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「アプリの未来、可能性#1 -ネイティブアプリ編-」レポート(後編)

「アプリの未来、可能性#1 -ネイティブアプリ編-」では、長きにわたりアプリ開発に携わってきたDroidKaigi代表理事である@mhidakaをゲストにお招きし、ヤプリiOSエンジニア@k_katsumiとCTO佐野モデレーターのもと、「アプリ業界のこれまでとこれから」についてお話しています。当日は「Google I/O2021振り返り」「アプリ開発の変遷・現在地 」「アプリ開発の未来」という3つのテーマでディスカッションを行いました。
今回の中編では「Talk3:アプリ開発の未来 」についてレポートします。

Talk3:アプリ開発の未来

佐野:流れで既に未来についても話してますけど、次のテーマは「アプリ開発の未来」ということで、例えば「この先5年後、10年後もアプリ開発で食っていけるのか」だったり、いま話しているような技術はいつまで使えるかなどお伺いできればと思います。

岸川:結論からいうと、ソフトウェアエンジニアとモバイルアプリ、プラットフォームの仕事の未来は明るいと思いますね。少なくとも5年、10年のスパンは。

日高:ソフトウェア業界自体がそもそも100年以上歴史があるようなものではないので、その中での5年、10年というのは相当長く食っていけるという感覚ですね。

岸川:やっぱりソフトウェアエンジニアの仕事っていうのが、どんどん大きくなってますからね。領域的にもそうだし、経済的にもそうなので。そういう仕事はなかなか珍しいのではないかなと思います。

日高:たしかに「やる仕事」が増える業界ってそんなに多くないと思っていて、しぼんでいく業界がある一方で珍しいなぁと。それがソフトウェア関連ですよね。そのなかでエンジニアが解決すべき問題に対して、いろんなアプローチがあるのは喜ばしいことです。そのぶん考えるべきことも多くて、AIの課題など、誰もアプローチしてこなかったところでもあるんですよね。いまチャット欄に質問も頂いてますけど、「AR/VRといった新しい技術に対して2Dはどうなっていくのか?」とかね。

岸川:まぁ個々の部分でいうと廃れていく技術や使われなくなるものもあると思います。例えばFirebaseは、今では使っていない現場は無いのでは?というレベルでみんなが頼っていると思います。その影で使われなくなった技術もあるわけです。私の場合CIとかがそうで、Jenkinsの御守りをする仕事が無くなったというか。

日高:ちょっと無くなったというのは語弊があるかもしれませんが(笑)限定されるシーンにはなりましたね。

岸川:そうですし、あまり重宝されることもなくなってきたというか。ただそこから新しい技術に対応してきた人は沢山いるはずで。それはFlashとかも一緒ですね。Flashを書いてて新しい技術に対応した人は、今モバイルアプリで大活躍したり、個人で大成功してたり。

日高:ゲームとかだとUnityに移行したりね。

岸川:Unityだと2Dの技術とか、今だとYouTubeで活きたりとかね。ハードウェア的になっていくものもあるというか。

日高:技術のコアの部分というのは無くならなくて、エッセンスが進化しているだけというのもあるかもしれませんね。

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岸川:そうしているうちはやはり長い目で見ても仕事は無くならないと思いますね。技術は健在というか。例えば「紙」とか、無くなってないじゃないですか。

日高:すごいのが来ましたね(笑)

岸川:結局「本」というフォーマットは駆逐できなかった。フォーマットとしては今後も5年、10年残ると思うんですよね。あの形も一種の完成形だと思っていて、みんな置き換えようとしたけど置き換わらなかった。「巻物」とかあるわけだから無限スクロールでいいじゃん!とか思いましたけど(笑)そういう意味でもスマートフォンは、フォーマットとして究極系に近いのではと思います。ハードウェアとしても残っていくんじゃないかなと。ソフトウェアとしては代替されるかもしれませんが。

日高:なのでこれを聞いてて不安に思うような人は、自分のスキルレベルでどこまでやりたいかなぁっていうのを考えてみて、多分主流を追いかけるっていうのが一番良くて。競争はあるかもしれないけど、主流を追いかけて自分なりのアレンジを考えていくのが良いんじゃないですかね。

岸川:そのなかで生き残っていく技術の最先端を追い続けなくても、難しい課題っていうのはたくさん出てくるというか。そこをやっていくだけで十分に専門的になるのではないかなと。

日高:それに関連して「毎年出る新機能のアプリがストアでフィーチャーされることがありますが、新機能を使って華々しいシーンというのは最近見なくなってきましたね。」というコメントを頂いてますね。

岸川:結局それだけだともう難しいんですよ。GoogleやAppleが新機能を発表するなかで、その最先端の技術をどう実用していくかとか、どういう表現をしたらそれが活きるのか、というのが今はめちゃくちゃ難しい。ARとかもTwitterで「これめっちゃ面白い」という投稿に沢山いいねがついて話題になったりしますが、あれを単発ではなくビジネスでやるっていにのは、物凄く難しくなってると思います。

日高:なのでエンジニアに求められているのも、新機能を実装するというより「これを使って何かを解決してほしい」というのがプロジェクトの芯の部分なので、そこに対していかに アプローチするかが大切ですね。昔はAndroidのタブレットが出た!というだけでも持て囃されたんですけどね〜(笑)

岸川:依然としてそういうものには価値はあるというか、変わってないとは思います。例えば普通にAPIを作りましたと。それがめちゃくちゃすごい人に刺さる、みたいなことを考えるのは、いろんな可能性があるなと思いますね。

日高:そのへんは是非追いかけていきたいなと思いますね。それを一人で追いかけるのはかなり難しいと思うので、外で発表したりとか、同じような夢を追いかけられる仲間がいるといいなと思いますね。目標が一致してたほうがみんな仕事しやすいですし。そうなってくるとソフトウェアの形というのは大分変わってきているのかもしれませんね。5年後どうなるんだろう?でいうと・・・5年後、岸川さんどんな働き方してますかね?(笑)

岸川:どうかなあ(笑)私はもう趣味のソフトウェアを書いてるのかな・・・自分一人で作れる、コンパクトでかつとても便利なものをつくるのが多分好きなので。もちろん声がかかるうちは仕事すると思いますけど。そういう生活をしたいなぁと思いますね。これは話外れちゃいますけど、人間だけができる高位な仕事ってエンターテインメントだと思うんですね。そうしたエンターテインメントを手助けするソフトウェアを書くか、エンターテインメントを消費するのか、早くそんな生活になりたいですね。

日高:ちょっと佐野さんにこの内容で大丈夫か聞いてみないと(笑)

一同:(笑)

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佐野:ちなみに今までアプリ前提の話をして頂きましたが、Webとアプリの優位性みたいな観点って社内でも議論が出たりします。この点お二人ってどう考えてますか?

岸川:デバイスが無いと出来ないことっていうのはまだまだあるので、それはやっぱり面白いですよ。パフォーマンスチューニングが必要なソフトウェアとかは今でもあるし。

佐野:PWAとか、Webにプッシュ通知が送れるならアプリじゃなくても?とか。

日高:Webっていうのは基本インストール不要ですぐ見れるというのはあるんだけども、さっき岸川さんが言ったみたいなパフォーマンスとか、より体験を良くしていこうと思うとWebでは作れない強みがアプリにはあると思います。使ってもらうことを考えると、スマホだとネイティブ、パソコンだとWeb、店頭に来たら紙とかでもいいと思うんですけど。

岸川:そのへんの差って結局こっち側の都合なので、そういうのが無いほうが全然いいんですけどね。Webの技術でつくるのかネイティブでつくるのかは、こっちの都合ですし、本質的な課題ではないはずなんですよね。ただその中で、例えばWebとそうでないものかでいうとディストリビューションの問題が大きくて。インストール不要といいつつも、Webで書いてもまぁまぁ届かないっていうのもありますよね。なぜかわからないけども。AppleとGoogleがうまいことストアという仕組みをやってしまったというか。

日高:なんなんでしょうね。ストアに出せばみんなインストールしてくれるし、使ってくれるというのはね。

岸川:あんな仕様が成立するなんて、誰も見当つかなかったというか。ソフトウェアをディストリビューションするUI/UXがあれ以外なかったのか?と思いますが、大成功しましたね。セキュリティの問題とかを考えると野良アプリを解禁するのはまぁ難しいかなと思いますが。

日高:まぁ無いんじゃないかなあ。

岸川:人間がもうちょっと賢ければ成り立ったかもしれない・・・とか言いたいですけどね(笑)

日高:Androidの場合は特にセキュリティの仕組みがまだまだ足りてないところもあって、そういうところのケアをプラットフォームがやってくれるというのはある種、楽ではありますね。

岸川:ある程度プラットフォームに依存する構造っていうのは、変わらないのかなと。だったら何が変わるんだって話になってきましたけど(笑)

日高:いや何も変わらないんじゃないですか。とにかく使う技術っていうのは、確実に5年前と今っていうのはAndroidもiOSも違うはずなので、そういうところを見ていけばいいのかなと。質問が来てますが「古い技術を使い続けると新人のモチベーション維持できないですよね?」と。それはそうなので、うまく技術も現状の課題解決に合わせてアップデートしていく必要があるなと。

岸川:まあでも「枯れた技術を使ってつまらない」というのはどうなのかな。今この文脈でいう新しい技術っていうのはFlutterだったり新しいアーキテクチャを指しているのかなと思うのですが、そういうのは基本的にどれを使っても大差ないので、使いたいものを使ってっていうパッションの部分だと思いますけどね。私はこれで書きたいんですっていう。

日高:その人が書きやすいものがどれなのかっていうね。

岸川:多少実力も関係するかもしれませんが。それで書くっていうのがモチベーションになるのであればそうするべきだと思います。そういう意味でもパッションなのかなと。その技術も2年くらいしたらアップデート必要になると思いますし。

日高:背中押してあげるくらいが丁度いいですね。Androidの世界でいうとJavaが枯れているとか使われないとかなってますけど、プラットフォームは絶対Javaで書かないといけないのでそれなりに価値が維持できるんですよ。なので枯れてるものの良さもあるので、モチベーションコントロールできるうちは良くて。

岸川:でも枯れてるからダメっていうよりは信頼なんだと思うんですよね。

日高:そうですね。エンジニア同士の信頼というか、このままやっていけるのか?という不安の現れなのかもしれませんね。我々達観してる感じのこと話してますけど、全然達観してないですからね。新しいイベントの度に二人して興奮してツイートしてますからね!

佐野:もう一つコメント来てますね。「5Gが普及したらどんなアプリが流行ると思いますか?」

岸川:まず普及してほしいというところですが。使い放題のプランと一緒に普及してほしいですね。容量と速さが同時に普及したという前提だとしたら、それはもう使えるだけ使いたいと思うのが我々なので。今までだったら帯域の問題でできなかったことも出来ますし。PS5が配布しているような50GBとかのアプリも生まれるかもしれないですしね。

日高:やばいですね。僕のイメージだとすごい妄想ですけど、5GがいけたらCDN(Content Delivery Network)もっと強化してプログラマブルにして、そのうえでゲームをのせたりとか、アプリをインストールせずにプレイできるとかの仕組みにできたら、めちゃくちゃおもしろいと思います。今はまだ無いパーツがいっぱいありますけど(笑)

岸川:作り方も当然変わりますからね。今はアプリケーションのなかでのリソースというのは主にUIとしてのキャッシュみたいなところもありますが、それを全然考えなくてよくなるという。

日高:多分我々は使えるだけ使ったうえで、パフォーマンスの話に入ると思いますね。

岸川:だから今までそこがボトルネックになってつくれなかったアプリが出てくるといいですね。流行るか?という質問に対しての答えでいうと・・・難しいですけどね。そういうのは得てしてこちらの押しつけになりがちだったりはするので。一旦色々なものが出て落ち着いたあとに「実際に欲しかったものはなんだろうね」となるというか。

日高:今でもよくありますからね。この画面で何作りたかったのか?で実際はクーポン配れれればよかったんです、とかね。なので流行るかどうか?は神様に任せちゃいたいですけどね(笑)

佐野:で、最後の質問なのですがヤプリっぽいのが来ました(笑)「ノーコードの未来はどうなるのか。」

岸川:明るいと思いますよ。今まで専門的だったプロの中でも能力の高い人じゃないと作れなかったものが、そうでなくても作れるようになったという。そういうのはいろんな領域でも今後増えていくんじゃないかと。我々がFirebaseをまず使ってみるのもそうだし、オンプレミスのサーバーが最初の選択肢じゃなくなったっていう。

日高:エンジニアのやる範囲が広がったという話がありましたが、それを支える一つのツールとして考えていいと思うんですよね。エンジニアリソースが足りない時に、エンジニアがノーコードのツールを使ってもいいわけで。やれる幅としては広くなるので、そういう意味でのトレンドもあるんじゃないかな。で、それで仕事がなくなるかと言われると、全体のパイとしては広がっているので、全然人は足りてないはずなんですよね。なので全く怖がることはないと思います。

岸川:例えばこういう配信ができるようになったというのもここ2-3年の話だし、個人でゲーム実況をワイプつけて誰でも配信できるようになったのも最近だし。簡単なアプリだったら別に我々が作る必要はなくなってきている。ただ技術がおりてきている分、上にも広がってきているというか、そこは我々としては歓迎すべきところですよね。
日高:それを目指していきたいですよね。エンジニアとして技術の上のほうを追っていくという。

岸川:なのでノーコードは普通に使われていくと思うし、エンジニアとしても心配なことは何もないんじゃないかなと。まぁ大変だとは思いますよ。

日高:コード生成が作ったコードの不具合の対応とかは大変だと思うんで。そこは我々想像できないので(笑)

岸川:ミクロではついていけないという人もいるかもしれないですが、それ以上に参入してくる人が増えると思うので、そうですね・・・頑張るしかないんじゃないでしょうか(笑)

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