宝塚宙組「Xcalibur - エクスカリバー」

宙組「Xcalibur - エクスカリバー 」をライブ配信で視聴。新型コロナワクチン接種後の副反応でフラフラしながら頑張って観た。その甲斐があった素晴らしい舞台でした。
お目汚し失礼と思いつつ、フラフラ感想をとりとめないまま、備忘録的に書き留めておきます。(円盤を入手したら書き直すかも)

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元々が諸説ありすぎ自由すぎ(はるか昔から人は二次創作が大好き)なアーサー王伝説の、細かいところはバッサリ落として大筋を生かした今回のストーリーは自分的には好みでした。落とすところは落としても、パーシヴァルに琉稀みうささん、トリスタンに泉堂成さんを配役している辺り、押さえるところは押さえてる感じが好印象。

そしてストーリーの解釈を観客に委ねているのも現代的で良いと思いました。
たとえばアーサーを主軸に運命に翻弄される息子たちの物語として読んでもいいし、グィネビアやモーガンに着目して、運命に抗う娘たちの物語を紐解くのもいい。
(ここでの運命とは、穿った見方をすれば「家父長制度」とも言い換えられる。男役を頂点とする厳格なスター制度を誇る宝塚歌劇で、しかも新しいトップスターのプレお披露目でこれを演るって挑戦だなとワクワクしました。)

同時に、4人の父親たちの異なる父性の物語でもあれば、愛憎と赦しの物語でもあり、何より、ただ岩から抜けないってだけで他に何の取柄もないのに、人々が勝手に投影する欲望により聖剣に祭り上げられていくエクスカリバー(=王)の物語としても読める。

どう読んでも余韻が残る魅力的なストーリーに、とりわけ歌と芝居が上手い役者さんが絡んで、本格ミュージカルとしても見応えがありました。これからの宙組は歌で勝負するのかな、という予感がしました。

まず、芹香斗亜さんのアーサーの造形。
周囲の思惑に流されるままリーダーになったあげく全てを失う展開は「群盗」のカールと似ているんだけれども、カールに見えた傲慢さと狡さがアーサーには微塵もない。桜木さんランスロットより確実に年下に見える(10代と言われても違和感がない)幼さと無垢、それゆえに落ちた闇の深さの底に、善なる父に育まれた魂がたしかに宿っていて、なんだかすごいわこの人、と恐れ入ってしまいました。
そして、孤独に傷つき疲れ果てても、全てを受け入れて「山」の頂きで剣を掲げる姿には、やっぱり新生宙組トップスターとしての立場が重なって見えて、やっぱり泣けました。こんなん、絶対に応援したくなるやん。する。

春乃さくらさんのグィネビアは溌剌として美しく、王妃になってからのドレス姿が借り物のように似合ってなくて、ちゃんと女戦士だと思いました。今回はファルセットで魅せる場面がなかったのが残念でした。
自分は潤花さんが好きだったので、同じく佇まいに翳りや曇りが無い春乃さんがトップ娘役を引き継いだことがとても嬉しいです。

有愛きいさん(芸名のセンスが好き)と松風輝さんの歌唱を聴けたのも良かった。有愛さんは「カジノロワイヤル」学生運動のシーンでの、松風さんは「カプリチョーザ!」のローマでのお歌が心に響いて、もっと聴きたい!と思っていたので。
お二人が途中参加(?)していたサクソン軍団の皆さんもクール。ビジュアル最強で歌もいい。宙組がどこまで世紀末を極めるのか今後が楽しみです。

若翔りつさんのマーリンと真白悠希さんのモーガンは、予想通りに素晴らしかった! お二人が出る場面では存在の不穏さに目が離せなかったし、お二人がいない場面では不在の不穏さに震えました。
若翔さんの濃密な知性と色気を含んだ歌声を堪能できて、そして真白さんの本領(の、たぶんごく一部)が解き放たれた現場を観られて嬉しかったです。お二人が放つ異彩に、「ガラスの仮面」的なスペクタクルを感じて、もっともっと、縦横無尽に舞台を荒らして主役を食らわんとするお二人を見たいと思いました。

 …ただ…

お二人を含めた全員が、この配信に限って本調子ではなかったような感じがしました。連日のハードな舞台に、皆さん喉も体力も限界超えてたような。本当はもっともっと凄いのに、という悔しさが舞台からも客席からもビシビシ伝わってきた。
この舞台が円盤として残っちゃうのは気の毒なような。部分的にでも、差し替えとかできないのかな。


















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