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少年漫画の中のちんちんが『3月のライオン』の16巻の感想を言う

 最新刊の『3月のライオン』16巻を入手。

 読み、今日はセックス目当てに出会った女の子に一方的に感想を伝えた。女の子の方は3月のライオンについて一ミリも知らない。一方的に、女の子に漫画の感想をただ話した。コミュニケーションではない気がする。ただ垂れ流す。言葉を、ちんちんから出したみたいに。そしてちんちんである私は漫画を少年漫画のノリとして読んでるところがあり、そこで「少女漫画に出てくる男」ムーブをする主人公に対して、思う所を話したなあ。

 ちょうど前巻くらいからターニングポイントがあって、その巻で主人公の天才は「恋人を手に入れ」たんだけど、16巻では手に入れた後のフォロー、つまり「恋人とちゃんと話す」という、少女漫画の中に出てくる男性にしかできない高度な事をしている。すごいよ? あいつ、恋人と、ちゃんと話すんですよ?

 この「誰かと恋人になる」の先の、「恋人とちゃんと話す」ができる漫画の登場人物って、少年漫画界にはほぼいないんじゃないか説。まして彼は主人公で、将棋の世界で勝ち続けなきゃあかん。それなのに、恋人と「ちゃんと話す」。

 漫画の中でも言及があったが、こんな事をして、将棋に負けちゃうんじゃないか? まさに、16巻最後の方で、ライバルキャラクターにもそんな感じの事を想われている。

「お前に恋人ができて心を占めるものが将棋だけでなくなり/お前が変わってしまったらと/あの目のくらむようなギラギラとした/闇のような輝きが褪せてしまうのではないかと」(『3月のライオン』16巻・179話)

 と言う感じで、カッコださい言葉で。でも、そのライバルも、主人公のふるまいを認めちゃうんだよなあ。

 現時点で主人公とライバルの対局は勝負がついてないんだが、ここで負けるのがリアルだと思うんだけどどうなんだろう。
 恋人をちゃんと作り、恋人の事をちゃんと想って(ここまで少年漫画界のふるまい)、恋人とちゃんとコミュニケ―ションし、未来を話し、具体的な解決策を共有する(ここらへんが少女漫画界のふるまい)。

 そんな事をして、戦いに勝てるか?

 実際に勝てるかどうかはともかく、「説得力」の問題。
 恋人とちゃんと話ができて、それが「勝ち」になるのって、長らく少年漫画界では「勝利の説得力の材料にはならない」気がしていた。
 や、一方的に男性が「恋人のことを想う!」みたいな気合は説得力になってきたとは思うのだ。
 ただ「ちゃんと話す」という、地味で面倒くさくて、時に女性を理不尽なところとかも受け入れなきゃいけない感のある面倒くさいムーブを受け入れたら、勝利から遠ざかっていたのが、従来までの少年漫画的世界だったんじゃないか。

 具体的に言うと、ベジータが妻や子に丁寧になってきたら、どうなったか。
 ベジータは2度と悟空に勝てなくなった。
 一方悟空は子育てを放棄し、妻との関りを放棄し、生活を一切顧みず、人を捨て、育ちの縁よりサイヤ人という異種族生まれというルーツを尊び、最終回は敵の生まれ変わりを引き連れて修行の旅に出るという。どこまで妻子捨て夫なことをするのか。
 でも、だから悟空は勝てる。今でも、勝ち続けている。

 『3月のライオン』では、明確な悪役として「妻子捨て夫」という、表面的に人当たりが良いが、どこまでも自己中心的にふるまう悪役がいて、主人公の恋人や恩人を精神的に苦しめる人物が登場した。今は、全く登場していない。
 あれ、今思うと、「力のない悟空」だったんじゃないかなあと思った。悟空に成れず、勝てもしなくなった、少年漫画の残骸。
「妻子捨て夫」は、経済的にも苦境にある。働かないからだ。
 ただ人当たりがよく、理想の自分を目指し頑張ってきたが、運悪く、かつ、運に負けて良くなろうともしなかった、神である作者に見捨てられた人物。俺、妻子捨て夫にものすごく共感して読んでたんだよなあ。あれは、俺だと。

 3月のライオンの16巻の中の話で、今回、経済的に貧困している人が、縁で救われるエピソードがあった。
 その人はピアノの才能があり、良き人物として描かれていて、その救済の資格というか……説得力を感じた。
 その一方で、妻子捨て夫のような、あるいは序盤に出てきた「研究不足のまま対局し、勝利した主人公に嫌なふるまいをする年上の対局相手」とか、嫌な人、ダメな人、力がないので人を利用し生き延びようとする悪い人は、経済的にも破綻や貧困を味わい続ける。

 優しい世界なんだなあと思った。
 そしてここに俺はいないんだなあ。

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 将棋漫画というか、将棋って、必ず敗者が出現する。敗けにはかならず理由が出現する。その、負けを味わうのが、将棋漫画(現実のルールを用いた勝負系漫画)の良さだよなあ。そして優しい事に、負けて、人格もだめな人は、経済的にも物語的にも大ダメージを追う。

 優しいよなあ。主人公は勝つんだろうな。優しく、しかもちゃんとコミュニケ―ションをして、具体的に恋人と建設的な関係を築くことができるから。
 これが勝利の「説得力」の一つにされてしまうんだろうなあ。
 そこに、なんか、つらいなあと思った。つらいなあ。

 ただ、僕ももう悟空的な生き方は僕にも違和感がある。ただ強い人って、修行したから、がんばったから、友情がすごいから、父親とか血統が尊いから、勝つ、っていう少年漫画的な説得力にもぜんぜんのめりこめない。
 わしがおじいさんだからだろうか。

 最低の人間で、努力もせず、幸運にも見放され、でも「勝つ」みたいなお話はないのかなあ。

 ブレヒトの『三文オペラ』みたいな、異化が効いてる話。聖書のヨブ記の逆みたいな話もそうか? 
 年とったのか、史記のテーマである「天道、是か非か」に、説得力を感じるというか。
 それは俺の今の現状なんだなあと思った。
 今猫氏は、女の子に優しくしてもらわないと頑張れない。
 しかも猫氏は、どこか人格として欠けているころがあり、女性を人間として見ていない所がある。なのにやさしさだけ奪っていく。人格を見ていない。それなのに、勝ちたいなあと思ってる。もう努力もできないのに。

 みたいな感じの事を、女性に出会ったら話したいなあ。3月のライオン読んでる人の感想聞きたいなあ。聞きたいなあ。

 生きていきたいなあ。

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