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三年阪

三年阪 朝鮮鉄道旅行便覧
 慶尚道にあったという坂。ここで転がったものは三年のうちに死ぬので、通るときは気をつけねばいけないとされた。

 ある老人がここでころがってしまい、家に帰るともう駄目だと息子を呼びつけ、遺言を伝え始めた。
 その騒ぎを聞きつけた医者はなぐさめてから、助かる方法を教えようと話した。

「もう一度転がってください」
 老人は激怒し、殴り掛からんばかりになった。
「一度転んだら三年ということは二度すれば六年になります。四度も転べば十二年生きることができますよ」

 老人は坂にとって返し、
「どうぞ転げるだけ長生きできますように」
といいながら、何度も転がってみせた。周りが心配していると、中空から
「心配するな。東方朔は千度転がったんだ」と声がしたという。
 


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