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グアテマラ エルソコッロ農園ディエゴさんとの出会い(カップオブエクセレンスで優勝した時の写真ですー場所はグアテマラシティのアナカフェ本社セレモニー会場)

グアテマラ エルソコッロ農園は2007、2011、2020、2023と4度カップオブエクセレンスで優勝しました。 

エルソコッロとの出会い
2009年グアテマラの生産地を訪問しました。
グアテマラシティ東方のパレンシア地区の2つの農園を訪問し、少し時間があったので、輸出業者さんと相談してもう一つ見に行くことにしました。
それがエルソコッロです。すでに時間が午後3時を過ぎています。道行く人に尋ねると
「7つの小川を渡ると着くよ」
ということです。
私たちはピックアップで目的地を目指しました。
ちなみに生産地では農園主は大きな4WDで農園を案内してくれます。
マニュアル車です。AT車では到底農園を周れません。時にはたどり着くことすらできません。
(余談ですがほとんど日本車です!!)
道はどんどん険しくなりアップダウンも激しくなっていきます。
地道ですごく揺れます。車のシフトレバーはずっと1(low)です。
険しく細い山道を下って小川を渡り、また上がっていって下りの繰り返しです。
日暮れ近くになってやっと着きました。そこは山奥で、ずっと農園と森が広がっていました。
コーヒーの樹々はゆったりした感覚で植えられ、たわわに実をつけ、生き生きしています。
変な表現ですが、「気持ちよさそう」に見えるのです。

「この農園のコーヒーがほしい、やいてみたい」
という猛烈な感情が突きあがってきました。
で、いきなり輸出業者で親友でもあるオルガ・アヤウさんに話しました。
「ここの豆が欲しいの」
彼女は少し驚きた様子でしたが、すぐにはなしをつけてくれました。
農園主のディエゴさんとご子息のファンディエゴさんと少しお話しすると、CoEでも優勝した優良農園でした。
お二人も驚かれた様子でしたが、オルガさんの親友でもあり、話は順調に進み、その年私はここのコーヒーを買い付けることに成功しました。
(その後、私はほぼ毎年ここを訪問することになります。)
あっという間に日が暮れました。あたりは真っ暗です。
(真っ暗な中あの山道をもう一度7つの小川を渡るのか・・・)
絶望的な気分です。がけ下に転落する自分を想像してしまいます。
ところが農園を出たあと、道はすぐ平たんになりゆっくり山を下っていきます。??????
実は私たちは裏道をショートカットしてエルソコッロ農園に着いたのでした。
地道とは言え、整備された山道を小一時間走り、すぐ舗装道路に出ました。
市内にはそのあと約1時間で戻りました。帰路はあっという間という感じでした。

2011年には、CoE(カップオブエクセレンス)に国際審査員として参加していましたが、このエルソコッロが1位のトロフィーを受け取るのを自分の目で見ることができました。

エルソコッロはコンテストの常連農園です。
山の高さや地形というテロワールも素晴らしいですが、農園主の考え方が素晴らしいです。
もともとは野菜や畜産が中心だっだところですが、1980年頃山の30%ほどをコーヒー園に転換しました。
その際普通はもともとの樹をすべて伐採してコーヒーとシェードツリー(日陰を作る樹)を植えます。余談ですが、コーヒーは熱帯の高地、森の中がもともとの生育環境です。なので直射日光には弱いのです。ブラジル以外ではシェードツリーを植えます。ブラジルは緯度が低いので日陰がないほうがよく育ちます。
エルソコッロでは、ほとんどの大きい樹をそのまま残し、その間にコーヒーを植えました。またもともと牛をたくさん飼っていました。今でも飼っています。コーヒーを植える前にまず牛をそのエリアで放牧します。何年かたった後、牛を違うエリアに移します。その土地はしばらく養生させて牛のふんが土になじむのを待ちます。こうして作り上げた素晴らしい土壌に、コーヒーの木と木の間隔をしっかり開けて植えます。
農園を訪問するといつも車で農園内を廻って見せてもらいます。エルソコッロでは、樹はゆったりと植えられ、葉は濃い緑色でつやつやし、枝にはみっちり実がついています。枝や実が多すぎると味が薄くなり実が小さくなるので、肥料の配分や剪定でコントロールします。常に新しい品種を植えて、最適のものを探している農園です。
2020年、2023年とここのゲイシャ種がカップオブエクセレンスの1位になりました。
数年前に植えたものがやっと出荷できる量が取れるようになったようです。
訪問した数ある農園の中で、ここは理想的な農園の一つです。

<コーヒーの病気さび病について>
2015年ころから中米ではさび病というコーヒーの病気が深刻になりました。葉の裏に茶色のスポットができ、(菌です)ひどくなると葉が落ちてしまいます。
葉の裏なので薬をスプレーするのも難しい作業です。感染力の強い恐ろしい病気です。人が媒体となることも多いです。
中米特にグアテマラは「ブルボン神話」と言っていいくらいブルボンの樹を残しています。
ティピカ、ブルボンはアラビカの元の元、古典種です。
ほとんどの品種はここから生まれています。
どちらも病気・害虫に弱く、手入れが悪いと収量もかなり悪くなります。
今回のさび病の蔓延でブルボン種から他のものに切り替える動きがさらに顕著になりました。
農園を放棄したり、アボガドなど他のものを植えたりということが起きました。また、豆泥棒や苗泥棒が横行しました。

エルソコッロはさび病対策をかなり早い時期から始めていました。
さび病に強く味も良いとされている品種をいくつも植えています。
さび病は標高の高いところではあまりひどくならないので、エリアによって違うものを植えます。
イエローブルボンを植えているエリアもあります。
「川のほとりの樹に、少しさび病があるよ」とデイエゴさんが教えてくれました。湿気を好むようです。
一歩エルソコッロ農園を出ると、他の農園はまるで竹ぼうきを逆さにしたような惨憺たる有様でした。
特に手入れがされていないブルボンは幹も細く、苔の良なものが生えて1枚の葉も残していないような状態でした。
残念なことにこのさび病が大流行した数年間、コーヒー相場が低迷を続けていました。
ポンド当たり1ドルを切る価格です。最近でもずっと1.2-1.3ドルあたりで低迷しています。
スペシャルティコーヒーはもともとこの相場に連動した価格での売買を否定するところから始まっています。
サスティナビリティ、トレサビリティを重要と考え、生産者が持続できるよう、コストと品質に応じた価格を払ってきました。
でないと、生産者がいいコーヒーを作り続けることができないからです。
農園の持続・継続の可能性とコスト、温暖化についてはまた改めて書きます。

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