私的映画ランキングトップ100をレビューする :Extra「RRR」

”ナートゥ”をご存じか??

インドが誇る創造神でもおなじみ、ラージャマウリ監督が手がけた曰くインド映画史上最高規模の予算で作られたというこの作品。いたるところでやれ「見るサウナ」だの「見るエナドリ」だの「見るビッグマックならぬメガマック」だの言われていますがそれも納得と言った圧倒的な濃厚映画体験でございました。
明日か今日から各地でIMAX上映が復活するという事もありまして、これはこれは是非とももう一度浴びるしかねえな!といった趣。
正直トレーラーの時点で「こいつはやべぇぞ」というオーラがすごかったんですがね、いやはやということで早速思いつくままに行きましょう。

・タイトルのお話
おもろいですよね、序盤も序盤から「FIRE」「WATER」って露骨にRを際立たせてくるアレが出てきてフフッとなるんですが、いやだとしてもそのタイトルはいったいどういうアレで付けたんですかね……?
極めつけは今作のダブル主人公たるラーマとビームがガシっと手を掴むところでR!R!R!……いやなんで????

・かっこよすぎるアクション
再序盤でラーマの狂気というか意志のパワーを感じさせるバトルシークエンスがあるんですがのっけからやべえなっていうかね、ここ、警棒を持った男1人VS弾圧されていた群衆数千人といった戦いでね、しかもこれ警棒を持った男って本当にただの警棒を持った男なんですよ、だから普通に死にかけというかいや、死ぬんじゃない??みたいなボコられっぷりをしながらもなんやかんや勝っちゃうというか目的を達成しちゃうというのでまあびっくりと。
そしてダブル主人公の出会いのシーンはこれまで何の面識もない二人がアイコンタクトとハンドサインだけで意味不明な救出劇を一切の狂いもない連携でやってみせ、なんやかんやあって川底をノッシノッシで腕と腕をガシッ!でタイトルがバーン!!!……最高か????
その他もブリカス共の宮殿にアニマル連合と突撃したり(アニマル共が初手叛逆かますのも好き)、ホークアイ顔負けの弓矢アクションとかバイクを鈍器として使っちゃうところとかね、外連味の塊みたいなゴリッゴリのアクションがもう目白押しですよ、これでいいのよこれでね~~!!!

・他にもいろいろ
使命か、友情かっていうまあこれはたぶん後で語るんであれですけど、二人がアイスクライマー並みに二人で一つなマブダチになった後のアクションももうね、かっこよすぎて別の意味でフフッとなってしまうこと請け合いですわな。
特に映画終盤の肩車バトルはもう何と言いますかね、全部「いやそうはならんやろ」っていう面白アクションが目の前で起こっているはずなんですが、そこに至るまでの物語があまりにも熱すぎてなぜか感動の涙が流れてしまうというね、いやほんとアベンジャーズみたいな感動ですもんねあれはね。

・使命か、友情か
ここもお上手なんですよね、ラーマとビームはそれぞれお互いには話せない、話しちゃいけないような暗い過去と背負った使命があって、それがやがて二人を引き裂いてしまうのか……!?みたいな展開になるんですけども。
ここのところも描写が丁寧すぎるほどに丁寧なもんでね、まあ細かいことは置いといてラーマとか普通あれヴィランじゃないですか?途中のビームに対する振る舞いとかあれやこれやとか、普通だったらビームが主人公でラーマとの決着、それを乗り越えてやいのやいのってお話になると思うんですけど見事にダブル主人公どっちも際立たせる脚本によってそんな悲しい展開にはならないんだな~~これが。
使命か、友情か、いやどっちもやろ!!という贅沢メガ盛りなストーリーは例えるとするならさながらメロスとセリヌンティウスというか、あっちはちらとでも疑った俺を殴れっていう感じでしたけどそれですらなかったですね。使命に囚われて曇っていたラーマの目が覚めてからというもの、許すとか疑うとかそういうんじゃねえぞと、そんなもん野暮だろうと、お互いがお互いの行動に突き動かされて再び巡り合う絆といいますか何と言いますか、もうね、泣いちゃう……。

・ちょっとここで
この手の映画って「全編クライマックス」とか「体感5分」とかよく言われるじゃないですか。
ここでこの記事シリーズを良く読んでいる狂人の方ならお前またその話か?ってなると思うんですけどまあそんな人いないんで言いますが、いやそんなわけないやろと、今作もそうですよ。
まあ確かに盛り上がりどころはいっぱいありますが別に全編クライマックス…か……?ってところで、まあ回想シーンもクライマックスだっていうならそりゃそうなんでしょうけどね、さすがにマッドマックスだって全編クライマックスじゃないんだから盛りってもんよ盛り。
しかも体感時間で言えば何なら3時間より長く感じたというか、こんだけ濃密なものを見たのになんで3時間しか経ってないの??っていう方で不思議な感覚でしたね、体感3日くらいは浴び続けていたような気がするという相対性理論のようなお話でした。

・音楽の力って、すげー
音楽というか歌なんですけどすごいっすねこれは。
タカチャカタカチャカ言っているアレとか、コムラムビーム言ってるアレとか、ラーマ!ビーマ!なアレとか、場面場面で流れる歌たちがこれでもかというほどに気持ちを盛り上げてくれるもんでしてしかも一個はダンス付き!せっかくなのでこの話はもう少し後にしましょう。
個人的なお気に入りはやっぱりビームのあのシーンで、序盤にラーマが警棒1本で群衆をしばきまわすシーンがあるんですけどあれとの対比になってるんですよね??
こちらもこちらで群衆の前でむち打ちの刑に晒されながら、抵抗する事なく最後は歌、歌で群衆の心を動かしそしてラーマの心をも突き動かすという。まさに今作でビームに与えられている水の属性、火にして剛のラーマの対とでも言いますか、さながら北斗の拳のトキのようなね、あれですね、「激流を制するは静水……」みたいなね、もうトキ好きとしてはあの辺からビームがトキに見えて仕方ないんですわもう、ラーマとの関係もちょうどラオウとのそれっぽいですもんね、まあラーマそんなに悪い奴じゃないんですけど。

・”ナートゥ”をご存じか?
そんで今作の歌を語るうえで欠かせないのがこのナートゥなんですよ!インド映画には必要な要素が4つだか3つだかありまして、1つがダンス、そしてもう1つがええと…まあダンス、そしてもう1つがええと…なんだったかな……まあダンスかな、そして最後はまあダンスやろということでダンスが大事なインド映画なんですけれどもね、今作ももちろん踊ります!
そして少なくともぼくが知っているインド映画ってのは大体急に踊りだして急に歌いだしてそれがまあまあ楽しかったりもするんですが、今作のそれは上手い事物語の中にダンスが組み込まれていて、それに必然性があるっていうのもまたお上手ですね。
鬼畜ブリカス共に差別されているという時代背景的な設定を用意した上で、貴族めいた英国紳士と勃発するダンスバトル。「これがタンゴ!そしてこれがフラメンコ!」みたいなイキりムーブをかますところに「おぬしら…ナートゥをご存じか?」とふっかけていくことになりますが、ここのね~お盆を蹴っ飛ばしてドラムをかき鳴らすところとか「えっ!?セッションのラストシーン!?」みたいな気持ちよさがすでにありますし、そこから始まる圧倒的なナートゥがもう、この記事を書いている今でも頭の中を離れてくれなくてもう……。
そこからはもうキレッキレのダンスが続いていくのかと思うとさっきの生意気英国紳士がナートゥバトルに参戦してくれなんやそれ!と笑う間もなくノンストップダンスバトルが続いてね、最後はラーマとビームの一騎打ち!ここも二人の友情が大爆発する決着を迎えますのでね、気持ちいいったらありゃしないんですわ、まあその後殺し合いレベルの喧嘩するんですけど

・そのほかいろいろ(終わりに)
お前ら不死身なんか??とかラーマの矢は無限なんか?とか何なら最後ちょっと矢余ってて草とか、腹立つな~こいつ死なねえかな~みたいなやつが全員見事に気持ちのいい死に方してくれて最高やな!とか、想像していたハッピーエンドよりもはるかにハッピーで終わらせてくれたな!とか、もうここがいいよねって語っていると止まらなくなってしまうんですわ。
あとこれはひとつ悪いところというか寂しいところではある…というか自分の浅学さが招いた結果でしかないんですがね、インドの歴史とか言語とか全然知らないもんでして、あのエンドロールの歌の背後に出てくる偉い(であろう)人々とかガンジー以外さっぱりわかんないし(さておきあの見せる気が一切ないエンドロールめっちゃ好き)、劇中歌も字幕が無いと何言ってるかさっぱりわかんないしっていうのがね、やっぱ寂しいんですよね、英語だと多少は何言ってるか分かるんですけど難しいですわ。
世界史レベルの知識でも十分楽しめるとは思いますが、インドの歴史、そしてインド映画の歴史とかそういうのをがっつりわかっている人だと楽しさ一億倍くらいあるんではないかというめちゃくちゃにポジティブな不満点でございました。

ということで次回があるとすれば破壊神が降臨するらしいあの映画になると思います、それかMCUのドラマかな~。
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

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