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この夜を止めないでよ。

 2000年代の初頭の日本にR&B(的なもの)を根付かせた音楽プロデューサー界のレジェンドの1人、松尾潔氏が、業務提携していた山下達郎・竹内まりや夫妻の事務所「スマイルカンパニー」との契約を打ち切られ、その原因が、松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題について発言したからだと告発し、話題となっています。

 私は最初この話を聞いた時に、さすがに、ジャニーズに言及したからと言って契約を切るというのは、芸能界に50年からいる山下さんの取るべき態度ではないなぁと思いました。このタイミングでこのような対応をとると、それなりに炎上することは目に見えています。だから松尾氏は一方的に「ジャニーズに言及したから契約を切られた」と言っているけど、我々のあずかり知らないところで、他にも理由があるのではないかと思いました。そして、こういうもめごとの類は、片方からの申立てを聞くのではなく、双方からの言い分を聞いてから判断するべきだと思いました。SNSの類を一切やっていない山下氏が反論できるのは、彼が毎週やっているラジオ番組しかないということで、そのラジオ番組「Sunday Songbook」で何らかの声明を発表するというアナウンスがありました。
 7月9日に、その番組が放送されました。番組の冒頭で流されたのは、山下氏の往年の名曲を最近カバーしたJuice=Juiceの「FUNKY FLUSHIN’」

 Juice=Juiceにとっては、「DOWN TOWN」「プラスチック・ラブ」に続く山下氏関連カバー3曲目。自らもよく知るスウェーデンのミュージシャンがアレンジすることを条件にカバーを許可したといわれていますが、もう3曲目です。よほど両者の間に信頼関係があると思われます。山下氏のあのラジオでかけてくれたらいいのになぁとは思っていましたが、まさかこんな注目される回に流してもらえるとは…何気にJuice=Juiceは持っています。そのあと自分のオリジナルバージョンも流していましたけど、正直負けてません
 それはともかく、前掲の件については、こちらに書き起こしがあります。

 これについては、放送前にこんな感じの声明になるのではないかと予想している人がいました。

 私は、実際に山下氏が語った内容も、ほぼこれに近いという印象を受けました。曰く、今回の契約問題については、「社長の判断で行われた」ということ。そして、ジャニーズに言及したから契約を解除したという点については、「それもあるけど、他にもある。それについては、ここでは言及を控えたい」とのことでした。「ジャニーズに忖度しているのでは?」という点については、「根拠のない憶測」とバッサリ切り捨てています。あとは「私の人生にとって一番大切なことはご縁とご恩です。」と言って、今までいかにジャニーズにお世話になっていたかを語っていましたが、じゃぁ松尾潔氏とのご縁は何だったのかといいたくなります。まぁ何年も会ってなくて、年に数回メールをやり取りする仲の松尾氏と、長年の仕事上のパートナーであるジャニーズとを比べて、どっちについていくかといわれたら圧倒的に後者なんでしょうけど、今ジャニーズは関ヶ原の西軍どころではない劣勢なわけで、そっちについていくというのはあまりに世渡りが下手すぎます。まぁ今さら勝ち馬に乗ろうという気がないのは分かりますが。
 ただ、ジャニーズの件でもそうですが、本当なら当の本人が表に出て発言すべき問題です。なのにたまたま表に出ているジャニーズタレントであったり、山下氏であったりが声明を出さないといけない現状に違和感を感じます。ネット上では、山下氏がジャニーズの肩を持ったということで、「年末になっても『クリスマス・イブ』を気易く聴けなくなる」という意見もありましたが、なぜここで山下氏にヘイトが向かないといけないのでしょうか。社長の(おそらくプライベートな)不祥事の罪を社員がかぶるって、おかしいと思いませんか?悪いのは、犯罪を犯した張本人と、それを黙認していたマスコミであって、それ以外の人が責任を追及されるのはおかしいです。世論が、この問題を、山下氏と松尾氏の間の争いとしようとしているのなら、それは違うと言わざるを得ません。
 もとはといえば、以前も書いたことがありますが、ジャニー喜多川氏がそのようなことをしていたのであれば、死後に海外のメディアが報道して発覚するのではなく、生前に記者会見をして真理を追究するべきでした。彼の生前から性被害について訴えていた人はいたそうですが、彼の生前は日本のマスコミはすべてスルーしてきました。今頃騒いだところでその過去がチャラになるわけではありません。その辺のどうでもいい芸能人の不倫疑惑には熱心に追いかけるのに、なぜジャニーズの件になると沈黙を貫くのか分かりません。私は非モテのはしくれとして、このような事件がある前からジャニーズ所属タレント(に限らず、いわゆるボーイズグループ全般)を支持していませんが、それにしてもタレント自身にヘイトが向きすぎです。
 まぁいずれジャニーズは崩壊します。既にSMAPという前例があります。あの時に芸能事務所と所属タレントの関係について議論があったので、旧態依然とした事務所のあり方というのは見直されてきたと思います。個人的には、今ほとんどの事務所はそうなっていないと思いますが、事務所に所属するという限り、ちゃんと社員(契約社員ということになるんだろうけど)として雇用して、社会保険にも入れて、1年単位の変形労働時間制か、もしくは高度プロフェッショナル制度の議決をして(そのためには法改正が必要だけど)、処遇すべきだと思います。ついでに年少者に対する契約も厳格にして、よほど才能がある場合は15歳年度末以降でも契約していいけど、基本的に18歳年度末以降にならないと契約しないとか、そういう運用をした方がいいと思うのですが、まだそこまでは進んでいないようです。
 話がそれましたが、ジャニーズに入るのはほとんどが小中学生です。もちろん入るためには親権者の同意が必要なはずです。しかしジャニーズでこんな事件が起きて、果たしてどれだけの親が子供のジャニーズ入りに同意するかということです。すでにジャニー喜多川氏はこの世の人ではありませんが、これで自分の息子を安心して預けられるという状況ではとてもないと思います。そうなると自然と入る人が少なくなります。入る人がいなくなったらもう会社は終わりです。既に所属している人も、こんな泥船からはさっさと逃げ出した方がいいです。
 一方の松尾氏ですが、既に実績も積み重ねた人なので、事務所の契約が打ち切られたところで特に困ることはないと思います。だからこそ告発ができたというところもあるのではないかと思います。最近日本のミュージックシーンはロック系統に押されてR&B界隈は元気がないので、松尾氏の力で盛り返してほしいものです。あと日刊ゲンダイみたいなメディアを使ってないで、noteとかで発信してほしいです。

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