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さいの河原の童たち

さいの河原の童たち 桜島町郷土誌
 むかし、ある村に信心深いおばあさんと、夫婦が住んでいました。
ある年のたなばたさまの前の日に玉のような美しい坊やが生まれました。
 男の子はよく育って五つになり、おばあさんによくなつきましたが、ある日とつぜん熱病にかかり、亡くなりました。

 それからおばあさんは、仏壇の前で、座り込んだまま坊やの名を呼び続けました。
 ある時、おばあさんは歌いはじめました。その歌を聞いて。はっとなたのは坊やのお母さんでした。
 おかあさんは、七夕の前の日、河原に出かけていきました。そこはさいのかわらと呼ばれるところでした。
 
 小石の山がいくつもいくつも積まれていました。お母さんは歌を思い出しながら、小石の山を一つ、一つ崩して回りました。
 不思議なことに一回りすると最初に崩した山がもとに戻っています。
 そこには坊が見えないけど確かにいるのでした。
 お母さんは河原で坊と遊びました。

 おかあさんとおばあさん、ぼうがどうなったのかは伝わっていません。

 おばあさんの歌っていた歌はこういうものだといいます。

さいの河原を見わたせば
黄金づくりの地蔵さまが
あまたの子どもひきつれて
朝な夕なの砂あそび
一きざ積んでは父のため
二きざ積んでは母のため
三きざ積むころ日が暮れて
泣くな子どもよなぜ泣くか
父母恋しというて泣く
七月七日のたなばたに
ひとり残らず連れてゆく

 
 

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