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Ringlet the Fairytale 8.1stリリース


81話「枯れない蓮」あらすじ

 大恋愛の末に結ばれたグハパーラとアナスーヤーだが、夫が遠地へ商売に出かけることになってしまう。ふたりはお互いの貞操を心配し、苦行して神に助けを求めると、神から「貞操を手放すと枯れてしまう蓮」を授かる。
 異国の地で商売に精を出す夫グハパーラから蓮の秘密を聞き出した男たちは、アナスーヤーを唆して蓮を枯らせる遊びを思いつき、夫の留守を預かる妻のもとへ赴くが……。

出典と補足

 「カターサリットサーガラ」に収録されている話で、物語の主人公であるナラヴァーハナダッタ王子の父ウダヤナが母となるヴァーサヴァダッターと駆け落ちした際、彼の家臣であるヴァサンタカが語った「貞女デーヴァスミターの物語」という形で登場します。

 Ringlet版の第54話「魔法の下着」は本話の欧州版であり、非常によく似たストーリーを展開します。夫の職業や旅立つシチュエーション、マジックアイテムは異なりますが、物語の大枠はほとんど同じで比較検討する価値があります。
 物語の枠組みを見てみると、下記のようになります。

 1.愛する夫婦がなんらかの事情で離れて暮らすことになり、その間の貞操を心配します。
 2.浮気をした際に反応するマジックアイテムを持って出かけます。
 3.夫側に悪巧みをするものが現れ、マジックアイテムの特性を聞き出します。
 4.悪者たちは妻を誘惑して夫に恥をかかせようとしますが、返り討ちにあって恥をかかされます。

 マジックアイテムは欧州版では「シャツ」、インド版では「蓮の花」で、どちらも貞操を損なわない限り綺麗なままという特性を持っています。
 それを不思議に思うのは夫側の周りにいる人間で、彼らはどうにかして妻をそそのかせようと努力しますが、返り討ちにあいます。ここで称賛されるのは妻の知恵であり、夫はなにも知らないまま物語が進行していく点も共通しています。

 この2つの話がどのように成立したのか、インド版のカターサリットサーガラ収録の本話は1083年より前、ゲスタ・ローマノールム収録の下着の話は1342年より前ですが、自分が知らないだけでもっと古い本に類似ストーリーが載っているかもしれません。

2024.03.23 起源に関する追記

 AT分類を大幅に補足した「国際昔話話型カタログ 分類と文献目録」によれば、この話は888番「貞節な妻(旧話型875Cを含む)」に分類されますが、主な2種として挙げられているのは「トルコのサルタンの話」になります。

トルコに奴隷に取られた男があるシャツを着る。それは家に残した妻が彼に対し誠実である限り白くあり続けるシャツである。サルタンが男の妻を誘惑するために使者を送るが無駄である。

国際昔話話型カタログ 分類と文献目録

 この資料には文学作品として「カターサリットサーガラ」も「ゲスタ・ローマノールム」も言及されているのですが、この話に関する注釈にはありません。ただ、話の筋建てもマジックアイテムがシャツである点も「ゲスタ・ローマノールム」のストーリーとまったく同じものなので、このふたつは相関があると考えて差し支えないでしょう。

リンク

https://ringlet.sakura.ne.jp
公式サイト
https://www.freem.ne.jp/win/game/20958
ふりーむ!
https://kampa.me/t/vgv

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