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どうするたかし。

 私はかつて約14年半名古屋に住んだことがあります。その半分ぐらいは市長が河村たかしさんでした。彼の目玉政策である減税政策が共感を得たのか、2009年に名古屋市長選に当選して以来、現在に至るまで名古屋市長を務めています。
 彼の減税政策と並ぶ目玉政策が、名古屋城天守閣の木造での再建計画です。減税で財源について疑問視・不安視する声がある中、「元本の建設費で建てた天守は、市民にとっての財産であり借金ではない」と、市債を発行して建設することを明言しています。
 河村市長はあくまでも建設当時の名古屋城を再現することにこだわっており、従ってエレベーターなどをつけることなど問題外という立場です。これに対して、障害者側は「今時バリアフリーを考慮しないなどありえない」と以前から主張していました。
 河村市長はまだ諦めていなかったようで、このほど市民討論会が行われましたが、その場で、このような主張をする障害者の方について差別的な発言があったそうです。

その模様はYouTubeで配信されていたそうですが、不適切な発言があったからということで、配信は中止になっています。

 この場に参加できたのは、「市内に在住する人の中から無作為に選ばれた5000人のうち、参加を希望する人」ということで、特に思想が偏っている人でもなさそうです。それでもこうした発言が出る。しかも会場の一部からは拍手が起きたといいます。こういう人に支持されていて河村さんもうれしいのかなと思ってしまいます。
 私は、この計画が出た当時から再建には反対の立場です。江戸時代に徳川家康が建てた名古屋城は、太平洋戦争時の空襲で焼失し、戦後再建されたものですが、耐震上問題があるということで2018年から現在まで閉館中です。もうだいぶ日が経っていますが、耐震補強して再開するつもりがあるのか、それともどうせ木造で再建するつもりだから耐震補強はしないつもりなのか分かりません。(普通耐震補強工事に5年もかかるとは思えないんですよね。)
 日本には現存天守が12か所残っていますが、それ以外はほとんどが20世紀になってからの復元天守です。名古屋の近くでいうと、清州城は平成になってからの復元で、エレベーターはついています。復元は復元と割り切って、現代の人が使いやすいような作りにすればいいのです。逆に、愛知県で現存天守と言えば、国宝にもなっている犬山城があります。小高い丘の上に立っている上に、城内には当然エレベーターなどありません。そして階段も非常に急です。訪れる人はそれを分かった上で訪れています。戦国時代の城とかは、いかに外部から来た人を城の中に入れさせないかを考えて設計されているので、名古屋城は平城なのでそう見えないかもしれませんが、そもそもただの観光施設と化した今の城郭建築とは相いれないものです。
 河村市長は、建設当時の名古屋城を再現することにこだわるあまり、エレベーターすら排除しようという方針で、それに賛同する人もいるという現状ですが、どんなに精巧に作ってもレプリカは本物を超えられません。それぐらいは認識してほしいと思います。
 そもそも本当に「建設当時の名古屋城」を作ることができるのか、疑問しかありません。江戸時代は建築基準法その他もろもろの法律もなかったので、何も気にせずに城を建てることができました。しかし、今はそのような法律があります。既存の建物を修復するのではなく、新たに建てようというわけですから、もれなく各種法律の適用を受けます。もし今建てようとしている名古屋城の天守が各種法律に引っかかる場合、そのような建物を、ましてや行政が主導して建てるということが許されるのでしょうか。名古屋市の担当者は、建築基準法を隅から隅まで読んで、それでも名古屋城天守閣の実物を想定通り建てることができると判断したのでしょうか。建築基準法を仮にクリアできたとしても、労働基準法とか労働安全衛生法とかも遵守してほしいし、あとあえて難癖をつけるとすると、建設当時の名古屋城を再建するというのなら、電動の重機などは一切使用せずに建ててほしいものです。すべて人力でやってほしいものです。徳川家康にできて河村たかしにできないはずはないと思います。
 いずれにしても、江戸時代に木造で建てられた名古屋城を、当時の建築資材が残っていて、それを再構築したというのならともかく、戦後鉄筋コンクリートで建てた時点で、江戸時代の名古屋城とは別のものということができます。その再建した名古屋城も、耐震に問題があるということで閉鎖中という現状がある中で、木造で再建した名古屋城が地震に耐えられるのでしょうか。ましてや名古屋は南海トラフ地震が来る来ると何十年も脅されているような土地です。
 ここは清州城を見習って、レプリカと割り切って、現存の名古屋城天守を耐震補強して使うしかないです。現存の名古屋城天守でももう築60年以上が経過しているわけで、歴史的建造物の仲間入りをしていると言ってもいいかもしれません。それで充分です。名古屋は観光するところが少ないとか、外の人に言われてイラっとする気持ちは分かりますが、どう逆立ちしても名古屋は京都にはなれないわけで。それぞれの特色を生かした街づくりをすればいいだけのことです。はっきり言って無駄な出費でしかないし、市債だっていずれ返さないといけないわけだし、それぐらいならもっと名古屋市民の生活が良くなるように使ってほしいものです。


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