アリストテレスの慎重な「倫理学講義」の価値|地から図を描くこと
■アリストテレス『ニコマコス倫理学(上)』
この本を読む上で、一つだけ念頭に置くべきと思うことがある。それは、ここに書かれた内容は、アリストテレスが(ギリシャの)若者に対して行った倫理学の講義である、ということだ。
「タイトルを読めばわかる」と思われるかもしれない。……がしかし、必要以上にそのことを意識したほうがいいと私は感じた。
つまり、これはアリストテレスといういち哲学者が世間一般に対して書いたものではないし、「私はこう思います!」と声高らかに伝えたいわけでもない。