私的映画ランキングトップ100をレビューする 第95位「明日、君がいない」
タイトルがもう不穏ですね。
※記事下部に重大なネタバレを含みます。
まさかとは思いますが読んでしまって興味を持ってしまってかつネタバレが嫌な人はご注意ください。
恐らく今回のランキング内で一番を争うマイナー作品だと思います。
ムラーリ・K・タルリというオーストラリアの監督が撮った作品で、他には長編映画とかに関わったことはない監督さんだったはずです。
今作のテーマは「若者の自殺」というあまりにもヘビーなもので、監督自身の体験をもとにリアリティ満点で撮影されたティーンエイジャーたちの映画になっています。
これがカンヌだかどこかの映画祭で絶賛されたらしく、まあ悪く言ってしまうとフランス人が好きそうな映画ってことなんですかね。いやすごい映画なんですけどね。
お話が始まって早々に、2時何分か(原題になってるアレです、忘れちゃった)にこの学園の誰かが命を絶つということが明らかになり、そのあとは複数の主人公たちのドキュメンタリー的な映像と共に過去を振り返りつつストーリーが展開していきます。
この主役に当てはまる何人かのティーンエイジャーたちなんですが、こいつらがそろいもそろって何かしらの問題を抱えているがゆえ、誰がいつ死んでもおかしくないなというまるでサスペンスでも見てるんじゃないかというレベルの緊張感が常にあるんですよね。
どこに伏線が張ってるんだろうとか、こいつとこいつの絡みがこいつに影響して……とか、とにかく小さなヒントでも見逃さないよう、本人たちの発言やバックボーンから推理を進めていくことになります。
映画全体の尺はそんなに長いわけでもないんですが、一人一人の描写が生々しすぎるほどにしっかりしているため、誰が見ていても「こいつやろなあ」と予想できるように仕組まれているのがお上手なところですね。
※改めて、以下ネタバレ注意です。
そんなこんながあって原題の時刻がやってきて、登場人物のとある人が死んでしまうわけなんですけど、これ恐らく見ている人9割9分は裏切られるというか、予想できないと思います。というか予想させないように作ってます。
「え、誰?」とか「なんでこの人が?」とかなっちゃう人もいると思います。
確かにここまでのお話に登場していて、確かにそこに生きてはいた人物なんですけどね。実際自分で見ていた時も「えっ??」ってなりましたもんね。
ただ、これが狙いなんだと思います。この「えっ」「なんで?」が重要なんだと思います。自分もこの監督さんと似たような経験をしているので偉そうなことを言うと、”わからない”んですよね。
前触れとか、サインとか、そういったものは本当にわからない、本当に急に、いきなり頭をぶん殴られたような衝撃がやってくるだけです。
この映画の登場人物たちは、先述の通りどいつもこいつもろくでもないようなもんばっかりです。いじめいじめられ、あれやこれややらかし、まあ若さゆえのあれやこれやなんでしょうけど、本当にいつ死んでもおかしくないんですね。
そんな彼らに意識を向け、感情移入して見ていれば見ているほど、その人のことには気づかないし気づくようにできていない。
確かに姿を見ているし、顔も知っているし、声も聴いたことがあるし、どんな人なのかもわかっていたはずなんですけどね。
まあ本当に救いも何もないというか、その衝撃がリアルすぎるということで軽はずみにお勧めできるような映画ではありませんが、こういうヒューマン系の至りのような作品に興味があれば是非といった感じですね。
心の揺さぶられ具合は間違いありません。
・おわりに
重すぎるお話なので意識して簡潔に済ませようと思います。
好きな作品、と言うとちょっと違うんですけど、間違いなく心に残る映画なので今回トップ100の作品に入れました。
これ個人的によく使う表現なんですけど、人生が1本の映画だとして、そのエンドロールに入る1人……映画だとどうしたらいいんだ、スペシャルサンクス??まあそんなとこですね。うまくまとまったな!
次回、94位はクソデカドダイトスのあの映画です。
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。
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