私的映画ランキングトップ100をレビューする 第93位「ゴジラ」

”怪獣王”っていう肩書、あまりにも格好が良すぎる。
デカいゴリラごときに負けるわけがないんだよなあ。

ハリウッドの殿堂に入っていたり、TOHOシネマズ新宿?かどこかの看板モンスターを務めていたりもしている、日本が世界に誇れるあの怪獣映画の元祖ですね。もはや語るまでもない。

この映画について語っているところなんてもうそれはそれはいくらでもあるので、あまり堅苦しいことは書かないように意識しながら進めていこうと思います。

1954年、戦後間もないころに公開された本作ですが(なんと同時期に七人の侍も作られていたらしいです、すごいことですね)、時代が時代と言うのもあって戦争の名残をバリバリに感じられる一方、現代まで続くいわゆる「怪獣映画」としてしっかりエンタメになっているところがここまで語り継がれる所以ですね。

今でこそ「怪獣映画に人間ドラマなんて要らねえんだよ!」と思いがちで思われがちなものですが、今作はゴリゴリ人間パート長めでしたね、まあ初めての怪獣映画なんで世界観の説明に多くを割くのも当然と言えば当然。

なんというかさすが円谷プロが生まれた国だなあと感じるのはアレですよね、登場人物のとか設定とかがいちいち外連味があるというかね、眼帯してたりね。そういうところでエンタメを見せてくれると気持ちのいいむずがゆさがしてたまりませんね。

戦争はいけませんよ・核兵器はいけませんよというメッセージ(こんなものはわかる人にだけわかればよいのだ)を持たせつつ、ゴジラという「人知を超越した生命」に対してどのように向き合うかを右往左往しながら選択していく人たちの描き方、もうこれは全てのモンスターパニックものの原典と言っても過言ではないでしょう。

人間パート多めと言いながらも、ゴジラ様の大暴れっぷりも十二分ですね。
特に電波塔?だかそんな感じのものが溶けていくシーンとか、国会議事堂をぶっ壊すシーンだとか、ああいうのってやっぱ現地に住んでるともっと楽しいんだろうなあって思いますね(電車咥えてるやつは84年だかそこらへんのバージョンだった気がする)。

というか当時はあれを壊すだこれを壊すだなんてお約束もなかったろうに、「もっと壊せー!」と見ていてすっきりするような破壊描写ができているの、何気にすごいですね。

それに関係して、やはり壊される側の気持ちも今とは違って「なんでうちのビル壊すの!!」とキレられたりしていたようで、今なんてもうゴジラ様に壊していただけるなど恐悦至極でございますってレベルですよね。違うか。

設定では50メートルとそーんなに大きいわけではないですが、日本の特撮のいいところであるミニチュアの技術と計算された画角だなんだ、とにかく怖がらせてやろうという狙いをしっかり通せるバトルシーンになっています。

当時の人たちがいうには「ゴジラは赤かった」だのなんだの、まあつまるところ白黒映画にとどまらないレベルでのリアリティもあったようで、正直今見ればちゃっちぃ着ぐるみではありながらも恐怖感と言う点では引けを取らないものがあったということです。

オチのつけ方も有名すぎてアレではありますが、おなじみもおなじみ「オキシジェンデストロイヤー」ですね。どうやらゴジラの明確な死を描いている作品というのはめちゃくちゃレアらしく(これとVSデストロイアくらいらしい)、1作目にして「ゴジラは生きている」という確固とした設定があるゆえ、問題が解決してめでたしめでたしなはずなのにどこか切ないという味のある終わり方ができているのでしょうね。

今作がもたらした影響はとてつもなく大きく、この手の作品はどのジャンルでもそうなんですが、1作目でここまですげえもんを出してしまうと、シリーズや界隈にとって「呪い」になってしまうんですよね。
ゲームで言えば3Dアクションにおける「時のオカリナ」と言った具合で、今後すべての同ジャンル作品が比べられ、越えられないと嘆かれてしまうようになります。嬉しやな悲しやなってこと。

ゴジラ、それどころか「怪獣」なんていう概念がそもそも浸透していなかった時代に作られている以上、今になってこの衝撃を超えることはもはや不可能に近いです。「シン・ゴジラ」が今までのゴジラをすべてリセットし、新しいゴジラを作ってはいましたがそれはそれ、結局いわゆる”原点にして頂点”がビシーーッとあり続けているのはちょっと難しいところです。

本ランキングで白黒映画ほど昔に公開された作品はあまり多く登場しませんが、基本的に、基本的に映像作品や娯楽作品なんかは「時代が進んだもののほうが面白くて当然」という考えでランキングを作成しています。
ただし、その作品一つ一つは「その時代に生まれたこと」に意味があるので、今になって見てみるとしょっぼい着ぐるみやチープな特撮映像と言われるようなものは、50年以上も前に同じことをやろうとしていたすげえ奴らが居たからこそ感じられるものです。

きっと今後この映画より面白い映画、怪獣映画はたくさん作られると思います。しかし、この映画にはこの映画にしかない価値が間違いなくあります。端的に言うと比べるだけ野暮な話だということなんですが、ランキングにしちゃってる以上しょうがないですね。歴史ってのはそういうものなのだ。

・おわりに

映画史に煌々と輝く偉大なる怪獣王様のデビュー作、それだけで見る価値があります。
残念なことにここからゴジラシリーズは迷走、そして復活を繰り返し一時はシリーズ休止、今もシン・ゴジラ以降邦画ででっかいゴジラは作られていません。
ハリウッドのゴジラさんが頑張ってくれているのでそれはそれで嬉しいお話ではあるのですが、ぜひ本場のゴジラをもう一度世界に見せつけてやってほしいものですね。

次回、92位は時間の大切さを知るあの映画です。
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。


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