迷いの塔(ドラクエ6)ハーモニー解析
迷いの塔は特定の調には属していないが、コード&スケールがかろうじて対応している(早くもここで書いたガイドラインがねじれる事態となってしまった…反省)。どこかジャズっぽい響きがするのはスケールが確立しているおかげだと思う。ということは解析すると何か見えてくるかもしれない、ということで敢えて迷い込んでみよう。
※リズム解析はこちら
序奏
「ラ」の音にトニック感を感じる。ドやソなどブルーノートにあたる音と組み合わせたフレーズになっているため、下段はA Blue Note Scaleと捉えていいだろう。上段は すぎやまこういち先生お得意の長七度堆積フレーズである。これらの音はA Bluenoteには属していないが、ギミック(=効果音の一種?)と捉えてよいだろう。
Aパート前半
最初の6小節はF Lydian Dominant(F G A B C D Eb)のワンコードである。悪のモチーフ「ラーソ#ラファ」のソ#がChromatic Approachでハーモナイズされている以外は、F Lydian Dominantスケールの音でハーモナイズされている。9小節目のファのメロディを音程を変えてF Lydian Dominantに沿っているのは明らかにジャズ寄りである。
最後の1小節のみ、ファの音が半音上がってF#dimとなっている。
Aパート後半
前半2小節はG Blue Noteである。シとシ♭の共存が如何にもブルージー。後半3小節はF#7/Eと表記したが実態はE(9,#11,13)(Lydian)と解釈したい。偶成的にFmaj7/E, G/Bが生成されているが、これらはメロディーの半音移動をChromatic Approachした産物である。
Aパート後半は全てメジャートライアドでハーモナイズされており、やや現代音楽寄りだが、いちおうスケールは確定できるように配置されている。※これ以降、各パートでハーモナイズ音形が固定となる。
Bパート前半
Eb Diminishedスケール(Eb F Gb Ab A B C D)のワンコードである。ここはリズム主体のパート。
Bパート後半
E7(13)のワンコードである。上部和音がすぎやまこういち先生お得意の4度堆積(+4,4)構造となっており、9thの無い13thのみの特殊コードである。半音進行で偶成的にEb+4,4の4度堆積のみ露出するパート(いわゆるジミヘンコード)があり、荒れ狂うタムタムと相まって、一層ジャジーかつ難解な雰囲気を演出する。
Cパート前半
前半G Whole Tone(G A B Db Eb F)という特殊スケール、後半は同形で3度上がったB Whole Toneである。いずれもドミナントコードなのでJazzyではあるが3度が欠落してるので浮遊感があるかもしれない。
ここでも上部のハーモナイズは同じ音形を保っている。
Cパート後半
このパートはひたすらadd9の音形が続く。大きな流れはFadd9→G♭add9であるが偶成的にD♭ Lydian #5の響きが入りハーモニックなアクセントとなっている。
Dパート前半
ここも大きな流れはFadd9→G♭add9である。omit3の和声が続く。
Dパート後半〜コーダ
バスの流れが不規則に見えるが、上部和声はadd9の音形を保ちながら半音下行進行しているので滑らかである。最後は「ソ♭ラ♭ソ♭ラ♭」というバスが続き、冒頭の「ソラソラ」に半音上行で接続する。
まとめ
ここまで各パートがJazzっぽいスケールでできていることをみてきたが、全体を俯瞰するとこれらが有機的に繋がっていることがわかる。すなわち、Jazz的なドミナント進行(完全四度進行)は全く現れないものの、ほとんどの箇所でメロディもしくはバスが必ず半音ないし全音で接続されているためスムーズに接続されている。メロディもバスも跳躍してるのは同じフレーズが移調して繰り返す場合のみで、この場合も容易に接続を感じることができるので問題ない。