へ

診察の結果即点滴になるのだが
少し準備があるから申し訳ないけどと追いやられた外のテントで
ブオーっと音を立てながら回る巨大扇風機の首振りに合わせて
抱っこしながら左右に移動してたら
2人の看護師さんが目の前を通り
そのうちの1人が入口の壁を見て

「あーーーーー!!!!!ななふしだ!!!!」

ななふし?ななふしってあのほっそい棒みたいなやつ?
珍しいよなってか
そこまで田舎ではないこんな病院の片隅にいるのか
などと考えてるうちに
興味が全くないもう1人の看護師はさっさと院内へ入り
興奮した声を上げた方はやおら手を伸ばしななふしを手に乗せた
そしてこちらへ近づいてくる

やめてくれ

でもその看護師には全く当たり前だが悪意はないし
少しでも和ませようと来てくれた

訳ではなかった

そこからその看護師の彼女は滔々とななふしへの愛を語り出した
思わずぐったりしていた娘も顔を上げその看護師さんとななふしを見る

「あ!お熱あるよね!ごめんね!でも可愛いんだよ」

か、可愛いか??
と思いながら良くみる
うん、可愛くない
昆虫苦手だからなんなら怖い

でも不思議なんだけど
昆虫好きな人の手の中にいる虫はそこまで怖くないの
なんでだろうね?

「私ななふし大好きなんですよー昔飼ってて」

ぶほ

あまりにも予想外すぎて笑ってしまった

飼うものなのか
ほほーと思ってる私に

「でもななふしの餌取るのが大変でぇ」

と畳みかけてるところに

「あ、準備できましたー中へどうぞ」

と呼ばれてしまい
その彼女は「ななふし大好きなんですよ」と言った
笑顔とテンションで
「お熱ね!頑張って!お大事に」
と見送ってくれた

で、いったいなんの話やねんなんだけど
あの予想だにしなかったななふし飼ってた発言に
本気で驚いて笑えてしまった
笑える気分じゃなかったのに
でもそれになぜか救われた自分がいて
ななふしを笑って救われるってなんだろうな

そう思った話

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