私的映画ランキングトップ100をレビューする 第23位「JOKER」

皆って誰?誰と話したの?

名演が多すぎてハードルの高さがえらいことになっているのでもおなじみ、DCコミックを代表する圧倒的ヴィラン、”ジョーカー”のその誕生を描くダークな作品でございます。
ジョーカーのオリジンってのはだいたいバットマンとのあれこれで薬品槽に落っこちたりなやいのやいのがあって~って感じなのですが、今作ではそのような原作設定に全く縛られない新しいオリジンを描くというのでも話題になりました。
公開当初はあまりにも賛否が別れたり、一部の劇場では上映中止にされたりと、あまりにも”ジョーカー”らしい映画になっているなといった印象、それでは思いつくままに行きましょう。

・くっっっっら
暗い!びっくりするほど暗い!!
悪のカリスマことジョーカーさんにこんなオリジンがあったとなるとちょっとこれ同情しちゃわない?ってくらいには暗い!!
映画開始早々におやじ狩りのような目に遭った挙げ句仕事を失うという、ッリアルであればもうこの時点で色々と諦めてしまいそうな感じでもありますが、その後も主人公たるアーサー・フレックくんを襲うのは兎にも角にも悪いことばかり。
最終盤を持ってして一応彼がジョーカーとして今後のゴッサムシティに君臨することにはなりそうなんですけど、あまりにも暗いもんでこの映画はあまりこう精神状態のよろしくないタイミングでは見られないというか、そりゃまあ物議醸しちゃうよねって感じですね。

・キングオブコメディとかタクシードライバーとか
コメディアンに憧れていて妄想癖のある主人公、そんな彼が一夜の王としてやいのやいのという流れはまさに映画「キング・オブ・コメディ」そのもの。またアーサーが一丁の銃を手にすることから始まる革命の物語は展開に多少の違いこそあれど「タクシー・ドライバー」に通じる物があるというか、もう作ってる人がこの2本に影響を受けてるって言っちゃってますからね。
実際にこの映画を初めて見たときは上記2本を知らずに見ていたんですけど、改めて2本を履修した後に見返すとそれはそれでまた味わいがあるというか、どっちもロバート・デ・ニーロが主演なのもあってね、エモいというかなんというか、不思議な気持ちにさせられますね。

・無敵の人
結局今作は「失うものが何もない人から更に奪ってしまうときっかけ次第でこうなっちゃうかもよ」っていうお話で、あんまりジョーカーっぽくないといってしまえばそういう一面もあるのかもしれないですね。
コミックのジョーカーっていうとやっぱり何考えてるのかわからない狂気じみた雰囲気と、その高い知性でバットマンとのお遊びに興じる姿が人気を博している(と思う)ので、今作のジョーカーとしての振る舞いはあまりこう、っぽさは無いんですよね。
つっても終盤のロバート・デ・ニーロとの一騎打ちやアーサーの所々の振る舞い、最後の口元をぐいーっとやるあれとかはもう最高にジョーカーでしたね、そこら辺は演じているホアキン・フェニックスさんの力もあるのかもしれない。アカデミー主演男優賞も納得というものです。
しかしただでさえ緊張すると爆笑しちゃうという結構ヘビーな疾患を抱えていて、加えて貧困層で、介護が要るかどうかギリギリぐらいの母親との二人暮らしで、職を失って彼女も妄想で、そもそもの疾患の原因は母親の虐待で……ともう書き連ねているだけで嫌になってくるくらいの不幸が襲いかかってくるの、すごいですね、どこかで誰かが助けてあげていればな……。
そんな描写が積み重なったからこそ、母親を殺害した後の一連の流れにどこか開放感が出てくるのがね、この映画のニクいところでございました。

・デニーロ様との一騎打ち
先程もちょこっと触れましたけど今作の目玉バトルはこのデニーロ様演じる大物コメディアン、マレー・フランクリンとの一騎打ちシーンですね。
マレー主演のコメディ番組にお呼ばれされ、控室というか舞台袖でタバコで一服なシーンからいざ本番までのちょっとしたワンシーン、あそこもう綺麗すぎてびっくりしちゃいますね、後でもうちょっと触れましょう。
そこからはホアキン・フェニックスvsロバート・デ・ニーロの演技バトルとでもいうような趣、先述の無敵の人につながるすったもんだの末しびれを切らしたアーサーくんは隠し持った銃でデニーロ様の脳天をバーン!
ここからのアーサーくんの動きがもう素晴らしいの一言、貧乏ゆすりが加速するところとか、2発目を売ったあと銃を机の上にほっぽりだすところとか、最後にテレビカメラを持って~のシーンはダークナイトだ!とか、もうジョーカーだ!ってね、あんまりジョーカーっぽくないよねって言ってるそばからアレなんですけどもうジョーカーなんで、やっぱ俳優さんってすごいですわな。

・絵やん
ホアフェニさんの圧巻の演技もさることながら、今作はそのカットの1つ1つがもう絵なんですわ。
撮影監督さんはローレンス・シャーという方らしく、他の映画だと「ゴジラ:キングオブモンスターズ」とかもやってるらしいです。確かにどこか絵作りが似ている気がする。
基本的に画面にはずっとホアフェニ演じるアーサーくんが映っていることになるんですが、その間のどの一瞬を切り取ってもまるで一枚の絵画のよう。
特に映画最終盤のタクシーの上でダンスをして振り返るその一瞬を群衆の支店から映しているシーン、もうね~~あそこだけ無限ループしちゃうくらいには好き~~~!
その他にもタバコ吸ってやいのやいのだとか、もう事あるごとに「あっ、ジョーカーだ」みたいなカリスマを感じてしまう1枚があるのでね、自分は吸わないですけど吸ってる人とかはカッコつけたくなっちゃうような映画かもしれませんね。

・音のこだわり
ゲームランキングの方で音のこだわりがすげえみたいな話を良くするんですけど、この映画も音の一つ一つの臨場感がすごい際立っている感じがします。
ぼっろいポスト?を鍵を使って開けるシーンだとか、家のドアを開けるシーン、階段をのぼる足音、錠剤が入ったケースが転がる音、本をめくる音、そして銃を撃ったときの音、全部これASMRか??ってくらい臨場感たっぷり。ほら、ここからも(IMAX)。
最近の映画の中だと結構ダントツ気味に音が気持ちいい映画だな~って感じですね、他になんかあったら教えてほしいものです、誰が読んでるのか知らないですけどね。

・で、ジョーカーなの??
どうなんです?ジョーカーになったんですかね?
個人的には最後の最後、タクシーの上でほっぺたをぐいー!のところでやっとこさ「ジョーカー」として、ゴッサムの「王」として君臨したんだなという認識なんですけどここいらにも人によっては解釈の差が出てきそうなものです。
他のポイントがあるとすればやっぱり電車内の殺人~トイレでダンスのところとか、母親を殺したところとか、階段ダンスの前後とかありそうなもんです。まあそれぞれそこがきっかけだなって思う理由もわかるので、こういう解釈の違いも楽しんでいきたいところですね。

・おわりに
ベネツィア国際映画祭だかで金獅子賞を獲っただなんだと話題になっていて、実際にトレーラーの時点でもだいぶホアフェニさんの演技がどえらいことになっているオーラも出ていて「これはすげえぞ」という期待感がありましたね。
アカデミー賞の方では作品賞こそ逃したものの主演男優賞受賞はあまりにも納得、今作のホアフェニさんの演技はもう本当に圧倒的なもんでね、ヒョロガリすぎて心配になっちゃうぞ。
終始響き渡るあの笑い声がしばらく頭を離れなくなるのは誰もが通る道、そういえばDC映画最新作「ザ・バットマン」は特にユニバース的な展開はしないらしいですけど、実際ポスクレであの笑い声が流れようもんならね、もう嬉しくて気絶しちゃうかもしれない……!

次回、22位は今でも最高なあのダンスバトル映画(リメイク)です。
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

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