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ジェンダーX・グリーンブック    ーどこにも属さない疎外感

今年の始め、EJの2月号の記事タイトル「ジェンダーX」を見つけたといいますか、吸い寄せられました。決して関連づけて視たわけではないのですが、黒人差別を土台としていた映画に、心打たれました。

ジェンダーX

タイトルに吸い寄せられたのは、EJのNewsコラム。アメリカ国務省が2021年10月27日に、初めて女性でも男性でもない「X」の性別表示のあるパスポートを発行したという記事でした。国務省は名前を伏せて発表したのですが、公民権擁護団体ラムダ・リーガルが交付されたのは、アメリカ海軍の退役軍人ダナ・ジム氏であることを公表しました。彼が不屈の精神で6年の渡る法廷闘争で勝ちとった人権だということです。

このジェンダー「X」の件に驚いたのですが、さらなる驚きは、公文書に第三の性別を提示したのは、アメリカが最初の国ではないということです。すでにカナダ、ドイツ、オーストラリア、インドでは実効されていて、アメリカは5番目でした。私はもともと「ノンポリ」(死語かな?)ですが、これまで知りませんでしたし、無関心でした。

グリーンブック

年明けに見た映画は黒人差別を扱った「グリーンブック」です。
映画は実話を土台に脚色されたもので、黒人天才ピアニスト、ドクター・シャーリーとイタリア系白人のボディガード兼運転手のトニー・リップが1960年代の人種差別が根強く残るアメリカ南部を演奏ツアーで巡る、ロードムービー。ツアー中に、二人の個人と個人の関係に機微があり、やがて二人の生き方さえを変えていくというストリーです。
ちなみに「グリーンブック」とは、黒人専用のホテルやレストランを紹介した黒人向けトラベルガイドのこと。

この映画で心打たれたのは、人種差別を超えるとか超えないとかではなく、全くの違った世界の人間同士がぶつかり合いながら、その交流を通して、理解し合い、友情を紡ぎあげていくことの素晴らしさでした。

トニーは、ニューヨークの一流ナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒をつとめるガサツで無学な人物。ドクターは9歳でレニグラード音楽院に入学、ピアニスト、作曲家、編曲家として活躍する他、音楽、心理学典礼芸術の博士号をもっているというインテリ。高級アパートメントに住み、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才ピアニストですが、レコード会社の「黒人のクラシックは受けない」という方針で、ジャズのようなものを演奏せざるをえませんでした。

ドクターは自ら望んで南部ツアーに出向きます。南部深く入っていくうちに、ドクターはトニーと同じホテルに泊まることができなくなり、トニーとは別の黒人専用ホテルに泊まることになります。そして時には殺されそうになるような危険や不当逮捕による屈辱的な目にも合います。とりわけ同じ黒人からも反感を買ってしまう。そんなドクターを助けに行くのはトニーでした。

ツアー最後のホテルで、レストランへの入場を拒否されたドクターは当日の演奏を断り、トニーといっしょに黒人専用のバーに行きます。そしてそこで、演奏をして、喝采をあびます。

そうだよ!トニーは言っていたじゃないか「こんな素晴らしい演奏はドクターにしかできない」と。白人でも黒人でも、男でも女でも、そんなのはどうでもいい。素晴らしい演奏ができる。それでいいではないか!

グリーンブック2


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