【ATEEZ 世界観②】 ZERO : FEVER Part.2 DIARY ver. ストーリー和訳
ATEEZの6thミニアルバム『ZERO : FEVER Part.2(DIARY ver.) 』に収録されているストーリーを日本語訳しました。
全4編となるFEVERシリーズの2作目であり、Part.1では現代とよく似た次元にいたATEEZたちが異世界に転移し、物語が大きく動きます。
ZERO : FEVER Part.2 ◀いまここ
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あらすじと概要
今作『ZERO : FEVER Part.2』のストーリーでは、現代(通称A次元)に暮らしていたATEEZがクロマーの力で別の次元(通称Z次元)に転移したところから始まり、政府の手先・アンドロイドガーディアンに奪われたクロマーを取り戻すための旅を通して、超管理社会に支配されたZ次元の実態と、政府に対抗する黒い海賊団の存在が描かれています。
タイトル曲『ブルノリヤ(I'm The One)』のMVでは、物語の舞台となる「ストリックランド(STRICTLAND)」の文字が確認できます。また、MVの終わりにはアンドロイドガーディアンも登場します。
本編
A INTRO
手にしたクロマーが光を放ったが、空間は依然としてアジトの中だった。
僕を見つめているメンバーもそのままだ。
黒いフェドラを被った男の「多様な次元が存在する」という言葉も、手に持っているクロマーも、信じられない夢のような話だった。
そのとき、外から得体の知れない声が聞こえてきた。
声が近づいたかと思えば、突然、白い服を着た巨体の主たちがアジトのドアを壊して登場した。
彼らは顔全体を覆うマスクを被っていて、人間という感じがしなかった。
彼らの視線は、クロマーに注がれていた。
01 HONG JOONG
ここがどこなのか、本当に違う次元なのかは次の問題だった。
今重要なのは、あの白い服の巨体たちの目的が僕たちの手中にあるクロマーで、クロマーを奪われたら家に帰れないということだ。
クロマーとメンバーたちを同時に守らなければならなかったが、それは賭けに近かった。
そのとき、足元にある割れたガラスのかけらが目に入った。
ユノからクロマーを受け取った後、僕は巨体たちを挑発しはじめた。
クロマーをやるよ。大声で叫びながら、手に握ったものを窓の向こうに放り投げた。後ろで見守っていたメンバーたちはみな驚愕した。
輝きが放物線を描いて遠のくやいなや、白い服の巨体たちは一目散にそれに向かって走っていった。
同時に僕は叫んだ。「逃げろ!」
02 SAN
アジト周辺の空間は、僕たちが元いた場所とよく似ていた。
先ほど僕たちを攻撃した白い服の巨体たちと対峙していなければ、別の次元だとかクロマーだとかいう話は信じられなかっただろう。
とにかく幸い、僕達は無事にアジトを抜け出した。周辺の地理に慣れていたおかげで、暗闇の中でも道を探して山の中腹まで降りてきた。
目に見える空間は、たいてい僕たちが知っている現実と似ていたけれど、少しずつ違う点もあった。以前ウヨンがボボを救ってくれた崖の下には渓谷が流れていて、その上には巨大な岩があった。しかしここは水が流れる音も聞こえず、巨大な岩も見当たらなかった。
同じだけど、妙に違う空間。
そんな考えにふけっていたところ、メンバーたちの笑い声が聞こえてきた。
一息ついたメンバーたちは、クロマーが無事だという事実に安堵し、互いにじゃれ合って遊んでいた。ホンジュン兄さんが窓の外に投げたものはクロマーではなく、クロマーに似た大きさのガラスのかけらだった。
03 WOO YOUNG
俺を助けてくれたのは、月の光が似合う少女だった。
少女は俺と仲間たちを快く自分の家に招いてくれた。
追われて逃げたせいで疲れ果てていた俺たちは、真っ先に倒れるように眠りにつき、そのあいだ少女は俺のけがをした足首を治療してくれた。
ガラスのかけらに騙されて遠ざかっていた白い服の巨体たちは、森の中腹で休んでいた俺たちをまた襲った。巨体たちに足首をつかんだまま引きずられていく俺を助けようと、メンバーたちは一斉に飛びかかった。そのせいでクロマーを奪われてしまった。
巨体たちがクロマーを奪って目をそらしたとき、森の洞窟の方から石ころが転がってきた。そこに向かって走っていくと、洞窟の中で、一人の少女が岩の隙間から手招きをしていた。
少女には弟が一人いた。少女は白い服の巨体たちに声を奪われたせいで、話すことができないのだ、と少年は語った。
彼らは自分たちをグライムズ姉弟と紹介した。
04 SEONG HWA
「ある日突然、彼らは消えたんだ」
グライムズ姉弟は悲しい目で僕たちを見た。
グライムズ姉弟の説明によると、ここの中央政府はAIシミュレーションを通して、全人類の安全な未来政策を設定したという。人類を脅かすすべての犯罪やテロなどの事故は人間の感情が主要因であり、人間の感情という変数を統制することが政策の中核である、ということだった。
発達した技術力をもとに、人間の感情を基準値以下に下げる法案と、人間の感情に大きな影響を与える芸術分野の全面禁止法案が可決したのだという。
そうして中央政府は統制政策で高度な成長をなし遂げ、人々は物質的な豊かさを得た。しかし、彼らの顔からは笑顔が消え、ただひたすらに効率と論理だけを優先する社会ができたのだという。
そんな日々が続いていたある日、黒いフェドラを被った男たちが現れはじめた。
彼らはあちこちに突然現れては歌やパフォーマンスを披露し、そのパフォーマンスには人々を引きつける力があったという。
彼らから刺激を受けた人々は、だんだん感情の統制から脱しはじめた。
多様な分野の人々が中央政府に反対するため連帯し、レジスタンスを結成した。
彼らは自らを黒い海賊団と呼んだ。
中央政府は黒いフェドラの男たちを指名手配したが、彼らが持っているクロマーの空間移動機能で何度も逮捕に失敗した。
そうするうちに、政府は新技術で製作されたアンドロイドガーディアン――おそらく僕たちを捕まえにきた白い服の巨体たちのようだ――を投入し、結局、黒いフェドラの男たちを捕らえることに成功した。
黒い海賊団も、レジスタンスも、そんなことは重要ではなかった。
重要なのは、家に帰るためにはクロマーが必要だということと、その大事なクロマーをアンドロイドガーディアンに奪われたということだ。
05 YEO SANG
親愛なる父さんへ
父さん。僕は今、戻ってこられるかもわからない、ストリックランドを目指して歩いています。
いつもきれいでまっすぐな道だけを歩いていたので、でこぼこで整備されていない道を歩こうとすると、しきりに足がずきずき痛みますね。足は痛いですが、それでも気分はいいです。
仲間たちと一緒というのもそうですし、自ら決定した場所に向かって歩いているという点もそうです。
みんなここが新しい世界だと言いますが、なぜだか僕は、ここの風景になじみがあります。
森をくだってたどり着いた都心の中には、道を歩くとき空を一度も眺めることなく、追われるように走る人々。個性のない服を身にまとい、機械の上の製品のようにエスカレーターに身を載せる人々。不必要な笑顔は顔から消し去り、必要な言葉だけを交わす人々。顔を向かい合わせる方法を忘れたまま、小さな機械を見つめる人々だけがいました。
ひょっとすると、ここは新しい世界ではなく、僕が生きていた世界を顕微鏡で覗いた場所なのではないか、と思いました。
父さん。僕がこの仲間たちと一緒に歌を歌い、踊り、打ち解ける姿に衝撃を受けたことでしょう。しかし、僕は僕が生きてきた世界、いや、閉じ込められていた世界から、どうしても抜け出したかったのです。両親を心から愛していますが、僕はお二人の世界の中では、ただの一度も幸せだと思ったことがありませんでした。
アジトに使っていた倉庫から追い出され、散り散りになるしかなかったとき。それよりもっとつらかったのは、僕たちを追い出した人が父さんだったという事実でした。僕は僕を快く彼らの世界に招いてくれた仲間たちから、幸せを奪った人になりました。最初から僕と出会わなければ、こんなことは起きなかったのに。
後悔しました。恨みました、父さんを。
父さん。だから僕は、父さんが作った世界にまた戻るつもりはありません。
父さんを愛していないからではなく、それ以上に、父さんを恨みたくないからです。
息子 ヨサンより
06 MIN GI
クロマーを探すためにはアンドロイドガーディアンのバンカーに行かなくてはならず、そのバンカーを知っているのはストリックランド廃棄場の管理人であるレフトアイだけだった。
だから、ここに来るしかなかった。
ゴミを絶えず焼いているのか、幻覚症状を引き起こすという黄色い煙が、休む暇もなく立ちのぼっていた。そのせいか、レフトアイという人間も虚空に向かって一人でぶつぶつしゃべっていた。はあ……あの人からどうやってアンドロイドバンカーの位置を聞き出せって?
ウヨンのおせっかいのおかげで、俺たちはアンドロイドバンカーの位置とともに、グライムズ少女の声も取り戻すことになった。
あいつは必ずああやって余計なおせっかいをするんだ。
ホンジュン兄さんとグライムズ姉弟の話を聞くところによると、レフトアイという人間にも、何か紆余曲折の事情があるみたいだ。
まったく、事情のない人間がどこにいるんだよ。
とにかく、俺たちはチームを分けた。グライムズ少女の声を探すために、洞窟のような形をしたゴミの山の中に行くメンバーたちと、レフトアイを説得して、アンドロイドバンカーの位置を聞き出すチーム。俺は後者だった。
07 JONG HO
ダンダンダン。バスケットボールの弾む音が聞こえた。聞き間違いかと思った。
僕はグライムズ少女の捨てられた声を探すために、体を細い縄で縛って、ガスマスクをつけたままゆっくりと洞窟に入った。(声をどう捨てて、どう探すのかはわからなかったけれど、新エネルギーがどうたらで可能になったらしい)
声の形は生まれて一度も見たことがなかった。形や色はあるのかとグライムズ少年に聞くと、エネルギーが凝縮されて青い光の球のようになるのだ、と言った。
少年の言う形の球が、黄色い煙の奥深くできらきらと光っていた。
そのとき、ふたたびバスケットボールの弾む音が聞こえた。歩みを止めると、足の前にバスケットボールが転がってきた。〝勝利は僕のもの。J.H〟。僕のボールだった。
顔を上げると、僕は競技場の中に立っていた。
「何やってんだ! パスもしないで!」チームメイトが叫んだ。デジャブだろうか……。少しぼうっとした。
ホイッスルの音が競技場に鳴り響いた。ちょっとおかしな夢を見ていたみたいだ。
何かを探していたのに、それが何だったのか思い出せなかった。
試合がまた始まった。僕はコートの上に走っていった。
08 YUN HO
ファッションデザインを勉強した後、規模は小さいながらもユニークなスタイルのブランドショップを運営していたレフトアイは、その無愛想な外見のせいで、ファッションハウスの面接をいつも落とされたという。
しかし彼は優れた実力を持ち、情熱のある温かい人間だった。娘を失う前までは。
レフトアイの娘は、道路に咲いた花を救おうと手を伸ばし、猛スピードで通りかかった車にぶつかったという。
だが人々にとっては、辺りを見回すよりも先を急ぐことが重要だった。
通行人たちは、倒れた子どもを見て見ぬふりをして足早に通り過ぎ、彼女はゆっくりと死んでいった。レフトアイは遅れてこの事実を知り、憤怒し、絶望した。そして、以前とはまったくの別人になったのだという。
娘を失った彼は、ストリックランドの廃棄場で妄想を作り出す煙に酔い、娘の幻影に会った。そうして廃棄場をふらふらとさまよううちに、アンドロイドガーディアンから抜擢され、管理人にまでなったという。
彼の事情を聞きながら、俺は兄さんを思い浮かべていた。
レフトアイの気持ちが、少しわかるような気がした。
レフトアイは、ちょうど兄さんを失ったときの俺と似ているように見えた。
アンドロイドバンカーを聞き出すという本来の目的もあったが、俺は個人的にも彼を助けたかった。
そのためには、一旦煙のひどくない場所に彼を誘導しなければならなかった。
彼が見ている娘は現実ではなく、ただの幻影なのだと、事実を悟らせなければならなかった。
Z OUTRO
ジョンホの体に縛っておいた安全ロープが止まり、それ以上動かなかった。
心配したヨサンはどんな状況か調べるため、一つ残ったガスマスクをつけてゴミの洞窟に入っていった。
‐
足首を負傷したあのとき。
その試合が、ジョンホの目の前で繰り広げられていた。
ジョンホはこれまでのすべての出来事を虚像やデジャブとして片づけ、あのときの屈辱を拭い去るため、さらに激しく走った。
‐
レフトアイはメンバーたちを攻撃しはじめた。メンバーたちは追ってくるレフトアイをかわして逃げながら、煙がないところへ彼をそれとなく誘導した。
娘の幻影が消えると、彼は一層狂奔した。皆どうすればいいのかわからなかった。その静寂に乗じて、ユノが叫んだ。
「あなたの娘は死にました!」
誰もが驚いた顔でユノを見つめた。
信じるのが嫌で目を背けているが、本当はわかっているのではないか、と。
ユノがもう一度彼を追い詰めた。
「殺してやる!」
レフトアイが悲鳴のような奇声をあげ、ユノに向かって大きなバットを振り回した。
‐
「ジョンホ!」
ヨサンが到着したとき。
ジョンホは幻影に酔い、崖の方へと猛然と走っていた。
意訳部分+コメント
関連動画
‘불놀이야 (I'm The One)’ Official MV
今作のタイトル曲。黄色い空、電車の窓にあるストリックランドの文字、アンドロイドガーディアンなど、ストーリーとの繋がりが示唆されています。
ZERO : FEVER Part.2 Concept Teaser 2
観測者と思しき人物が、世界を救う〝少年たち〟について語るティザームービー。
‘HALA HALA (Hearts Awakened, Live Alive)’ Official MV (Performance ver.)
黒いフェドラの男たちが主人公のMV。
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