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【読書】のマガジン

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2021年7月の記事一覧

はじめて本に線を引いてみた

これまでの人生で、頑なに「本に書き込む」という行為を避けてきた。 理由は……「なんとなく本が汚れる感じがしていやだ」と「次に読むときに新しい発見を得られない気がする」の二つだった。 特に後者を、私は恐れていた。線を引くと、なんだか大事なところをマーキングしているみたいで、次に読むときに「あ、ここが大事なんだな」と勝手に脳が認識してしまうのではないか。それでは読書が現代文の試験問題みたいになってしまう気がした。記憶力の悪い私は、再読でも毎回まっさらな気持ちで読書できるという

自己啓発本について思うこと

今日は、読書関連でもちょっと毛色の違う話を書いてみたいと思います。 はじめに私は自己啓発本を読みません。「なんとなく読まない」ではなくて「あえて読まない」という選択をしています。 これから書く内容において、自己啓発本を楽しんで読んでいる方を否定するつもりはありません。ただ、もしも「楽しいから」ではなくて「人生がより良くなるかも」という理由で読むとしたら、それはちょっと違うかも……という個人的な考えを書きます。 内容よりも「誰の言葉か」が大事だと思うからそもそも自己啓発本

彼が抱える果てしなく深い孤独の語彙への嫉妬

■ポール・オースター『孤独の発明』 先日、『幽霊たち』を読んだときの記事で、こんなことを書いた。 その共通項──からりと乾いたニューヨークの街だったり、洒落て見え隠れするユーモアだったり、過剰なまでに没個性的な主人公だったり、周囲の人物に対する不安や怯えだったり、文学作品や文字に対する執着だったり──そういうものはきっと、ポール・オースターという人物の内面が滲み出た結果なのだろうな。という感じがした。 私が感じた上記のような「オースターらしさ」。その種明かしとも言える内

作家の老成と劇化

■アガサ・クリスティー『象は忘れない』 久しぶりのポアロシリーズ。長編全33作品のうち、最終作『カーテン』を除いて最後に位置するのがこの『象は忘れない』だ。しかし実際は『カーテン』の方が先に書かれていたとのこと。というわけで執筆順では『象は忘れない』がポアロシリーズ最後の作品らしい。 刊行されたのは1975年、当時のアガサ・クリスティはなんと85歳!これには驚いた。85歳になってもこんなにキレのある物語を書けるものなんだ。いかにもクリスティらしい頭脳明晰さに感心する。