OPEN MICで見つけた詩、初公開。
6月の雨の夜、OPEN MICに行ってきた。
OPEN MIC(オープンマイク)とは、カフェやライブハウスのステージ上のマイクの前で、飛び入りの参加者がパフォーマンスを披露することだ。音楽から詩、小話までなんでもいい。
今回のOPEN MICで発見したとっておきの詩を紹介しよう。(後に拙訳あり)
ホテル コックローチ
「チェックインしてもチェックアウトしません」という広告。
でも、ぼくにはわかる。そうはいかないと。
この目で見たことあるのさ、入って出ていくやつを。
昨夜、真夜中
ぼくは台所でじっと待っていた、
悠然と出ていく客はいないかどうかを。
ようやく旅人が立ち止まり、
ドアマンやベルボーイや佇まいを眺めてる
なかをのぞき、どうしようかと迷ってる。
泊まるべきか、立ち去るべきか。
なかにいる客がちらっと見える。
どうやら静かなやすらぎを堪能してる。
あちらこちらで集ってる客はいい身なり、
しめやかに言葉を交わしてる。
ちょいと入って情報を仕入れてみるか。
空き部屋、料金、予約など。
「いらっしゃいませ」案内が目に入る。
「クイーンサイズベッドのお部屋 20.95ドル」
ほかにも「アメニティ、無料インターネット、
マジック・フィンガー(*)」とあった。
やつはデスクで考えあぐね、ぐずぐずしていた。
「ほら行け、それ行け、トライしろ」ぼくはささやく。
「ほかのやつと長居すればいい」とつぶやく。
やつが足を踏み入れた――ぼくはほくそ笑む。
「心地よい眠りをどうぞ、料金はいただきません。
やすらかなお休みをどうぞ、決して邪魔はいたしません。
ルームサービスをどうぞ、オードブルは無料です」
*ベッド備付マッサージ機。
〔解説〕
アメリカ人青年がある夜、台所でたたずんで、
部屋の隅に置かれた「ROACH MOTEL」〔日本の「ゴキブリホイホイ」に似た商品の名〕をぼーと眺めていた。
すると1匹のゴキがやってきた。青年はこのかよわき生命の行く末を詩にしたためた。
ぼくはこの詩で、イーグルスの曲「Hotel California」の最後のフレーズを思い出した。
”You can check out anytime you like, but you can never leave.”
人も虫もすこぶる誘惑に弱い。
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