五里霧中~人生の落とし穴

【ノンフィクション】五里霧中~人生の落とし穴

この物語は僕が詐欺にあって自己破産するまでの自分の備忘録、そして自分のような愚かな考えで人に陥れないように戒めとして書いています。


この物語は約1年半にわたって自己破産にたどり着いた、一人のバカなサラリーマン、父親、夫の物語です。


恥ずかしながらプロフィールを話すと僕は現在35歳です。
名前はゆうやです。

そして同じ年齢の妻あいがいて結婚は7年目になります。


子供は二人。
長男4歳、長女2歳の四人家族です。


登場人物について
※この物語はノンフィクションですが、個人名はさすがにまずいので、仮名とさせていただきます

ピカンチュウ(42)

自己破産経験もあるバツ3の男。
過去には不動産会社(主に売買、仲介)をしていたが、事業に失敗し破産した。

見た目は非常に整った顔だが、これまでのストレスからか、頭が禿げていて、現在坊主である。
人の欲求を嗅ぎ付ける能力は群を抜く。


踏み倒しのテツ(40)
建設会社の代表

体中に刺青があり、自信たっぷりな言動は全て人を騙すためのカモフラージュであり、建築工事を工務店に頼んだあとは支払いを踏み倒す事も平気で行う。

人を半ば脅してお金を巻き上げる事もしばしばあり。

ドングリ社長(58)
不動産会社の社長で、不動産歴は30年以上である。


不動産の売買、仲介に加え金を貸し付けて相手の物件担保をとり、競売にかけたりブラックな手段を使う。

バツ2の離婚歴あり。
名前通りドングリのような輪郭をしている。


国山貧子(34)
バツ1のヤンママ。シングルマザー
で小学生2人の連れ子あり。
10歳年下の恋人はポン太で、貧子と同棲中。


物語のあらすじ

僕ゆうやは結婚を機に、嫁が元々住んでいたK市に移り2DKのアパートを借りて住んでいました。

僕は元々仕事に関して都心部で警備会社の営業マンをしていたのですが、もっと収入を良くしたい思いからK市内にある住宅メーカーへ転職する事になりました。

そこにいたのがピカンチュウであり、以後僕の指導役として関わる事になっていきます。

このピカンチュウとの関わりで僕の人生が大きく変わろうとは知るよしもありませんでした。


①ピカンチュウとの出会い

転職した初日、ピカンチュウが僕の指導役として今後関わる事になり挨拶をしてきた。

整った顔だが、坊主頭に色白。
体格は元ボクシング経験者で胸板が厚く、一目みてただ者ではない印象を受けた。

しかし、実際のピカンチュウは声が小さく、時々何を話しているのか分からい時がありました。


話を聞くとピカンチュウは2年目の社員で僕と同じ中途入社だった。

しかしピカンチュウは社内でトップの営業マンだった。
成績表をみても一人抜けている。


一ヶ月に1棟売れたらほめられる世界で、ピカンチュウは平均2棟契約する。


すごいのが、初めて接客するお客様がピカンチュウに接客されると5時間後には契約になっているパターンがあり周囲の人間からは【契約マシーン】と揶揄した。

こんなすごい人に指導してもらえるのか、僕は心が踊りこの先成長できる事を確信しました。


※この時、やはり自分の第六感は危険な人なのではないかとどこか感じてしまう部分はありましたが、転職したてで誰にも頼れなかった環境で話していける人はピカンチュウ以外いませんでした。

②ピカンチュウの営業成績の秘密

住宅メーカーとは営業マンの成績順で接客する順番も決まっていきます。

ピカンチュウはトップバッターで接客していき、成約率もなぜというくらい高いものでした。

どんな営業トークをするのか、近くで話を盗み聴きしようとしましたが、声が小さいので聴く事はできませんでした。


しかし、徐々にピカンチュウとの距離が近くなるにつれて成約率がなぜ高いのかだんだんわかってきました。


僕のいた住宅メーカーでは仮契約と本契約があり、仮契約時に100万までの一時金をお客様に払ってもらいます。


それを受けて本契約までに建物の図面を完成させ、金額も納得いくようにして初めて本契約になります。


ピカンチュウは一時金をお客様に払ってもらう時に、もし本契約までに納得いかないなら全額返しますとお客様に伝えて仮契約を締結します。


しかし、これはかなりリスクのある事で、本契約までに締結できなく、解約になった場合はピカンチュウが立て替えて解約料を払うという事になります。


契約の入口としては、お客様にとっては解約してもお金を取られない事からリスクがなく契約するので成約率が高くなるのです。


③ピカンチュウの策略
入社してから僕は5ヶ月目で1棟、6ヶ月目に1棟契約をとり、雇い止めにならず更に3ヶ月の雇用延長をして残る事になった。


1棟目も2棟目もピカンチュウが一緒に接客して契約していただいた。


とにかく何故かというくらいピカンチュウはよくしてくれた。


例えば、会社には自転車で通っていたが、帰りはピカンチュウが車で家まで送ってくれる事が多々あった。(翌日は会社まで歩いていくのだが)

夜ご飯もたまに連れていってもらったり、全ておごりだった。


何でここまでしてくれるのか?
人が無償でしてくれる事には裏があると疑わないといけない。

皆さんお小遣いをもらう時には両親に肩もみしたような経験はないだろうか?


前置きは非常に大事になる。


ここで振り返りたいのが、まだピカンチュウと出会って6ヶ月程だった。どうしてここまでしてくれるのか?
一度ピカンチュウに聞いた事があった。

「俺と一緒の臭いがするから」

彼から返ってきた言葉はそれだけだった。

似てるところはあるかもしれない。

元来僕はプライドが高い人間で人から指示される事に抵抗があり、よく怒られたりするが、本当に反省した事がなかったかもしれない。

そして心が鈍感な人間と自分を客観視して思うところは自覚していたので、ピカンチュウはそんな僕を見透かしていたのかもしれない。

入社から6ヶ月。
僕は正社員に晴れてなれた。

しかし、明るい未来が待っているわけではなく、暗闇の世界に知らず知らず入り込んでいたのだった。

僕は正社員になってからも契約をとり、気付けば入社から1年が過ぎていた。


そして運命の歯車が動き出す。

僕は店長から過去の資料請求客のリストからアポイントを目的とした電話をしていた。


すると【国山貧子】の番号と住所が書いていたリストをいつもの調子で電話した。

国山はすぐにでも家を建てたいという希望があり、安い土地があれば契約したいという希望を叶える為、アポイントをとって来場してもらい土地の情報を片っ端から提案した。


貧子は打ち合わせに際して一つの土地の事を教えてくれた。

土地はそこで決まり契約の締結となった。

そして家の中身を決めていく打ち合わせの際、僕は一つの誤った説明をしてしまう。

家の外壁は通常定番シリーズから選んで、色ちがい二種類で構成されるのだが、カタログにレンガ調のブロックが家の四角に貼り付けられた装飾も色ちがいなら定番でできると思い説明した。


ところが、後から確認したら追加費用で35万程かかる事がわかり、猛烈に貧子はクレームをつけてきた。


まだするかしないかはっきりしていない状態で実害があったわけではなかったが、責任をとって半分の17万を負担しろと強く要求された。


冷静に考えれば恐喝未遂でこちらも強気に対応すれば良かったが、揉め事を大きくしたくない、お客様は一生に一度の買い物かもしれないという事でその要求を飲んでしまう。


同僚や上司に相談して解約になってもいいと言われてたが僕は言えなかった。

結局僕は17万払うということ、そして表向きは貧子側が払う事にしてお金は払える時に払うという結論になった。

上司にも嘘の報告をした。
思えばこの頃から転落への道が出来ていたのかもしれない。


僕の頭は混乱していた。
どうしたら17万作れるだろうか。

親に頼むか、消費者金融に行くか。
しかし、ピカンチュウに僕は事の顛末を説明し、何とかしてやる神にも救われた気分になった。

ピカンチュウの提案はこうだった。

・17万を払うのはあと半年は待ってもらい、一気に払うと貧子に伝える。

・その間に僕は中古物件を買ってリフォームし、転売したお金で貧子に17万を返す。

冷静によく考えたらとんでもないギャンブルな話だった。


しかし、当時の僕はお金を作れるなら手段を選べない、急がなければとかなり焦って冷静に判断できなかった。

妻のあいにも黙ってローンを組んだ。
この時かなりの罪悪感に苛まれたわけだが、心を鬼にし、物件が売れるまでの我慢だと自分に言い聞かせていた。


僕はピカンチュウの提案を飲み、中古物件を買った。

ローンはそこそこの会社に勤めていたので、審査はスムーズだった。

中古物件は700万だった。

そして更にリフォームする為にリフォームローンを組んだ。

金額は500万だ。

リフォームローンは通常融資元からリフォーム施工会社に振り込まれるはずだが、自分の口座に500万振り込まれ、ピカンチュウに渡してリフォーム会社へ渡る構図になっていた。

中古物件、リフォームローンの月々の支払いを合算すると毎月8万円を払っていかなければいけない。

僕がなぜこんな事をしたか?
ピカンチュウにこう言われた。
「ローンは全部毎月俺が払っていくから心配するな」

この甘い言葉に僕は崩れていった。


本当に払ってくれるのか?
僕は心配しながら、月末を待つことにした。

次回に続く

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