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2020年の三冊

今年の年末は仕事がドタバタで、家のこともあまり片付いていないのですが、新しく買ったMagic Keyboardをどうしても使いたいので(笑)記事を書きます。

iPadを買ってからMacBookを開かなくなりました。しかし、リラックスタイムにソファやベッドの上で何かを書きたいタイピング中毒の私にとって、最適解はMagic Keyboardだなと……。さんざん悩んだ末に購入。値段や重量など欠点は多いけれど、やっぱり打ち心地がよいので書くのが楽しい!買ってよかった〜。ちなみにUSキーボードです。カッコいいから笑

さて、2020年はけっこうたくさん本を読めたので、印象的だったものを三冊選んでみます。順位とかではありません。


一冊目|コナン・ドイル『恐怖の谷』

純粋に物語という観点でもっとも印象的だったのは『恐怖の谷』です。コナン・ドイル長編の独特な二部構成(一部で事件が起きてホームズが登場、二部で事件にまつわる過去の出来事を大河ドラマっぽく描く)は、『緋色の研究』『四つの署名』と同じ。ですが個人的には『恐怖の谷』が抜群に好きでした。

文学の中には、時間が経ても心に何か刻み込まれる素晴らしい作品がたくさんあります。でも記憶力の悪い私の場合、「印象」程度に全体が風化してしまい、物語を忘れてしまうことがほとんどです。

そんな私でも、『恐怖の谷』のクライマックスはおそらく何年たっても忘れないと思う。それくらいハラハラし、ワクワクし、興奮しました。印象や思想ではなく「物語」が心に残るというのも、文学における一つの素晴らしい形だなと、再認識させてくれた一冊です。

そんな次第なので、ネタバレには本当に注意していただきたい。ネタバレ禁止警報のレベルでいうとアガサ・クリスティ『オリエント急行の殺人』『そして誰もいなくなった』『アクロイド殺し』並のマックスレベルです。絶対にネタバレなしで読んでください!

シンプルに、ミステリーとして一番好きだったのはエドガー・アラン・ポー『盗まれた手紙』です。そして、ミステリーなのかよくわからないけど同系列でボルヘス『八岐の園』も大好きです。この二つは美しく洗練されているなという印象でした。


二冊目|夏目漱石『こゝろ』

説明するまでもなく有名な一冊ですが、久しぶりに読んで大いに感動。夏目漱石の文章の上手さ、構成の面白さ、主題の奥深さ、全てにおいてよくできた一冊です。何度も何度も読める本だなと思いました。

そして、上の投稿にも書いたように「先生」というキャラクターの魅力的な描き方に心を掴まれました。いや、今でも掴まれています。笑

数えきれない小説に、数えきれないたくさんの登場人物が生まれていますが、「私」と「先生」と「K」の関係性ほどシンプルで秀逸なキャラクター構成を私はまだ知りません。語り手の転換、時代の転換、それらに伴い主題を少しずつ転換させながら進む三部構成。むちゃくちゃ上手。

設定がスイッチすることによって一気に神秘のベールが剥がされる「先生」。闇を抱えた魅力的な「先生」が、突如として一人の無力な男に成り下がってしまう。その描写力が(個人的には)全体の主題以上に魅力的なのです。

日本人のおそらく全員がかつて教科書で読まされた文学。大人になったらぜひもう一度読んでほしい、声を大にしてお勧めしたい一冊です。

ちなみに「設定スイッチ系」で私が他に秀逸だと感じているのが、遠藤周作『沈黙』です。暗〜〜〜いけど、めちゃくちゃ面白くて超絶鮮やかスイッチングなので、こちらもお勧めです。


三冊目|アリストテレス『ニコマコス倫理学』上・下

三冊目はノンフィクションより。今年はノンフィクションでもたくさん面白い本を読めたのですが、中でもこれを選ぶ理由は、私の「哲学嫌い」を克服させてくれた一冊だから。笑

というのも、アリストテレスを読んで、はじめて「哲学」と「論理」の関係性が見えた気がするのです。

多くの人にとって「哲学ってようわからん」というイメージではないでしょうか?私はずっとそう思っていた。難しいというのもさることながら、現実味のない「真実」を感覚でフワフワと追求している、あまり役に立たない学問だと思っていたのです(本当にごめんなさい)。

実際難しいしまだまだようわからんのですが、少なくとも哲学=超文系のフワフワ系ではないな、と。哲学の成り立ちは論理的である、つまりけっこう数学と近い場所にあるのだ。ということを実感させてくれたのがこの『ニコマコス倫理学』でした。

そうとわかったらこっちのもん(?)という感もあり、論理学や数学の本を読みながらも哲学をイメージできるようになりました。逆も然り。

「あくまで個人が編んでいる感覚的なモノ」と(勝手に)認識していた哲学が、そうではなくけっこうシステマチックに積み上げられているとわかり、なんだか安心したというか。笑

これから哲学の本が読めるかもしれない。そう思わせてくれました。もちろん内容も面白いです。光文社古典新訳文庫、おすすめです。

『ニコ倫』はちょっと長くて読むのに気合いがいりますので、哲学なんか読んでみたいな〜という方によりお勧めできるのは、ショーペンハウアー『読書について』『幸福について』です。読みやすいしわかりやすかった。


最後に

一年前のエントリーを読むと、去年の年末年始は海外で過ごしたので、そのために持っていく本を吟味していました。結果、選んだのがクリスティ『そして誰もいなくなった』、ポー『ポー名作集』、チャンドラー『さよなら、愛しい人』という三冊(全部ミステリーやん!)。

なんとも一年があっという間でした。

非常に多くの出来事が、変化が、世間的にも個人的にもあり、感情の波が激しい一年でした。私は2020年という一年を一生忘れないと思います。

自分自身、未熟で、視野が狭く、反省点と葛藤ばかりです。

未来に希望があると今は断言できませんが、私はこれからも常に本を読み、そして考えたい。

本を読み、考える。唯一そこだけに今、確固とした信じられるものがあります。過去の言葉の数々とそこから生まれる思索だけを信用しています。他のすべては今、信じられない。というのが正直なところです。

失敗ばかりの人生ですが、真摯に生きていきたいです。

このような未熟な自分でありながらも、支えてくれたり仲良くしてくださった全ての方に感謝します。そして、世界中の人々の幸せな日々を願って、今年を終えたいと思います。

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