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SEは最強にして最悪の職種


SE(システムエンジニア)という職種

 最近はシステムエンジニア(以下、SE)になりたいという新卒や転職する人が増えているという。自分からすると、一昔前では考えられないなぁと思うことが多い。
 と、いうのも私が就職した2008年頃は3K(汚い、キツい、帰れない)と言われ、新卒学生が敬遠する職種のトップランカーだったからだ。現に私も最初からSEになりたかったわけではなく、軽金属や石油などを扱っている会社で営業をやりたいと考えていた。だが、企業から内定をもらえず、周りが内定をもらえていることに焦り、就職浪人だけはしたくないと志望業界を変えたのだが、それがIT業界だった。(ただ、IT業界といっても志望していたのはユーザー系Slerだったけど)
 今は知らないが、大学4年の春過ぎでも応募でき、書類選考らしい書類選考もなく、一次面接に進めたので当時はびっくりしたもんだ。(それまでのメーカーなどは書類で門前払いだったので尚更)
 内定をもらったのは某大手保険会社のシステム子会社で当時はかなり嬉しかったのを覚えている。
 ちなみにSEというと世間では未だに、パソコンに向かってプログラム書いていると思われているようだが、実際の仕事はかなり泥臭い。企業によって変わるものの、SEの仕事は顧客(クライアントである非IT企業)にヒアリングなど要件を聞き出し、その要件をシステムに落とし込んでいき、顧客のビジネスに貢献するというのが仕事となる。
 話が脱線しまくったが、SEとして15年ぐらい働いてきて感じるのは、SEって実は最強につぶしが効く一方で、最悪の職種なんではないかと思ったのでその理由を今回は書いていきたいと思う。

SEが最強な理由

 まず、SEの仕事内容を簡単に説明すると、一般的にはシステム設計を行い、システムを構築・テストをして顧客に納品して、その対価としてお金をいただくというのが仕事内容になる。ただ、実際にはこの業界は多重請負の構図になっているため、同じSEでも自分の会社が一次請け、2次請け、3次請け….など、どの商流で参画しているかによってやることがかなり異なる。
 今回はあくまで元請けSEとして仕事をするという前提で書いていきたい。
尚、多重請負の構図については、言いたいことが山ほどあるので別の記事としていつか書いていきたい。
 
 まず最初に、なぜSEが最強職種であると言えるのかというと、一言で言えば「身につけられるスキルの汎用性が高い」ものが多いということだ。具体的なスキルを上げながら説明していこう。
 1つ目は、「折衝能力」になる。「いや、そんな折衝なんて、営業とか他の職種でも身につくよ」と言いたいかもしれないが、相手のレベルがそもそも違う。まず、個人客でなく、法人客なので、何かしらの専門分野を持っている(私は保険会社の人が顧客になるので、保険知識を持った人が相手になる)人間を相手にすることになる。また、相手も仕事であり、会社の看板を背負っているので真剣、、というか人でも殺しそうな勢いの人間も時には相手にすることがある。
 要するに、その辺の一般客よりかなり手強い「敵」を相手にしなくてはならない。しかも、相手も自分の評価や生活がかかっているので、個人客では罷り通るような感情論に訴えても、相手は応じてくれないことが圧倒的に多いのだ。
 さらに、システム開発の現場の場合、顧客はシステムに疎い人が多いので、IT用語を違うわかりやすい言葉に置き換えて説明するなど気をつける点も多く、かなり気をつかう。ちなみに私は昔、IT用語を少し使用して、顧客に内容を説明したところ、「そんな言葉使われてもわかんねーよ。もっとわかりやすい内容で話せよ。」と言われた経験が何度もある。
 
 そして、SE最強職種説2つ目の理由が、問題設定能力及び問題解決能力が身につきやすいことだ。システム設計をするのがSEの仕事というものの、顧客は何かしらシステムで解決したい問題があるが、それが言葉にできていないことが多く、フワッとした内容で依頼されることがメッチャ多い。
 SEはその内容から、さらにヒアリングを重ねて顧客の悩みはこういうことではないかと課題設定をし、且つその問題をシステムを活用して解決する方法を提案する必要がある。ただ、このスキルはそう簡単に身につかない。経験と努力が必要となる。そのため、希少価値が高く、仮にSE以外の職種についても、こういった経験はどの職種でも生かせることが多いので、潰しがきくことが多いと思う。
 ここでも、「課題設定とか課題解決ならコンサルの方がいいでしょ」という人もいるが、彼らはITに関してはSEほど詳しくはないし(ITコンサルと言われていても信用できないww)、実態と合わない解決策を提示してくることが多い。それだけならまだしも、現場の人間に対して、上から目線でダメ出しを行い、現場に負担をかけるだけかけて、美味しい所だけ持っていく悪魔みたいな人も多い。

 SE最強職種の3つ目の理由は、プロジェクト経験が積めることだ。
私の場合、親会社である保険会社からの出向者の方と話をすることが多いが、彼らの多くが「プロジェクト参画自体が初めてなんです。」という人が多いことに驚いたことがある。事業会社で働いている場合、プロジェクト参画の機会があまりない人も珍しくない。
 ただ、企業も最近は新しい新規事業やDXでプロジェクトを立ち上げたり、プロジェクトリードする人を求める傾向があるため、システム開発とはいえ、プロジェクト経験者は需要が高い。
 特に大企業のシステム開発プロジェクトは各工程の終わりに承認レビューがあり、納期も厳しい中でプロジェクトを進めなくてはならず、そのプロジェクトメンバーも何十社、いや何百社にも及ぶ会社の人が関わっているため、文化の違う人達と協力してプロジェクトを推し進める必要がある。先にSE最強職種説の根拠で挙げた折衝能力や課題解決能力もこのような混沌?とした中で磨かれることが多い。

 さあ、SE最強職種説の最後の理由は、マイクロソフトOffice製品のスキルである。これは一概に言えないかもしれないが、SEは総じて、このスキルが高い傾向にある。具体的にいうと、Teams、OutlookやExcelなどのOfficeソフトのことだ。
 特にExcelスキルについては、様々な資料がExcelで管理されているので、1日の半分近くはExcelと睨めっこしていることも珍しくない。私自身もこの仕事に就く前は「Excel?Wordなら使ったことあるよ。Excelなんてなんでいるの?」という状態で、今では当たり前に使っているIF関数やvlookup関数なんて存在自体知らなかったし、VBAなんてよくわからん呪文みたいなものぐらいに思っていたが、今はVBAを使い、自分の業務を効率化するために使っている。巷では、SEのことを「Excel職人」と揶揄する人がいるが、良い悪いは別にして、まさにその通りだdと思う。

SEが最悪な理由

 さて、ここまでSEが最強の職種である理由を書いてきたが、ここからはSEが最悪の職種である理由を書いていきたい。「最強なのに最悪とはこれ如何に?」と思うかもしれないが、実は最強である理由と裏表になっていると言っても良い。
 まず最悪な理由1つ目だが、調整に忙殺されるケースが多いことだ。
システム開発、特にプロジェクト案件では何百社という会社が関わっているため、調整するだけも手間がかかり、時間がかかることだ。一見、お客さんである事業会社と調整するだけに思えるが、実際には開発ベンダーや社内の他部署、さらには自社の上席などSEの仕事の半分は調整といってもいいぐらいだ。
 この調整で揉めると、かなり面倒なことになることが多く、自分の上司を巻き込みながら、関係部署や開発ベンダーや顧客と走り回ることになる。
1日の終わりに、「今日やろうとしていた仕事に手がつけられていない。。」と嘆いたことが1度や2度ではないのは、SE経験者ならわかると思う。

 次の理由は、案件ガチャの恐怖だ。
この仕事は様々なプロジェクトにアサインされることが多いが、その中には「炎上案件」といううまくいっていないプロジェクトがゴロゴロしている。そのようなプロジェクトにアサインされると長時間残業となることが多く、1日の大半が会議、会議、会議のオンパレードになることが多い。
 炎上案件になりやすいのは、プロジェクト規模の大きい金融や公官庁案件が多いと言われている。パッと思いつくとすれば、皆さんもご存知の「みずほ銀行のシステム統合」が有名な事例としてあげられるだろうか。
 そして、これらの案件にアサインされると、例えプロジェクトから外れたいと主張しても、上司や営業から説得されることが多い。そして何より、このような案件に関わり続けていると、メンタルをやられて、休職や退職になってしまうこともかなり多いのが怖い点になる。私も炎上案件にいくつも関わってきたが、その間に休職したり、退職したりする人を何人も見てきた。

 最後は、転職の可能性が狭まる可能性があることだ。
この仕事を長くしていると、次第に打ち合わせや管理業務が増えていくので、実開発から離れるにつれて、テクニカルであるITスキルに乏しくなり、転職の選択肢が減ってしまうことだ。特に元請けSEはプログラマとは違い、システム開発は下請け会社に依頼することが多い。
 そうすると、詳細設計〜結合テストは手を動かすことが減るため、プログラムを書いたり、テストをしたりすることがなく、管理や打ち合わせを行ううことが多くなる。その一方で、元請けSEは収入自体はいいので、本来の実力より高い収入を受け取ることになり、転職する際に年収が下がるケースがある。
 私の場合も、キャリアの半分以上は管理業務の方が多く、詳細設計〜結合テストはあまり経験がない。改めて詳細設計〜結合テストの経験はせいぜい6年程度になり、トータルのキャリアとしてみると半分未満となるが、実は同期と比較しても、多い方だったりする。ここ数年は内製化の機運が高まっていることもあり、実開発経験はさらに重要度が増してくると思われるので、元請けSEは自分のキャリアを真剣に考える必要があると思う。

 さて色々と記載してきたが、SEという職種に良い面や悪い面を理解してもらえらたら個人的には嬉しい。批判的なことも書いたかもしれないが、SEは面白い職業だし、待遇面も比較的恵まれている(元請けに限るかもだが、、)ので、目指す職業として悪くはない。
 ただ、一旦SEになったら、辛いことも多いので記事に書いたような内容は事前に理解しておいた方がいいと思う。

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