雨と叙事詩
雨、雨、雨の毎日。日本の夏はこんなにも雨が降る。そんなときには音楽でヴァーチャルトラヴェルをするのはどうだろうか。今回は雨の日に読みたい叙事詩を紹介しよう。
え、音楽(メタル)の話じゃないのか?いやいや、実はメタルは「叙事詩」として「読む」こともできるのだ。超大作の映画のようなドラマがある曲も多いし、それを知るとその曲がより一層面白く、ダイナミックに楽しめる。映画に例えるなら、歌詞はストーリーで音楽はドラマ・ヴィジュアルといったところだろう。
(ここではあくまでもShaheen 流でざっくりと、曲のムードや世界観が伝わるように物語として紹介する。逐語訳ではないのでご注意!オリジナルの歌詞はアーティストのBandcampのページ参照)
Autumn Rain by Saor (Scotland)
秋の雨、という曲。中世の戦を彷彿とさせる美しくも悲しい物語が、切な気なフィドルとともに語られる。涙なしでは聞けない1曲だ。
悲しみの風が荒涼とした大地に吹きわたる。暗い丘に囲まれた暗い森に夜の雨がむせび泣く。教えてくれ、哀しみのなかに春は来るのか。この森にさえ明るい音楽があふれ、川にも笑い声がこだまする、そんな春が。
哀しみよ、哀しみのままであれ。太陽の光が野山や川を金色に染め上げたとしても。ヘザー(植物)の赤い色すら、流された血の記憶を呼び覚ます。
気高き者たちは死に永久に眠る。その雄姿を、我々はいつまでも覚えていよう。死せど彼らの志は敗れることはないのだから。
Last Wolf by Enisum (Italy)
最後の狼。名前からしてかっこいい。緊張感とエモーションに満ちたギターが心を鷲掴みにする。語られるのは誇り高き命の物語。
最後の命、最後の魂。この山々のなかでただ唯一の生き残り。人間の欲望の中、生きて、生き延びた、最後の命。最後の魂。自由、それなくば死を!
どちらも素晴らしいアルバムなので、ぜひチェックしてみてほしい。
詩情ある美しいカバー写真はnotsugi様提供。かたじけない。
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