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わさび

ずーっと、ずーっと、苦手で食べられなくて敬遠していたのに急に食べられるようになり好きになった食べ物があります。そう、それがこのタイトルの「わさび」です。正直自分でも驚いています。

この50数年間、お寿司もお刺身もお蕎麦からもわさびを徹底排除して生きてきました。だってわさびを乗せた瞬間にすべて「わさび」に味をもっていかれるじゃないですか?どんな食材やお料理もわさびを付けた瞬間に全部「わさび味」になってしまって元の味を打ち消しているように感じます。ミントチョコだって、元はチョコレートなのにミントが入った瞬間にミントに主導権を握られますよね?なんならミントミントチョコ、くらいの比重になりませんか?え?違う?違っていたらごめんなさい。

でも、この間ふと思い出したんです。わさびに関する辛い幼児体験を。もしかしたらこれがずっと私をわさびから遠ざけるきっかけになってしまっていたのではないかと。

まだ幼稚園に通っている頃の年齢だったと思います。親戚も呼んで一緒に夕食をとる日だったらしく、食卓には丸い大皿にお刺身の盛り合わせが用意されていました。ピンクのお花の形をしたプラスチックの小さな容器にこんもりをもられたパステルグリーンのわさび。当時私はわさびという存在を知りませんでした。「なんだろう。この綺麗な色の物体は?」そう思ってまずその物体にゆっくりと顔を近づけてにおいをかぎました。息を吸い込んだその瞬間、得も言われぬ感覚が全身を駆け抜けたのです。あまりの衝撃に最初は何が起こったのかわかりませんでした。鼻から吸い込んだ練りわさびの香料が脳天を突き抜ける衝撃。今も忘れられません。よく漫画などで「〇×△◇☆!!」みたいな表現がありますがあの時の私はまさにこれです。呼吸ができなくて(実際はできていたと思いますがそのくらい苦しかった)涙目で「水!水!」と叫びました。でも、状況が分からない母や祖母は「どうしたの???」と聞くばかりで水をもってきてくれる気配がありません。あの時は本当に母と祖母が恨めしかったです。とりあえず水を持ってきてほしかったです。

思えば、それがトラウマとなりわさびを受け付けない身体になってしまったのかもしれません。でも、今度は逆に何がきっかけかは分からないのですが、わさびが好きになってきました。今ではお寿司もお刺身をわさびなしでは物足りないくらいです。なんなら、ふとした瞬間にわさびだけ食べたくなる時もあります。
20代前半、国内旅行のツアーコンダクターの仕事をしていた頃は何度も長野県のわさび田に行っていたのに、生のわさびを買っていなかったことが悔やまれます。脳内BGMは、「あの日にかえりたい」by 荒井由実です。

人間の身体って不思議ですね。「一生に食べられる量は決まっていてそれ以上食べると食べられなくなる。」と聞いたことありますが、私のわさびの場合、食べてなかった分を今取り戻している感じなのでしょうか?
実を言うと「からし」も今、きています。からしも好きになってきました。50代からの味覚変動、なんでしょうね?死ぬ前に食べておいたほうがいいですよ、という神様の思し召しかしら?
そういう意味で言うと、まだ「納豆」と「なす」という障壁がのこっています。この先も少し生きていたら食べられる日がおとずれるのでしょうか?


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