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「不死性は他人の記憶の中、あるいはわれわれの残した作品の中に生き続けることなのです」

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス『語るボルヘス』


ボルヘスの書く小説は総じて難解だが、彼の講演をおさめたこの本はとても読みやすかった。小説の場合は文学的知識がないと楽しめなかったりするが(そもそも知識がないのでわからないが、たぶんそうだと思う)、講演ではもう少し丁寧に語られている。

「書物」「不死性」「エマヌエル・スウェーデンボリ」「探偵小説」「時間」という5つのテーマについて語っている。短く、読みやすい。


読みやすいのだけど、テーマについて自由に語っており結論を出しているわけではないから、感想が書きづらい。

文章を書く思考回路がまだあまり万全ではないので、印象に残ったフレーズだけ残しておく。

よく引用される《書かれた言葉は残り、口から出た言葉は飛び去る》という一文、これは口頭で言われた言葉は移ろいやすいという意味ではなく、書かれた言葉は長く残るが、しょせんそれは死物でしかないということです。それにひきかえ、口から発せられる言葉には羽と同じで、ある種の軽やかさが備わっています。プラトンの言葉を借りれば、それは羽のある、神聖なものです。人類の偉大な指導者は例外なく口頭で教えを垂れてきました。(P.12)
読者が難解と思うような作品を書いたとすれば、それは作者が失敗したということです。(P.24)
私に言わせれば、ひとりの作家を理解する上でもっとも大切なことはその人の抑揚であり、一冊の書物でもっとも重要なのは作者の声、われわれに届く作者の声なのです。(P.26)
大切なのは不死であることです。不死になるというのは、成し遂げた仕事の中で、他者の記憶に残された思い出の中で達成されるものなのです。そうした記憶はごく些細なこと、なんでもない言葉として残されることもあります。(P.53)
キリストは言葉ではなく、寓話を通して教えを説いたが、その意味でキリストもまた芸術家なのだと、彼は言うのです。たしかに、寓話というのは芸術的な表現です。つまり、知性、倫理、芸術の実践を通して人は救済され得るということです。(P.70)

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