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連載:動物園が活きる道③ビジネスと教育のバランス

 第一波の終息なのか、正確な数が把握できていないのか...。不安の中で、コロナから新たな社会がスタートを切り始めました。テーマというお話をして、しばらく期間があきました。思わぬコロナ危機によって経済がこれほどの影響を受けるとは思いもしませんでしたが、その中で6月8日にユニバーサルスタジオジャパンが再スタートしました。開園を待ちに待ったファンが、限定的とは言えど、徐々に開場されたゲートに向かう姿が報道されていましたが、やはりテーマパークの強みをそこに見たような気がしました。

 さてこのテーマパークの強み。そのような強みをどのように動物園や水族館に応用するのか。そのような強みを含む場合に、動物園・水族館という施設の社会的役割の特異性をどのように守っていくべきなのかをお話ししたいと思います。

営利強化と教育施設

 営利強化をしたときにもっとも懸念されるのが、教育的など、その施設の社会的役割がおろそかになってしまうのではないかという懸念です。これはもっともな懸念で、収益に集中すればするほどその社会的役割とは異なる方向性で収益をあげようとすることになります。しかし教育的役割に偏ることで実際に経営がまわらなくなり、動物たちが苦境に陥ることがあります。まさに多くの動物園が直面している現状は後者だと思います。つまり社会的役割と営利目的の経営は、どちらにかに偏るのではなく絶妙なバランスを維持する必要があるのです。

社会的役割をどうアプローチするのか

 動物園・水族館など野生動物という生命を扱う施設の社会性役割は、多くの野生動物が直面する絶滅という危機から動物たちを保全していく、そしてこれらの動物についてを来園者に周知することです。この周知を教育的役割としたとき、その手段は必ずしも学術的なイベントや講演会である必要はありません

 楽しく学ぶ。さらに言えば、教育の根本は関心を持つことなのです。だとすれば、関心を持ってもらうためにもっとも必要なことは、動物たちが"活きている"ことです。彼らが活きるためには、今の日本の動物園でもっとも強化しなければいけないことは動物福祉の観点です。

 動物たちが活き活きと生活ができる環境が整うと、その動物たちの目力や毛並みは圧倒的に変化します。その活き活きとした姿を、テーマパークの最大の魅力として提供することができれば、動物たちの生活を豊かにすることで、施設の魅力を増幅することができるという理屈が成り立つわけです。集客するための要素が、その施設の社会的特性と役割をもっとも際立たせる要素で共通していれば、社会的な役割を全うしながら収益という目標達成を期待することが出来るのです。

  動物園において、動物たちをどのように活かすのか...。いよいよ次回から、これからの動物園がこうあるべき...こうあってほしいという姿をお話していきます。


 

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