【教育×小説】本質研究所へようこそ(14)【連載】

■テレビゲーム

「じゃあ計算ブロックは家でやってもらうとして、次はテレビゲームだ」
テレビゲームは好きだけど。テレビゲームも推奨されているタスクの一環だというのは不思議な感じだ。
「あっ、うちの研究所にはゲームのスーパープレイヤーがいるんだった。ちょうどいい、紹介しよう。こっちに来て」
「はい」
そういってチロウは「遊戯室」という部屋に案内された。

部屋の奥に一段高くなった畳のスペースがあり、座布団がいくつか敷いてある。そこに設置されているモニターで一人の女の子がテレビゲームをやっていた。あれは任天堂Wiiの『大乱闘スマッシュブラザーズ』だ。よく見ると家庭用ゲーム機が何種類もあって、まるでゲームオタクの部屋のようだ。他にもボードゲーム類やおもちゃなどで遊べる部屋のようだった。複数人でカードゲームができるようなテーブル。さらに部屋の畳スペースの向かい側には卓球台が畳んで置かれている。あの緑色の四角いテーブルは・・麻雀の全自動卓か!ものすごい充実ぶりだ。とても学習塾の風景とは思えない。

所長はその畳スペースでテレビゲームをしている女の子に近づくと、声をかけた。
「おーい、サラちゃん。相変わらずスマブラだね」
「うん、そうだよー」
サラと呼ばれた少女は画面から視線も外さずに返事をした(ここの女子生徒は、所長に対して敬語を使わない・・馴れ馴れしいというかアットホームというか。それが本質研究所の空気感なのだろう)。
ドンキーコングを華麗に操って、ガシガシ相手を攻撃している。かなり上手いようにみえる(何しろチロウはこのゲームをやったことがない)。
「最近、本質研究所に通うようになった仲間を紹介するよ」
所長がそう言うと、少女はゲームをいったんポーズしてこちらに向き直った。
「チロウくんだ」
「こんにちは、チロウです」所長の紹介に続いて、自己紹介をする。
「えっと、サラです」
「あれっ」
「あっ」
お互いの視線が交錯する。この顔には、どこかで見覚えがある。
「サラさんってもしかして、同じクラスの・・」
「そう・・かも?」

驚いた。その少女はまさかの、チロウと同じクラスの子だった。その偶然もさることながら、チロウが驚いたのはもっと別のところだ。
今から一年以上前、中学に入学して最初の学級会でそれぞれが自己紹介をした時に、チロウはサラという女の子が同じクラスにいることを認識した。しかしそれ以来、彼女が声を発しているのをほとんど見たことがなく、もちろん話したこともない存在だった。二年生になってからも同じクラスだが、状況は変わらなかった。
というのも、サラは誰とも積極的に関わっていかない、寡黙な生徒だったのだ。悪目立ちすることはないし、かといって学級委員になるような優等生というタイプでもなく、テストの点数も良いというイメージはない。休み時間はほとんど机に突っ伏していて寝ているような感じだったし、放課後もすぐに帰ってしまう。正直、ほかの生徒と喋っているところをほとんど見たことがない。何かに熱中している様子も、勉強を頑張っている様子も、とんと見たことがない。もっというと、理由もなしに学校を休むこともあり、正しく謎に包まれている少女だったのだ。だからこそ、こんな場所で出会い、しかもテレビゲームを熱心にプレイしているのが驚きだった。

それでも一目見てすぐサラだと分かったのは、彼女が一度見たら誰でも印象に残ってしまうくらいの正統的美少女だからだ。黒のロングヘアーに、モデルのようなスタイル、それでいて幼さを感じさせる丸い顔の造形が何ともアンバランスで、見る者を惹きつけた。芸能界にいてもおかしくない。そんな風にチロウは考えていた。


「なーんだ、チロウくん。サラちゃんと同じクラスなの?こりゃあすごい偶然だ」
「はい。だけど、ほとんど話したことなくて、というか今初めて声を聞いたというか・・いや初めてじゃないんですけど、一年以上前に一度聞いたきりというか・・」
サラの表情は変わらずに、チロウと先生の顔を交互に見ている。
「だから、まさかここで会うとは思いませんでした」それが率直な感想だった。
するとサラも応じて
「うん。私も。同じクラスの人が来るとは思わなかった」と言った。
「そうか。なんだか分かるなあ。ここに通い始めてもうすぐ一年になるかな。サラちゃんは興味を持てるものと持てないものがハッキリ分かれちゃう性質でね。好きなことには深く入り込むんだけど、興味が持てないと全然。学校の勉強なんかは興味が持てないものの一つかな。あと、打ち解けるまでに時間がかかるタイプ(笑)。学校でもやっぱりそんな感じだったかあ」
「まあ、そうだね」サラは特に否定することもなく応じた。
なるほど。学校でも打ち解けている人がいないってことなのか。妙に安心した。
「最初に話したとき、サラちゃんがすごく面白いことを言ってね。これまで学校の勉強で頑張ったことが3回しかないって言うんだ」
「ええっ」小学校と中学校を通して3回って?チロウはにわかにはその意味がわからなかった。
所長が続ける。
「全然ないとか、勉強が好きとか嫌いとかなら分かるんだ。小学校の6年間だけ考えても、頑張ったのが3回っていうのはないでしょ、普通。回数覚えてんの?って。それってよっぽど印象に残ってるってことじゃん。だから「その3回って何?」って聞いたんだ」
それはかなり気になる。
「そうしたら「掛け算の九九の暗記」と「クラスの班でみんな100点をとらなきゃ終わらない地理の国の暗記」と「漢字テスト」の3つで、どれも全問正解しなきゃ終わらないやつなんだって」
「余計なこと言わなくていいよ」サラが抵抗するように言った。
「それが全部利他的なんだよね。最低限、周りに迷惑をかけないためにやり過ごしたっていう自覚がある。これって大事なことだと思うよ。いいじゃないか。今の義務教育の中で、子供全員がおんなじことに興味を持つっていうことのほうが異常事態だ。またそのペースだって人それぞれでいい。大人になってからそういうことに興味を持って勉強する人もいる。それなのに、学校でクラス全員がクリアしないと先に進めないというやり方はどうかと思うっていうのを本能的に感じたんだな。これはまさにレジスタンスだ。そこでなんとかやり過ごすためにしょうがなく頑張った。その回数をちゃんと覚えているってが面白い」
「そうかな」褒められているのか貶されているのか良く分からない、とでも言いたげだ。
「そう。自分の中に哲学を持っている。自分は何に納得して、何に納得していないかということが分かっている。それって結構大事なことだよ。」
「サラ、嘘つくのがキライなんだ。学校ではあんまりそんなこと言えないよね。真面目に取り組んでいる振りをしないと怒られるっていうか。だけど所長は、そこを褒めてくれるんだ~ってのが意外に思った」
「ただし、九九と漢字を覚えたことは本当に良かったと思うぞ、さすがに」
「もう忘れたよ」
そういうとサッとテレビの方に向き直り、スマブラを再開してしまった。

チロウはこれまで、わりと優秀な生徒として通ってきたので、小学校時代から学級委員長や班長という立場に立つことも多かった。だから、勉強を頑張らないってのは全く想像すらもしたことのない姿勢だった。ましてそれを堂々を発言するなんてできない。それをあっけらかんと言い放つサラには、確かに不思議な芯の強さを感じた。それは間違いなく、チロウが持っていないものだった。そしてそれをおおらかに受け入れる大人がいるということも意外だった。

「そんな不思議なサラちゃんだけど、この研究所は一応、定期テストの成績はチェックするとはいえ、何かを強制することはないし、好きなことを自由にやっていいというのを気に入ってくれたんだ。ま、一番の決め手はゲームし放題かな?」
「まあね。好きなだけゲームをしていいなんていう学習塾は、ここくらいだよね。うるさいことを言われないし」
チロウは、なんだかよく分からないけど自分が想像もしなかった世界がここにある、ということを感じていた。

ふとチロウは疑問に思った。所長はこの研究所の方針についてこう言っていたはずだ。学校の定期テストで50点も取れないのは恥ずかしく、8割は取れることを目標にしなさいって。サラはどうなんだろう。この感じだとあまり学校のテストの点数にも反映されないと思うのだが。しかし今それを聞く雰囲気ではなかった。いずれ機会があれば分かるだろう。

■桃太郎電鉄

「サラちゃん、今からみんなでゲームをしようと思うんだけど、一緒にやろうよ」所長が提案した。
「いいけどー。なに?」
「『桃鉄』だよ」


『桃太郎電鉄』(通称「桃鉄」)は日本列島を舞台にしたすごろくゲームだ。ハドソンが1988年に発売して以来、これまでのほとんどのハードで出ており、どのバージョンでも楽しむことができる人気シリーズである。チロウも小学校時代にかなりやりこんだ経験のあるゲームだ。

「ふーん」サラは乗り気なのか不満なのか、どちらともつかないような反応だ。「別にいいけど」
「あっそうだ、マオちゃんも誘おう!」
そういって、所長は思い出したようにマオを呼びに行った。子供みたいにはしゃいでいる。
思いがけずチロウとサラは二人きりになった。ゲームのBGMとドンキーの操作音だけが響いている。たぶんこちらから話しかけない限り、この状態は続くだろう。それを打開するためにチロウは口を開いた。
「ここの所長、面白い人だね」
「うん」
返事はそれだけだ。いろいろ聞いてみたいことはあったが、緊張もあって、それ以上うまく言葉が出てこなかった。なかなか一筋縄ではいかないな。ほとんど初めてしゃべるようなものだから。だけど不思議とイヤな感じはしない。彼女は今スマブラに夢中なのだ。

まもなく、所長がマオを連れてやってきた。
「マオちゃん、桃鉄やったことある?」
「ない。ルール知らないよ」
「大丈夫。やりながら教えるから。これは小学生のうちに絶対やっておかなきゃいけないゲームだからな」
桃鉄は小学生が絶対にやらなきゃいけないゲームなのらしい。本気で言っているのか盛っているのか、とにかく所長の大げさな言い回しがまた出た、とチロウは思った。
「さあ、さっそく4人でプレイしよう」

サイコロを振って出た目の数だけ進め、日本全国の都市が目的地となって、いろんな駅で物件を買い、資産を増やしていくすごろくゲームだ。目的の駅にピタリと止まれたプレーヤーはご褒美として報酬をもらえる。最初のうちは2億円程度だが、プレイ年数が増えていくにつれてその金額は大きくなる。それに加えて毎年3月に、その時点で所持している物件の収益が入り、最終的に最も資産を増やしたプレーヤーが勝ち。自分の資産を増やすだけではなく、相手を妨害することによって損失を与える、という戦略もある。その場合は人間関係を悪化させる原因になりかねないのでほどほどに(笑)。


「プレイ期間は3年でいいかな。本当は長いほうが戦略が広がって楽しいんだけど、時間がかかりすぎても困るからね」所長が一人で解説しながら画面を進めていく。
所長とチロウ、サラ、そしてマオの4人。それぞれが好みのキャラクタを選んだ。
「桃鉄は、長期戦か短期決戦かで戦略が変わってくるんだが、今回は3年だから短期決戦だと思ってくれ。物件を買って収益を積み上げるよりは、夏のプラス駅を拾う、冬のマイナス駅を避けることの方が重要だ。貧乏神の餌食になったらジ・エンドだな。じゃあスタート!」

最初の目的地は「名古屋」だった。
「名古屋かあ。愛知県の県庁所在地。東京・大阪に続いて、三大都市圏の一角だ。さあ、さっそく名古屋を目指しますか」

スタート地点は「東京」。トップバッターの所長がサイコロを振ると6が出て、西に向かって進みだした。

「名古屋といえば何がある?」
「名古屋城のシャチホコ!」マオが元気よく答えると、「おー、すごい!」と所長が褒める。
サラは答えない。たぶん印象がないのだろう。地理の国の暗記はしたが、都道府県に関しては頑張ったという情報は上がっていない(笑)。関東に住んでいれば無理もない。
「中日ドラゴンズと名古屋グランパスですかね」とチロウは答えた
「おっ、チロウくんはスポーツが好きなのか」
「はい、わりとよく見ます。父親の影響でドラゴンズが好きなんですよ。落合監督とアライバが好きでした」
「イイねえ。オレ竜だ。今度東京ドームにドラゴンズ見に行こうよ」

東京から西に向かうと甲府駅に着いた。所長の講義が始まる。
「さあ、物件を見てみると「もも畑」と「ぶどう畑」だ。甲府盆地はこういった果樹栽培が盛んなんだな。だからこの2つの果物の生産量1位は山梨県。これは社会の地理で頻出事項。絶対覚えようね」
たしかに甲府駅の物件は畑ばかりだった。どれも3000万円からで、スタート時の1000万円では何も買えなかった。すぐそばに笑顔の富士山が鎮座している。

ゲームが進む。そこから南に出て静岡を通過、次に着いたのは浜松駅だ。
「あ、浜松では「ピアノ工場」と「バイク工場」なんてのがあるぞ。元ネタはYAMAHAとHONDAだ。15億円かぁ・・なかなか手が出せないな。業種によって工場を作るのに大きな金額が必要ということも分かるね。
「うなぎクッキー屋」なんてのがあるけど、これはきっと『うなぎパイ』のことだな。売れ筋商品だから収益率が良い(笑)」
そうか、それぞれの都市で売っている物件に元ネタがあるんだ。言われてみればそりゃそうだという感じだが、そこまで手が込んでいるというのは感心してしまう。面白い。これはチロウにとって発見だった。
「ねえ、何で名前を隠すの?」マオが素朴な疑問を口にした。
「会社名とか商品名っていうのは商標登録といって勝手に使えないのが基本なんだよ。もちろん許可を取れば使えるだろうし、名前を出してもらった方が宣伝になるという見方もあるだろうけどね。いろいろな事情があってのことだろうな」

「浜松といえば人口50万以上の政令指定都市の一つ、というのも覚えておきたいポイントだ。人口は80万人。政令指定都市は都市の規模感を把握するのにちょうど良い指標だ。どこに人間が多く住んでいるのかというのがなんとなく見えてくる。これがどういうふうに位置しているかというと、札幌を起点に福岡まで、キレイに太平洋側に並んでいるのが分かる。例外は唯一日本海側の新潟、最近政令指定都市に認められた熊本だ」
そう言いながら所長はコントローラーを置くと、手元でタブレットを操作し、ウィキペディアで政令指定都市を示した日本地図を見せてくれた。改めて地図を見ると、所長の言うとおり太平洋側の海沿いに集中しているのがわかる。

「つまりこれはいち早く新幹線と高速道路によって発展した軌跡であり、そもそも気候的な条件で人が住みやすい場所だということを意味している。偶然そうなったわけではなく、都市が発展するのにはちゃんと理由があるということだな。これは日本に限らない、世界共通だ。都市が栄えるのは日当たりが良く、海が近いところ、交通網が整備されたところだ。江戸にしろ鎌倉にしろ京都にしろ、人が住みやすい場所を都市にしてきたんだよ。」
街づくりや人口分布にも、ちゃんと理由があるという視点は面白い。ゲームをやっているはずなのに、先ほどから目からウロコな話がどんどん続いている。マオもサラもついていくのがやっとという感じだ。

いよいよ一行は愛知県に入る。名古屋まではあと一歩だ。
「愛知県はキャベツの生産量が一位など、意外と野菜をいっぱい作っている。それは施設園芸農業が盛んだということを押さえておこう」相変わらず所長の講義が続く。
「マオちゃん、愛知県が誇る工業製品と言ったら?」
「自動車!」
「正解!さっすが~」所長がおおげさに褒める。マオは「常識だよ」と得意そうだ。
「愛知県の工業なら何と言っても自動車産業だ。豊田市にあるのがトヨタ自動車なんだけど・・あー豊田駅はここにあるね」
そういって、所長はカーソルを動かして豊田駅を表示させた。「サッカースタジアム」「自動車工場」などが並んでいる。サッカースタジアムは名古屋グランパスの本拠地、「豊田スタジアム」のことだ。

「生産額は日本国内ではダントツ一位、海外での認知度も高い。世界の企業ランキングでは40位に入っている」
「40位か。日本のトップでもそれくらいなんですね」とチロウ。
「そうだよなあ。これが日本の現状。昔はこんなもんじゃなかった。世界における企業ランキングで、平成の始めの頃は今とは比べ物にならないくらい日本はすごかった」
所長は続けた。
「どれくらいすごかったというと、世界の企業の時価総額上位50社のうち、半分以上を日本の企業が占めていたんだ。トップ5を日本が独占していた時代もあったよ」
「そんなに?」マオは想像もつかないといった感じだ。
「それが今はやっと40位くらいにトヨタだけ。じゃあどこの国が元気かというと、ほとんどがアメリカと中国の企業だ」
「どうしてそんなことになったんですか?」チロウが疑問を口にした。
「理由はいくつもある。日本が時代の変化に乗り遅れたとも言えるし、中国がものすごい勢いで伸びてきたこと、日本に比べてアメリカのIT企業が、ソフトではなくハードを作ることに長けているからということも言えるかもしれない」

「日本経済の調子が良かったのが偽りだったという側面もあるんだよ。それがバブル景気だ。土地が値上がりし続けて株価も上昇を続けた。本来の価値以上に見積もられていたんだ。そういう時代だったから日本が上位を独占できていた。今じゃ考えられないけど、アメリカの一等地のビルを日本企業が買収したりしてたんだ。大企業の役員が百億円以上もする絵画を買い集めたりね。だけどそんな異常な事態は長くは続かない。いずれバブルは弾けて、一気に日本の景気は失速して、失われた30年(平成時代)に突入していくわけさ。おっと、そんな話をしているうちに名古屋に到着~」

そんな解説をしているうちに、「特急カード」でサイコロの個数を増やした所長は、愛知県の豊橋を通過してあっという間に名古屋に到着してしまった。抜け目ない人だ。
「プロ野球チーム」「セラミクス工場」「ガスコンロ工場」なんていう物件が売っている。しかしどれも高額で、報酬の2億円では手が出ない。
「やっぱり名古屋ほどの大都市になると一つ一つの投資にお金がかかる。駆け出し社長には手が出せないなあ。唯一買えるのが一億円の「ひつまぶし屋」かあ。しょうがねえ、買っとくか」そんな独り言をつぶやきながら所長は物件を購入した。
「皆はひつまぶし、食べたことある?」
「何それ?暇つぶしじゃなくて?」とマオが聞いた。サラも分かっていない様子だ。
「うな丼を、お茶漬けにして食べるやつですよね」とチロウが答える。子供のころに名古屋・岐阜あたりを旅行したことがあり、その時に食べたことがある。上品すぎて、食べるのに緊張してしまった記憶がある。
「そう。名古屋めしの一つだな。チロウくんが言ったように、ウナギを焼いて小さく切ったものがご飯の上に載っていて、うな丼のように食べたり、後半は出し汁をかけてお茶漬けのように食べる料理のことだ。こういったご当地グルメを食べるという経験もまた大切だ。何よりその土地に対する理解が深まるからな。だから旅行に行く際にはぜひ、どんな食べ物が有名なのか、名産品は何かということを知っておいた方が良い。桃鉄はそういう点でも勉強になる。知識を得て、体験する。この研究所のミッションだろ」

「ただこの前『噂のケンミンSHOW』でやってたけど、名古屋の人はひつまぶしよりも普通のうな丼をよく食べているらしいよ」
「そうなの?」サラが食いついた。「なんでー」
「ある地域の有名になり過ぎたメニューっていうのは観光客用に値段が高めに設定されていて、地元の人間はあまり食べないという現象はよくあるみたいだね。「大阪の人は串カツをそんなに食べていない」とかね。まあそれは一段深い話だ。まずはどんな食べものが有名で、それはどんなものか、どうしてその場所で食べられるようになったかということも、ちゃんとした理由があるから、調べてみると面白い。『噂のケンミンSHOW』はそんなことも学べる番組だ」



その後もこんな調子でゲームは進んでいった。まず実際の日本地図を舞台にしているので、ゲームをやっているうちに日本の地理が頭に入ってくる。例えば太平洋側の海を北上して北海道に入る港が「釧路」であるとか(付近には根釧台地が広がっている)、北端に「稚内」という地名があるだとか(「わっかない」と読む)。「富良野」にはラベンダー畑が、「ニセコ」にはスキー場と旅館があり、外国人観光客に人気なんだということも教えてくれた。冬に大雪が降ると臨時収入が入る、というところが面白い。
「青森」にはりんご畑があり、リンゴの生産量全国一位ということも関連付けられる。「盛岡」の冷麺屋は収益率が良く、「宇都宮」にはギョーザ屋が大量にあるといったように、地域の名産品をインプットすることができる。「福井」は恐竜で有名だから「恐竜博物館」が、造船業で栄えた「呉」には「戦艦大和記念館」がある。
そして「弘前」は(ひろさき)、「八戸」は(はちのへ)と読む。一度は触れないと、初見では決して読めない地名だ。

値段の安いみやげ物屋や名物の飲食店は収益率が高く、億単位のテレビ局や観光施設・売却不可の田畑は収益率が低い。かに漁船は収益率が変動し、稲作・お米関連は「豊作」で臨時収入があったり「不作」でマイナスになったりと、妙にリアルだ。

最近のバージョンでは元ネタがある物件を調べるのも面白い。
上野の「下町横丁」は「アメヤ横丁」だ。渋谷の「ファッションタワー」は「109」だろう。お台場の「江戸っ子温泉ランド」は「大江戸温泉」。
富士吉田の「絶叫ランド」は「富士急ハイランド」
佐世保の「ハウスヨーロッパ」は「ハウステンボス」だ。
幕張の「ネズミーランド」「ネズミーシー」は・・みなまで言うまい。

「ベビーラーメン工場」(おやつカンパニー)が三重県の津にあって、「ゲーム開発会社」(任天堂)が京都にあるというのも豆知識として知っていると面白い。

そうして4人で3年のゲームは幕を閉じた。終わってみれば四回も目的地に到達した所長の独り勝ちだった。チロウは貧乏神だけは何とか回避しつつ、プラスの駅を地道に拾う作戦で何とか十億の資産を積み上げ辛くも2着。数回に渡って貧乏神の被害にあったサラとマオは大きく借金を抱えていた。ゲームのルールもそんなに分かっていなければしょうがないだろう。所長はゲームでは手を抜かない主義らしい。だけどマオは所長の話が社会の勉強になっていると分かっていたようで、途中から勝敗を放棄して色んな駅の物件を調べるなどして何だか楽しそうにしていた。サラは少し不機嫌そうにしていたが。このゲームそのものが教育機会なんだということをあらためて感じた。これが所長が「桃鉄は絶対に小学生がやるべきゲーム」と言っていた意味なのだ!とチロウは思った。そしてまた、自分ひとりで遊んでいた時にはここまで深く考えていなかった。


■テレビゲームで前頭前野を鍛える

そういうわけで、テレビゲームもこの研究所では推奨されているワークだった。

所長はこう言っていた。
「頭がよく機能するというのは、ひとことで言うとワーキングメモリ(作業記憶)が働いているということだ。ワーキングメモリは、やるべき作業やちょっとした短期記憶を脳にキープして、課題を解決していくこと。実は学校教育で測られる全てのテストとかの成績はコレのことを言っている。次から次へと忘れていくんじゃ、知識を積み上げていくこともできない。このワーキングメモリを鍛えるのに良いのは、まず一つにRPG(ロールプレイングゲーム)をすることだ。次の目的地ややるべきタスクを記憶しながら、目の前の敵を倒したり、装備を整えたりと同時並行で処理しないといけないから。しかも達成感もあることが大事。

この作業記憶を鍛えるのは乳幼児期から始まる。たとえば、小さな子供にお菓子をどちらかの箱に入れて、数秒後にどちらの箱にお菓子が入っているかを聞くことによって、どれくらい記憶が維持されているか測れるが、訓練するとこれをちょっとずつ時間を伸ばしていくことができる。

小中学生で、国語や算数(数学)の文章問題が苦手な子は、このワーキングメモリが働いていないなと感じることが多い。同じ大問の中で条件が何だったかを覚えていないで、次の問題で条件がリセットされていたりする。「Aという条件の下で」という記憶を保持することの重要性が分かっていないんだな。理科の実験結果について問うようなものなんかはその最たるものだ。示された条件を一時的に覚えていないと、条件反射的に当てずっぽうで答えるということになる。」

「ワーキングメモリの点でいうと、これを最もストレートに鍛えるのが囲碁・将棋の類の完全情報ゲームだ。ゲームを有利に進めるためには、次にこういう手を打ったら相手はどう出てくるかを予想する。実際に手を打った後の場面を頭に浮かべて、相手の出方を想像する。それをキープしたまま、別の手を想像して比較する。あるいは相手から自陣がどう見えているかと想像するために視点を行き来する。こういう頭の使い方はものすごく脳に負荷がかかる。だからこそ、脳のCPUのスペックが飛躍的に向上するのだろう。プロのレベルとなったら、想像を絶する精度が求められる。
将棋界では米長名人の有名な言葉がある。
「兄たちは馬鹿だから東大に行った。自分は頭が良いから将棋指しになった」
だから近年は、囲碁や将棋を幼少期からやらせるという親が増えている。藤井聡太くんなどのスターの登場で、頭がよくなるという評判だからだ。
もちろんただやみくもにゲームをすれば良いというのではない。ルールを覚えただけで、出たとこ勝負で手を動かして、勝つか負けるかは運否天賦、というんじゃ頭が鍛えられていないし、いずれ負けが込んでつまらなくなる。」

さて、そんな囲碁や将棋と比較して、テレビゲームは一般的には勉強の邪魔になると考えられている。だけど最近では、むしろ知能の向上には良いんじゃないかという見方が増えてきている。なんでも『学力の経済学』(★)(中室牧子)によると、十七歳以上の子供が対象になるようなロールプレイングゲームなどの複雑なゲームは、子供のストレス発散につながり、創造性や忍耐力を培うのにむしろよい影響があるという研究結果があるそうだ。「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」といったRPG、また「スーパーロボット大戦」や「ファイヤーエムブレム」「不思議のダンジョンシリーズ」は戦略と創造性を求められるものすごく高度なゲームだ。これらは俺の青春時代を形作ってくれた。こういう良質なRPGを最後までやりきるという経験は、他のものに代え難い財産になる。

さらに、21世紀型の新しいジャンルと言えば、フィールドだけを与えられていて、そこでどんな遊びを展開するかを自分で決められるゲーム(オープンワールド・箱庭ゲーム)が人気だ。たとえば「マインクラフト」や「ゼルダの伝説」が代表格だな。これらのゲームは創造力が要求されるゲームで、YouTubeなどでハイレベルなプレイ動画も人気になっている。

また「トモダチコレクション」や「どうぶつの森」といったタイトルも、現実世界や理想の環境をゲーム内で作れるというところが想像力(創造力)を掻き立てられるのだろう。これらはプレイすればするほど頭が良くなることが想定される。
ちなみに「マインクラフト」はゲーム動画で世界的に人気に火が付いたこともあって、2019年5月時点でそれまで売上1位だったテトリスを抜き世界で最も売れたゲームとなったそうだ。

なお、勉強が得意な子と苦手な子でどちらがゲームが上手いかと検証すると、勉強ができる子ほどゲームの攻略も上手いという結果が出るのだそうだ。状況判断をして戦略を立てて遂行する、という一連の操作には勉強に通じるものがあるからだろう。だから一方では勉強もできなければゲームも下手という残酷な現実がある。

しかし今、このような良質なRPGをやるにもハードルが高い。というのも今の時代、ゲームはスマホがメインで、パズドラとかモンストとかツムツムだ。これがスマホユーザーに受け入れられたのは、途中のダンジョンパートを一切排除してて、ひたすら敵が出てくるだけ、ただバトルをこなすだけという手軽さだ。現代人は「待つ」ことができなくなっている。

お笑いで言うと、ある時期(レッドカーペットとか)から、1分で笑えるネタが消費されすぎて、視聴者も演者もそういうモードに適応してしまった。Youtubeを見るのも然り。大衆には分かりやすくないと受けない。短くて浅くて分かりやすいものが普及する。
逆にリアル現場が盛り上がってきてて、お笑いにしても音楽にしても、舞台やフェスが人気だったり、映画館がスマホを閉じて2時間没入できる場所として価値を持つという逆転現象も起こっているんだけどね。

それで現代の子供たちは良質なRPGをじっくり攻略する体力がもはやないのではないかと危惧している。まずハードを買う喜びがないし、ファミコン時代のあの「本体を買ってもらった時の喜び」とかイメージすらできない。だからこそ、逆に合宿形式で「ドラゴンクエスト」を攻略する塾とかあっても良いんじゃないかと俺は思っている。戦略とか忍耐力とかが身につく。
皆も機会があったら、名作RPGをプレイしてみてくれ」

この遊戯室には最新機器であるNintendo SwitchとPS4、Wii、それになぜかファミコンとスーパーファミコンというレトロなゲーム機があった。任天堂が復興版として出した「ニンテンドークラシックミニファミコン」と「ニンテンドークラシックミニスーパーファミコン」である。いずれも往年の名作ゲームが30本内蔵されているというものだ。名前は聞いたことがあるけどやったことがないゲームがたくさんあったので、チロウはいくつかやってみた。

シューティングゲームやアクションゲームは、瞬時の判断力や状況判断、未来予測、危機回避能力を鍛えるのに良い、とのことだった。『スーパーマリオブラザーズ』『マリオカート』がプレイできたことも大きかった。シンプルだけど完成されている。『ギャラガ』や『パックマン』、『グラディウス』なんかは面白かった。すぐにやられてしまうのだが、くり返しやっているうちにパターンを覚えてきて、ちょっとした記憶力とパターン認識力が研ぎ澄まされていく感じがあった。あと所長に教わった「上上下下左右左右BA」(コナミコマンド)という裏技も無駄に覚えてしまった。これはたとえば「グラディウス」で発動すると、オプションがフル装備された状態になる。

『ファイナルファンタジー6』、『聖剣伝説2』はかなり複雑で高度なゲームだったが、所長にアドバイスをもらいながら攻略した。クリアした時の達成感は何物にも代えがたいものだった。

■MEMO

ファミコン
・桃太郎電鉄
・ロールプレイングゲーム、シミュレーションゲーム
・シューティング、レースゲーム(ギャラガ、マリオカート)
・パズル、アクション(ぷよぷよ、テトリス、スーパーマリオ)

スーパーファミコン
・ファイナルファンタジー4、5、6
・ドラゴンクエスト5、6
・トルネコの大冒険、風来のシレン
・聖剣伝説2

・マインクラフト
・シムシティ
・グランドセフトオート
・トモダチコレクション
・どうぶつの森
・ゼルダの伝説


■麻雀

ある日なんかは研究所に行くと、所長の他に知らない大人が3人いて、テーブルを囲んで麻雀をしていたことがあった。聞くところによると、所長が主催して月に一回定期的に開催されている会で、その名も『本質研究所カップ』。どんなことでも大会にすることによって真剣さと面白さが増すという所長の考えらしい。その後チロウにも参加することを勧めてきた。ちなみにだが、金銭的なものを賭けているわけではなく、勝つと景品としてちょっとした家電やガジェット、お菓子、図書カードなどがもらえるという極めて健全なものであるから安心してほしい。

所長が言うには、麻雀ほど洗練された、完成度の高いゲームはないのだという。瞬時の判断力と先を見通す力、様々な状況を同時に処理するマルチタスク思考、確率や統計のセンス、数字を組み合わせて役というパスルを完成させる感覚、それにマナーも要求される。目の前の軽い上がりを拾うのか、たとえ結実しなくても大きな手を目指すのか。これは勝負をかけるタイミングを磨く訓練になる。予測がことごとく外れたときのメンタルの持ち方。流れを読む力。学びになることは多い。

もともとチロウは小学生の時にドンジャラをやっていたことがあり、おおよそのプレイの仕方は分かっていた。またここの研究所に置いてあった『勝負師伝説、坊や哲』『アカギ』『天』という漫画を読んでいたのもあって、自分なりにルールは勉強していた。そしていざ実際の牌を使った麻雀をやってみるとものすごくハマった。というか実際に牌を触って細かいルールを教えてもらって初めて理解した。やはり体験してみることが最も身につくのである。そしてこのゲームだけは本当に何時間でも出来ると思った。チロウはいつしか、研究所での『本質研究所カップ』に参加するのが一つの楽しみになっていた。


この麻雀は毎回、見知らぬ大人とコミュニケーションをとる場でもあった。どういう繋がりなのかは分からないが、そこにやって来る大人はバラエティに富んでいた。有名な作家や評論家だという人もいれば、近所に住む学生(東大生もいた)、受験界隈では知らない人はいない伝説の予備校講師だという人、いくつもの会社を持つ経営者、あるいはニートみたいなもんだという人もいた。しかしこんなわけのわからない場所に麻雀をしに来るくらいだから(あの所長と知り合いだからと言うべきか)、変わった人が多く、それがまた面白い時間でもあった。一度、テレビでも見たことのある有名な芸人が来ていて驚いた。所長の人脈は謎に包まれている。

しかしチロウには「これは普通だったら得られることのない貴重な機会だ」という直感があった。そこでは最先端のITサービスの話や世界情勢、経済、時事問題についてなど、普段の学校や日常生活では聞けないような高度な話が展開されていた。知的な会話が繰り広げられており、どんな同級生からも(学校の先生からも)出てこないような深くて幅広い話題だった。

かと思えば結果に一喜一憂したり、くだらない冗談を飛ばしあったり、普通の人と変わらないんだなということも感じていた。でも多くの大人は、この研究所での過ごし方について話すとみな一様に「おもしろいね」と言ってくれた。「こんな昼間から麻雀やっているような大人が先生で良いのか?」などと軽口をたたく人もいた。所長は「もちろん。これこそが教育だ」と言って憚らなかった。

この本質研究所では「ゲーム=遊び」による他にもいろんなゲームを紹介された。

●面積迷路(面積パズル)
長方形が連なっていて、既知の一辺から未知の辺の長さをたどっていく、迷路のようなパズル。九九の計算を次々に繰り出していく速さと正確さが求められる。


●ナンクロ(ナンバークロス)
同じ番号には同じ文字が入って、言葉を完成させていく。正確さが求められるし、やっていくうちに新しい言葉に出会える。これほど語彙が求められるパズルはない。自分の語彙の中から引っ張り出してこないといけないから、言葉を知っていたらどんどん解けるようになるだろう。
最初は電子辞書を片手にやるのも良い。また、カナバージョン、漢字バージョンもあって四字熟語にも詳しくなれる。

「12223」を「カタタタキ(肩たたき)」、「454654」を「ウオウサオウ(右往左往)」と気づいたときは気持ちよかった!「78987」は「シンブンシ(新聞紙)」これは典型的な回文。
「ソロバンズク」という言葉が出てきて、いよいよこれはどこかで間違えたと思った。もしかして「そろばんじゅく(塾)」が訛ってそう言うのかとも思った。ためしに辞書で引いてみたら「そろばんずく(算盤尽く)」は「全て損得を計算して、損にならないようにすること」なんだって。知らない言葉はまだまだたくさんある。

●論理パズル(頭の体操)
『頭の体操』(多湖輝)という本のシリーズがある。1966年に第一弾が発売されて以降、累計で1200万部も売れているベストセラーだ。意地悪ななぞなぞも多いけど、この本でパラドックス(逆説)という概念を知った。

そこで紹介されていたのはこんな話だ。
「足の速いアキレスは、前を歩いているカメに永遠に追いつけない?」
最初の段階でアキレスとカメの間の距離がある。アキレスがカメに追いついたとき、それまでにかかった時間だけカメは前に進んでいるはずだ。次にアキレスがカメに追いつくと、またその時間ぶんカメは前に進んでいる。これが永遠に繰り返されて、アキレスはいつまで経ってもカメに追いつけない。
現実にそんなことはあり得ないというのは分かっているけど、正しいかもしれないという気もする。この不思議な感じ。それを説明するときの有名な話なんだって。

●大富豪(トランプゲーム)

ルール:
プレイヤー全員にカードを配る。
ダイヤの3を持っている人からスタート。以降順にカードを出していく。
カードの強さは3が最も弱く、以降4~13の順に、そのあと1,2の順に強くなる。前に出されたカードよりも強いもののみ出すことができ、出すものがない場合、また戦略的にカードを出したくない場合、パスを宣言することもできる。最初に手持ちのカードがなくなったプレイヤーが勝ち。


「俺はあらゆるトランプのゲームの中で大富豪が最高傑作だと思っている。それは大富豪が人生というものを的確に表しているからだ。」

「勝負をかけるところと待つべきところ、その勘所を養うのにとてもいいゲームだ。
貧民・大貧民は手持ちのカードから無条件で最強のカードを放出し、富豪・大富豪は自分で不要だと思うカードと交換することができる。富める者がさらに富み、貧しい者はさらに貧する。厳しいがこれがこの社会の実情だろう。こうなると強者はますます勝ちやすくなる。だけど逆転のチャンスは常にある。諦めたらそこで試合終了だよ。大貧民は弱いカードを押し付けられた結果、数字が重なって2枚出し、3枚出しで対抗できるかもしれない。革命が起こせるかもしれない。革命とは同じ数字のカードを4枚同時出しすることによって、カードの強さが逆になるルールだ。来るべき時のためにじっと耐えて、勝ちを狙う。他力本願だけど、誰か他のプレイヤーが革命を起こしたり、大富豪の人が去り際に残った世界を乱すために革命を起こすこともある。そうしたら富豪に滑り込めるかもしれない。勝負は最後まで何が起こるかわからないんだ。

手持ちに強いカードが少ない場合、出せるからといって序盤からカードを出していってしまうと、その後高確率で負ける。中途半端なカードを残してしまうのが後半に一番響く。この世は途中経過よりも結果が大事だという現実だ。

うまくやれば強い者は勝ち続ける。しかし盛者必衰という言葉が表すように、今富める者もいつかは凋落を見せる。それはつまり、今弱い者も戦略的に粘り強く戦えばいずれ勝てるときが来るということだ。もちろん、どうしたって勝てないものは勝てないから、そこはじっと耐えて次に賭けるという切り替えも大事だ。かといって、準備をしないで目先の利益ばかりを追求していたらいつまで経っても勝てない。これはまるで人生そのものだと言ってもいいだろう。

●人生ゲーム
こちらも人生の何たるかを疑似的に体験できる、

●かるた、百人一首、モノポリー、etc

(次回に続きます)

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