私的映画ランキングトップ100をレビューする 第2位「ダークナイト」

タイトルが、かっこよすぎる……。

さっさとMCUに参戦しろでもおなじみ、クリストファー・ノーラン監督が手がけた「ダークナイト・トリロジー」の2作目にあたる今作。
前作「バットマン・ビギンズ」からの続編ではありますが、別に今作だけ見ても何の問題もなく楽しめるくらいにはえげつない面白さですね。
公開されるや否やいたるところで絶賛の嵐だったらしく、その年のアカデミー賞候補にも選ばれなかったことでその後候補作の枠が増えることになり、文字通り歴史を変えてしまった偉大なアメコミ映画として語り継がれています。
中の人のあれこれもあって伝説になった”ジョーカー”とのバトルも最大の特徴。もうね、これ1位でも良いんですけどね、いやもう1位よ、ここ10本くらい全部1位。それじゃ思いつくままに行きましょう。

・タイトルのお話
すごいことしましたよね、バットマンの映画なのにタイトルに「バットマン」って入ってないんですもんね。
結果論みたいな感じになりますけどめちゃくちゃ上手い事行ってそうですよねしかも。シンプルに「ダークナイト」にすることでなんというかこの映画が持っている重厚な雰囲気がもうタイトルから伝わってくるというか、まずもうダークナイトっていう単語の響きが最高にかっこええやんというね、中二心をくすぐられてしまうぞ。

・ジョーカーの映画やんけ!
Tadaーーー!!!!
映画の開幕も開幕からジョーカーですからね。
音フェチには堪らない銀行強盗シークエンスですけども、前作での匂わせから直結して登場するピエロ一味とジョーカー、その顔見せのシーンももうね~~最高なのよね~~。
立ち姿というか動き方というか、別に顔にメイクがなくっても後ろ姿だけで、「こいつがジョーカーだ……」と分からされてしまう演技、壮絶がすぎるな……。
演じたヒース・レジャーさんはここで語るまでもないほどに知られている悲しい結末を迎えてしまったわけですけれども、かなわないとはいえ続編の「ライジング」にも登場するとこ、見たかったよなあ……。
今作以降、あらゆる作品で別の俳優さんがジョーカーを演じている訳ですけれども、やはり人は初めて見たジョーカーを親だと認識する生き物ですんでね、ホアフェニのそれとかニンジャバットマンのそれとかもめちゃくちゃ好きなんですけど、やっぱこっちだよな……。

・緊張感のお話
本ランキング企画で何度か話題に挙げているこれ、一番最初に体感したのはこの映画だったんですよね。
映画の尺としては2時間半くらいあって、最近の映画としてはまあまあ長めに設定されてはいるんですけれども全くそれを感じさせないようなドキドキの継続。
ヴィランのジョーカーは何を考えているのかもさっぱり分からないということでいつどこで何をするのか見当もつかず、初見だとどのタイミングでドカーン!となるのか分かったものではないのでもうずーーーーーーっとドキドキしっぱなしです。
そんでもっていざジョーカーが登場するとこれまたハンス・ジマーさん渾身の音楽が光る光る。特にレイチェルにナイフを突きつけての一連のシーンなんかはサイレンのようなBGMがこれ以上ないほどに緊迫した空気を出していて、呼吸すら忘れてしまうのだ……。
そんで、この手のやり口をしている映画って何度も見ていると展開も分かっちゃうもんで「ここ、なんか長いなあ」とか思ったりもするんですがね、今作はもう何回見てもず~~~っとドキドキしてて気づいたらもう船が爆発するかしないかみたいなシーンまで入ってるっていう、何このとんでもない映画??

・バットマンのお話
一応主役なのでこっちにも触れておきませんとね。
前作「バットマン・ビギンズ」でのラーズ・アズ・グールでしたっけ?な名前のヴィランとのあれやこれやを経て、歴代バットマンの中でもずいぶんと戦闘能力の高い仕上がり。そんな彼をジョーカーはどう追い詰めるのかというと「お前がバットマンでいる限りゴッサムで人が死ぬ」というまさかのアイデンティティから揺さぶりにかかる精神攻撃。有名な1vs1の尋問シーンでも彼は「You complete me」って言ってましたね、あれ?気づいたらジョーカーの話をしているぞ。
そんな「世界が燃えるのを見てただ喜ぶ悪党」とどう戦うのか、どう決着を付けるのかというのが今作のテーマになるわけですけれども、そこらへんにタイトル「ダークナイト」が絡んでくるのもこれまたオシャレなお話。
実際最後の最後にはジョーカーを追い詰めて捕まえるところまで行くんですけど、バットマンとしてはイマイチ勝ったのかどうか怪しいんですよね。ジョーカーに勝ったのはあくまでゴッサムシティの人たちであって、彼も言っていましたけど「永遠に戦う運命」なんですよ、だからさ…永遠に戦って欲しかったんだよな……。

・絵作りがすげえ
ジョーカーは終始バットマンやゴッサム市警を手玉に取って、もうそれはそれは好き勝手やり放題しているんですけども、よ~~く見ていると「さすがにそんな上手い事行くかね??」ってなシーンとか「それはさすがに荒唐無稽が過ぎない??」って思っちゃう場面もあったりなかったり。
ただここがノーラン監督のすごいところで、見ているとそんなもんどうでも良いというか考える暇なんて無いんですよね。絵面が面白すぎる上に話の緊張感もすごいんで、そういう細かい事に気づかないというか「面白さでごまかしている」っていうところなんでしょうか。
銀行強盗のシーンもそうだし刑務所から脱獄するところとかもそうだし、なんならあんな積み重なった札束にガソリンぶっかけて火をつけるてそら、お前漫画かよ!!って漫画だったよ!!
と、ここまでアメコミっぽさと重厚さのバランスを完璧に取れているっていうのもこれまた今作がクソ面白い理由の一つですね。

・レイチェルさん
中の人変わりました??
ローディの時もそうですけどやっぱこういうのは何の説明もなしにスッと変わってるってのがハリウッド的なやり方なんでしょうね、グリンデルバルドとかね。
後述するハービー・デントとのあれやこれやに巻き込まれて文字通り爆発してしまうわけですけれども、ここのシーンもジョーカーの影が…というかまあアイツが全部悪いんですけど腹の立つやり口ですね~~。
どっちを殺すんだ?と聞いて逆の居所を教えるというね、そりゃそっち行っちゃうやろ……。

・ハービーデント
where is Harvey Dent??
何かと居場所を探られがちな彼、ゴッサムに現れた「光の騎士」ですね。これもオシャレやなあ。
原作を知っている人からしてみれば名前が出た時点で「あっ」と今後の展開を察してしまえるんですが、なんと”トゥーフェイス”なるヴィランに生まれ変わってしまうというどんでん返し、とくに原作知らない人はひっくり返ってしまいますよこんなもん。
裏表の存在しない、両方が表であるコインにもあらわされている危うい正義感にまんまと付け込まれ、やはりというかジョーカーに見事に唆されてしまうのもこれまたねぇ、お上手ですよねぇ……。
さておき自らの運命や他人の運命すらもコイントスに任せてしまうというか、もう何も信じられない世界において唯一信じられるのが”運”っていう考え方はなんつーかかっこいいですよね、人気が出るのもうなずけるお話。
あとこれは余談なんですけどこのトゥーフェイスのビジュアル、中々にエグくないですか?CGの技術って、すげー……。

・船のアレ
映画も終盤も終盤、バットマンがついにエシュロンめいた監視装置に手を出し、無理やりにジョーカーの居所を突き止めたところで発生する最後のショー。
急に思い出しましたけどここのちょっと前のシーンであれこれあったウェイン社のヒミツをリークしようとしていたやつ、アイツ身の程の弁えなさが最高でおもろいですね。
話を戻しまして、簡単に説明をすると二つのでっかい船があって、片方(船A)には善良なゴッサム市民、もう片方(船B)にはゴッサムの刑務所に収監されていた犯罪者がそれぞれたっぷりと乗っている状況。
そしてそれぞれの船には爆弾もこれまたたっぷり搭載されていて、船Aの爆弾の起爆スイッチが船Bに、船Bの起爆スイッチが船Aに渡されているというまるで思考実験というかジレンマ的なお楽しみをやっているわけですね。
スイッチを先に押してしまえばもちろんもう片方が押されることは無いので助かる一方、制限時間までにどちらもスイッチを押さない場合はジョーカーがどっちも爆発させちゃうよ~~んということでさあどうなるのかという次第。
ここのシーンは熱いというか、バットマンが信じたゴッサム市民vsジョーカーという構図になっているのがなかなか良いもので、結果として両方の船ともスイッチを押さないということでジョーカーくんも面喰っちゃうというか「あーあーおもんな」って感じでしてここもまた面白いポイント。
ジョーカーが主張していた「どんな善良な人間でも追い込まれれば人殺しだってする」というものが覆され、バットマンにも捕らえられて…という決着を迎えるわけなんですけど、ここで一個気になる事があるんですよね。
船Aと船Bに渡されていたスイッチ、あれって本当に相手の船の爆弾を起爆するスイッチだったんか??という問題。
もしかしてあのスイッチは自分たちの船の爆弾の起爆スイッチなんじゃないかな~なんて考えたりもするんですけど、まあ答えは示されていないので妄想の範囲を出ませんが、ジョーカーだったらそのくらいやりかねないよな……とね、考えるだけなら無料ですからね!

・そのほか色々
今作以降、パワー系のベン・アフレック版とかではなかなかお目にかかれないスタイリッシュなバトルアクションとか、バットモービル大破からの”Good bye”でバットボッド射出!とか、ていうかなんならここが一番好きかもしれんな!とか、ハンス・ジマー作曲のメインテーマたまんねえな!とか、いいな~っていうところは余りあるというか、良いところしかないんですよもう、だって2位よ2位。
無理やり悪いところというかそういう話をするとするなら、今作以降ちょっとDCが血迷ったのか映画化の方針がブレにブレまくっちゃってるってところですかね、別にこれ今作の悪いところじゃねえな??

・終わりに
そういえばこの映画、クリストファー・ノーラン監督の出世作でもあったそうで、ここから「ダークナイト ライジング」を経て「インセプション」とか「インターステラー」とか「ダンケルク」とか「TENET」が生まれていくんやなあと思うと感慨深いものもあります。
世界においてアメコミ映画というジャンルの価値観をひっくり返してしまった圧倒的な傑作。AmazonPrimeとかでも絶賛見放題ではありますが、できることならなるべく大きい画面でノーラン監督の圧巻の映像表現を味わって体験してもらいたいものですね。

次回、いよいよの1位は3000回愛してるなあの映画です。悔しいけどお前がナンバーワンや!
ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

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