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「アプリの未来、可能性#1 -ネイティブアプリ編-」レポート(前編)

「アプリの未来、可能性#1 -ネイティブアプリ編-」では、長きにわたりアプリ開発に携わってきたDroidKaigi代表理事である@mhidakaをゲストにお招きし、ヤプリiOSエンジニア@k_katsumiとCTO佐野モデレーターのもと、「アプリ業界のこれまでとこれから」についてお話しています。

当日は「Google I/O2021振り返り」「アプリ開発の変遷・現在地 」「アプリ開発の未来」という3つのテーマでディスカッションを行いましたが、今回の前編では「Talk1:Google I/O2021振り返り」についてレポートします。

Google I/O2021振り返り

佐野:そろそろ始めたいと思います!聞こえてますかね?反応見えないけど(笑)

日高:聞こえてるんじゃないですか(笑)

佐野:はい、大丈夫そうですね(笑)では「アプリの未来、可能性 - ネイティブアプリ編- 」ということで、AndroidとiOSのアプリ開発のレジェンドのお二人をお迎えして始めて行きたいと思います。こちらは DroidKaigi代表理事を務める日高さんです!

日高:宜しくお願いしますー!

佐野:そして、あのアイコンは絶対見たことあるはず、iOSエンジニアの岸川さんです。

岸川:宜しくお願いします。岸川です。

佐野:ウェビナーのモデレーターはヤプリ共同創業者の佐野が担当します。初挑戦なので温かく見守って頂きたいです。これから一時間ちょっとですが、先日開催されたGoogle I/Oの振り返りをとっかかりに、アプリ開発やアプリ自体の立ち位置がどう変わっているか、今どこにいてこれからどうなっていくのかを楽しくお話できればと思っています。

一同:(拍手)

佐野:日本でiPhoneが発売されたのは2008年のことですが、その当時の黎明期からアプリを開発されてきたお二人から、アプリのこれまでとこの先がどう見えているのかを聞けるのが本当に楽しみです。

ちなみに2008年って僕がヤフーに入社した年なんですよね。入社直後に「iPhone対応祭り」というのがありまして、何もできない新卒メンバーが検証用のiPhone端末を確保するためにそこの六本木のソフトバンクに並ぶというアプリ開発に全然関係ないことをしていました。

一同:(笑)

Topics1 GoogleにおけるAIの進化

佐野:そこから考えるとアプリ開発はかなり成熟したなという印象です。2年ぶりに開催されたGoogle I/Oについて、色々盛りだくさんだったと思いますが、日高さんが注目しているトピックスなどありますか?

日高:Google I/Oって毎年テーマが変わるのと2年ぶりというのもあったので、大きな変化があるのかな〜と思っていたわけなんですが。やっぱり中心に来るのはAIの進化。あと飛び道具っぽくて面白かったのは量子コンピュータとか。見ました?岸川さん。

岸川:見ました見ました。まぁあれはだいぶ、小芝居が凝ってるというか(笑)

日高:ね、面白かったですよね。

岸川:あのエリアが映って、色々見れたというだけでも面白かったですね。

日高:そうなんですよ、GoogleとしてAIがもう少し事業・テクノロジー中心に来るんじゃないかという話もあって。あとはAndroid 12の話やLaMDA(ラムダ)っていうサービスのデモもありましたね。

岸川:LaMDAはすごい。まだ見てない人がいたら、あそこだけでも絶対見た方がいいと思いますね。

日高:受け答えするときに「天気は、●度で、晴れです」みたいなことを言うんじゃなくて、ちゃんと会話してくれるっていう。

岸川:会話の成り立ち度合いが...あのデモはめちゃくちゃ成功する例なのかもしれませんけど、そういうのを差し引いても、コンピューターとあんな会話ができるのかという。我々が見ても本当にびっくりしましたね。デモがすごくて、人間がやると曖昧性のある「重い」というひとつにしても、感情としての「つらい」という解釈もあれば、物理的に「重たい」という解釈もあるし、そういうのを何故かわかっていてピッタリとくる答えをコンピューターが返してくれる。最終的には、よくわからないですけど、紙飛行機と会話するっていう。

日高:ありましたね(笑)

岸川:「調子はどうだい?」って聞いたらウイングがこう...とかいうんですけど、その会話が成り立っていて、むしろ無機物であるはずの紙飛行機のほうが会話のイニシアチブをとっていた感じのデモで。とにかく「とんでもないものだな」っていう印象を受けました。

日高:AIが進化することで何ができるかっていうユースケースを示したということだと思うのですが。紙飛行機がなんかめっちゃ性格良いこと言ってるし、飛ばし方こうしたらいいよってアドバイスまでし始めるっていう(笑)Google I/Oの中でも一番エポックメイキングというか、こういう技術の使い方をしていきたいんだなっていう未来を出してくれたという意味で注目するトピックでしたね。

岸川:デモはとんでもなかったですけど、応用範囲はすごく色々できるなと想像できました。

日高:このあたりの基礎研究は2年くらい前からずっと「モバイルファーストでやりたい」というメッセージの中で続いてきたものなので、ずっと見てきた人からすると「ついにここまで来たんだな」って感じるところもありました。ソフトウェアの力がようやくそうしたものにも適応できるくらいに近づいてきたのかなと。業界自体の進化も感じましたね。

岸川:そうですね。ソフトウェアがすべてを代替していくっていう流れは止まらないなと。そうしてソフトウェアが様々なことを担っていくことを怖いと感じる人もいるかもしれませんが。

日高:ですね。Google I/Oでもプライバシーというか、どういう風にユーザーのプライベートな空間を守っていくかという話もあったりしましたが、新しいことが出来ているということなので、そこに対する可能性を感じるデモという意味で成功してたのではないでしょうか。

岸川:私は前向きに「これはすごいな」と思いながら見てました。

日高:エンジニアというと主語が大きいかもしれませんが、僕も岸川さんもそういうところは楽観的に見ることが多くて。これでもっと新しいことができるなとか、良いチャレンジができるなっていう。ちなみに佐野さんはどうでした?モバイルの世界がここまで変わると怖かったり不安だったりというのは。

佐野:僕は結構怖い派ですね。どんな情報とられているんだろうとか(笑)妙に恐れてしまうところはありますね。とはいえ、プロダクトを作る側でもあるというジレンマです。

日高:いいですね、バランスをとっていきましょう派ですね。僕と岸川さんが急進派ということもわかったところで(笑)

岸川:そうですね(笑)

日高:多分AIがイニシアチブをとるという状況については、新しいことなので皆が割と気をつけているところだと思います。Google I/OだとインクルーシブなAIにしていくための議論なども少し出ていました。例えば差別的な表現をしないためにはどうすればいいのかなど、人間が持っている認知そのものを歪ませることがないように考えたいと言ってましたね。

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Topic2:Jetpack Compose

佐野:他にも気になったことはありますか?

日高:Androidまわりだと開発者向けにUIツールキットのJetpack Composeというのが出てきて。iOS開発している方からするとSwiftUIのようなものというとイメージできると思います。

岸川:はい。Android開発におけるSwiftUIですね。すごく乱暴な言い方なのでツッコミどころはあるかもしれませんが。これだけでも話そうとすると2時間くらいかかってしまう(笑)

日高:僕と岸川さんが「AndroidにおけるSwiftUIって言ってたよ」とは言わないで頂けると(笑)それぞれプラットフォームの特徴というのがあるので、全く一緒というわけではないですしね。Androidの場合は特にベースとなるWebのReactの概念をもとに、プラットフォームを良くしていくために生産性を上げられるようなツールキットを作ったというのがJetpack Composeなので、プラットフォームネイティブなところもあったりするんですけど。10年ぶりっていうと語弊があるかもしれないですが、Viewシステムの新しいものが出てくるっていうのは久々なので、めちゃめちゃエキサイティングな出来事だなと思いますね。

岸川:これから激戦区になるところだと思いますね。GoogleもそうだしAppleも必死だと思いますし。Googleは別の手にはFlutterを持っているわけなので、そこは面白いし難しいハンドリングをするんだろうなと思います。

日高:Googleの手の中には色々なプロダクトがあって、Flutterもあれば、OSレベルであればFuchsiaもあって。開発言語でいってもGoはあるし、Dartもあるし、Java、Kotlinみたいな感じで。Googleらしいといえばそうですね、「生き残ったものを使いたいです」っていうアプローチの中で、Androidはその中でもKotlinとJetpack Composeっていう新しいツールキットがより良い社会・アプリを作っていくということを彼らは信じている。それを一緒に盛り上げていくというのは開発者としては面白いと思いますね。

岸川:うまいことやっていると思います。AndroidもKotlinも。

日高:うまいことやってるけど、日本のAndroidのシェアが3割というのが僕は少ないなぁと思って。

岸川:韓国とかいくとAndroidも強いですけどね。

日高:そうなんですよ。国によって違いますね。

岸川:でもモバイルプラットフォーム全体としての捉え方もあると思うんですよね。というか、今後はそういうふうに捉えていったほうが良い気はしますね。

日高:Androidエンジニアだからどうこうというよりも、とるべき未来が似てくるというか。AndroidにおけるウィジェットみたいなものがiOSに入ったりもしてますしね。

岸川:そうですね。そういうレベルでいうとお互いに真似して真似されてということをずっとやっていますからね。モバイルプラットフォームにおける課題というのは、やっぱり同じようなものを解決する必要があるわけで。プライバシーの問題はもちろんiOS/Android両方にあるし、センシングをどこまでやるのかという問題も増えていくんでしょうけど。

日高:Googleは仮想敵として何かを見てるってことはなくて、何かの課題を解決するために取り組むことが多いんですよね。通知の機能一つとってもコミュニケーションの形が毎年変わっていくので追従しないといけないとか。その課題に対応するために新しい機能をこうする、という話が多い。「倒すべき敵!」みたいのがあるとわかりやすいんですけど、実際はそんなことになっていないというのが物事を複雑にしている。エンジニアが学ぶべきことを増やしているというか、これもやらなきゃあれもやらなきゃってなっていくのは、そういうところから来ていると思います。

岸川:GoogleとかAppleとかになってくると、人類全体の富を増やしていくっていう。

日高:その発想にならないと彼らの社会的な利益も得られないという規模感にまで来ていると思いますね。多分佐野さんのように「AI怖いな」と思っている人も彼らにとっては重要なターゲットで、技術で幸せにするぞというね。

Topic3:Material You

佐野:あと僕はユーザーに近いところでいうとMaterial You(マテリアル・ユー)が気になりましたね。

岸川:これは私の私見ですけどMaterial Youは結構難しそうだなと…もちろん先駆者になる人がいないと始まらないのですが、そこを切り開いていくのが大変だろうなと。

日高:勇気がいりますよね。

岸川:一年後に本当にあれが常識になっているのか、でいうと私は正直ちょっと疑問を頂いてます。というのと、よくあるアプリケーションですべてのクリエイティブを対応させていくっていうのは現実的な話難しいのかなと。

日高:既存のアプリを対応させていく、いわゆるアップデートという観点だと難しいと思います。やるとしたら新しいアプリが動きやすいとは思いますね。Material Youっていうのは結局マテリアルデザインの次の形であって、彼らも「ビッグチャレンジ」と言ってましたけど、そういうチャレンジ要素を含んでいるのでより挑戦的に我々開発者も取り組んでいかないといけないと思います。僕も「試すのは一年後でいいかな?」と思っていますが(笑)ただAIがより進化していくなかで、パーソナライズが来るんじゃないかなと思っていて。デザインっていうのが体験を設計する部分に合わせて変わっていっているのがMaterial Youなのかなと思います。

日高:「ちなみにダークテーマはどうなっていきますか?」という質問も来てますね。

岸川:ダークテーマはちょっと…正直に言うと私はダークモードも少し胡散臭いと思っていて…。有機ELのディスプレイが黒いと省電力になるのと同様に、ダークテーマにするとモバイルデバイスの電池の持ちが良い、とか言ってくれればいいんですけど、「目に優しい」とか「疲れない」とかだとちょっと胡散臭いぞと思っています(笑)あんまり突っ込みすぎないほうがいいかなと思うところはあります。

日高:Android側の事情でいうとJetpack Composeが出てくるまでのビューシステムだと、どうしても命令的にテーマを書き換えてあげないといけなくて、それがすごい大変だったのですが、それが徐々に新しい技術で緩和されるという意味ではダークモードも良いし、Material Youもチャレンジしてほしいなっていう期待値です。

岸川:Jetpack Composeも、それを使っていると自然にというか、自動的に対応できるようになるっていう側面がありますよね。アクセシビリティだったりダークテーマの対応だったりがついてきますよ、っていうのは結構大きなメリットだと思います。アクセシビリティ対応っていうのはすごく大変だけど、やらなくてはいけないことなので、応用できるようにやっていけるといいんじゃないかなと。

日高:そうですね。特に見え方っていうのは人によっても変わってくるところなので、そこに対応できていれば自然と誰にとっても使いやすいアプリケーションだという話になる。よりみんなに使ってもらえるための場としてComposeだったりとかMaterial Youというのを捉え直せるといいなと思いますね。しばらく試行錯誤はあると思いますが。

岸川:そんなにうまくいかないぞ、と思いながらやっていくくらいでいいかもしれませんね。

日高:Google I/Oは夢を語る場でもありますからね!

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告知:6/25(金)19:00-「アプリの未来、可能性 #2 -マルチプラットフォーム編- 」開催予定!

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