「虚空の旅人」読みました

「虚空の旅人」(文庫版)
上橋菜穂子 著  新潮社(2008年)

「守り人シリーズ」四冊目。皇子、というか皇太子だったんだった。を主人公にした物語としては一冊目ですね。
皇太子、新王誕生の祝いの会に参加して、騒動に巻き込まれて行く。という感じの話。
この国においての「守り人」のような存在も関わってきて、一国だけでなく周辺の国々もどんどん巻きこまれてしまっていくのではないか。と思わせる物語でした。

ずっと一冊完結でやってきた物語が、続き物になっていく作品だとあらすじにありましたが、正にそんな感じでした。話自体はそれなりに決着を見せるのですが、あれやこれやそれやがどうなるのか、これから描いていただけるんですよね!?という感じ。

これまで「守り人」の名前でバルサさんを主人公として進んできた物語が、「旅人」の名前になって、チャグム皇太子を主人公として進む物語に代わりました。
これまで国家的なごたごたを描きつつ、あくまでそこに巻き込まれるのは個人で、自分や周りのことだけどうにかしたら良かった感じでしたが、今回は国と国との関わり合いが描かれます。
自分の感情のままに動くことはできないし、もしそうしようと思うなら丁寧な根回しが必要だったりします。主人公が一時バルサさんたちと交流があって、現在でも細々とながらつながっている。という背景はありつつも、そして各所に彼女たちの影響は見えつつも、これは別の物語なのだな、と感じました。
シュガさんがお付きの人的な感じでついてきてくれているんですが、何だかんだ彼が一番大変だったかもしれない。

(あと個人の感情と国の立ち位置とか色んな考え方が折り重なって行動したりしなかったりして誰が何をいつどこでどうしたんだったっけ?と、途中で何度か前に戻りました。毎日少しずつ読み進めるので前のことをしっかり覚えていない。)

そしてこれまで周りの人みんな大人。みたいな感じだったチャグム皇太子が、同年代の存在と交流を持っていきます。
めちゃくちゃいい関係になれそうな人と出会うんですが、何しろ国と国との関係の中にいるもんだから、今後どうなるんだろうなぁと思っています。

そして、この物語、主人公と言ってもいい存在がもう一人います。国に属することなく海の上で生活する民の一人で、国家間のいざこざに巻き込まれてしまった少女。
性別の問題なのか、これまでバルサさん(個人)が主人公だったのを引きずっているのか分かりませんが、チャグム皇太子があれやこれやをしている間も、あの子は!あの子は今ちゃんとこっちに向かえているんですか!?無事でいるんですか!?っていうのがどうにも気になってしまう。彼女は戦う人ではなくある意味普通の少女なので特に。
最後は最後で、ものすごいものに巻き込まれてしまって結果的によろしくないものも知ってしまって今後の彼女は平穏を取り戻せるんですか!?と気になってしまうんですよ。今後、彼女がまた出てくることはあるんだろうかなぁ。

謎が謎を呼ぶような今回の作品でした。今まではずっと壮大なプロローグだったのかもしれない。次回はまた守り人に、つまりバルサさん主人公に戻るのですが、今回の物語が何らか関わってきたりするのか、登場人物たちのその後的なものは描かれていくのか、気にしつつ、読んでいきたいと思います。