見出し画像

【インタビュー|ケンティー香水学校 】“香り”が出せなくてもTikTokで香水が売れる驚きの戦略

けんてぃーさん

フォロワー11万人超の人気“香り”TikTokクリエイター

外出自粛が続く中、急激に需要が増えているeコマース(EC)。
しかし、すべての消費がECに代替できるとは限りません。手に触れて質感を確認し、匂いを嗅ぎ、 雰囲気まで見て商品の購入を検討する…そんな視覚以外の五感に訴えかける商材は、ECへと移行するのは難しい、と言われています。

その象徴が香水に代表される“香り”産業です。しかし、そうした先入観を裏切り、SNSなどのプラットフォームでの発信のみで“香り”を消費者に届け、売上を叩き出している人がいるのです。

それが、TikTokで11万人以上のフォロワーを持つ人気アカウント「ケンティー香水学校 (@kenty0908)」を運営するケンティーさん(23歳)。

 ケンティーさんは、TikTokでの発信だけで、自身のブログ経由で月間30万円以上の香水売上を達成しています。加えて、彼のアカウントを見て店舗に足を運び、実際に香水を購入している人も少なくないのです。

紹介したある2つのブランドは、売上がかなり上がったみたいでECサイトを含めると100万円以上僕のTikTok経由で香水を買いに来ているそうです。お客さんがTikTokの画面見せて『これと同じ香水ありますか?』と聞かれるらしくて。

いったい、彼は“香り”を発しないスマホを通して、なぜここまで香水を売ることができるのでしょうか?

香りをスマホの中でどう表現するのか? その驚きと納得の手法について話を聞きました。

なぜスマホの中で“香り”を伝えられるのか?

ケンティーさんが、TikTokのアカウントの運用を始めたのは約2ヶ月前のこと。きっかけは意外なものでした。


もともと、別のプラットフォームで香水を紹介していたんですが、投稿を続けてもなかなか伝わらないのか、フォロワーも伸びませんでした。“香り”を文字で表現するのはやはり伝わらないんだよな... と当たり前のことを思って悶々としていました。

本業はフリーランスのSNSのディレクターをしているケンティーさん。5G回線が国内で本格スタートするのを前に、自身が香水好きであるということと、ストック性の高いコンテンツを作ろうと始めた「香水チャンネル」でしたが、他のプラットフォームで見られるコスメや家電紹介のチャンネルと異なり、フォロワーにとって“香り”をうまく表現できずにいました。

その一方で、 ケンティーさんは香水をスマホの中で紹介するコンテンツには独自の価値を生み出せると確信していたそうです。

デパートの香水ショップの店員さんやブランドの“中の人”だと、ブランドのイメージがあり表現方法が限られてしまいます。『心地よいパウダリー感』や『アルデヒドが軽やかな爽やかさをもたらす』など専門用語が多くて伝わっていないケースが多い。そこで、別の表現手段のほうが香水の魅力が伝わりやすいと思っていたんです。

そこで、香水ブランドの“中の人”ではない彼が考えたのが、シチュエーション別で使える香水を紹介するというもの。

たとえば、『すれ違った時にドキっとする香水』としてAUX PARADISのPUREという香水を紹介しました。カタログではそんな説明はないですが、学生が望む欲望を考え、それが叶う可能性がある香水だと伝えたところ14万以上のいいねがつきました。

ケンティーさんによれば、香りの成分を伝えるよりも、具体的に使えるシチュエーションを伝 えたほうが香水のイメージが湧きやすく、かつ購買につながるのだといいます。

柔軟剤っぽい香りとか、体育会系の人におすすめとか、高校生には廊下ですれ違ったらドキッとする香りとか、ブランド本体は絶対に言わないことも僕ならメッセージとして発信できます。 こうしたプレゼンは、文字や写真よりも動画のほうが合っています。事実、『むしろ日常のシチュエーションのほうがわかりやすいです』というコメントもいただきました。

動画なら他のプラットフォームでもいいのではないかと思い、聞いてみました。

もちろん他のプラットフォームでも良いですが、中には24時間しか注目してもらえないものもあります。それに比べTikTok長く注目してもらえます。そして、時間制限があるのでコンパクトに情報を編集せざるをえない。それがフォロワーの接触率の高さにつながっています。それに、TikTokは音楽も重ねられるので、 香水の雰囲気に合わせて音楽を毎回変えられる。つまり、情報をぎゅっと凝縮して、モノの雰囲気がもっとも伝えれれるプラットフォームがTikTokだったんです。

ほかにも、複数のプラットフォームに触れてきたケンティーさんがTikTokで香水を発信するのが「イケる」 と確信したのは、その仕組みにも理由がありました。

TikTokは“おすすめ”がトップに出るので、他のプラットフォームに比べて露出度が高い。ランダムで見てもらえる確率が高い。2ヶ月で10万人以上フォロワーを獲得できたTikTokの仕組みによるところが 大きいんじゃないかな。

ターゲットの生活を想像する

こうした具体的な日常生活をシチュエーションで選ぶことで、最適な香水を紹介するケンティーさんの戦略は大当たり。開設したブログにはTikTok経由でフォロワーが香水を購入していくように。

フォロワーの日常生活を考えるときは、相手の生活を想像してタイトルを決めます。高校生なら、アルバイト代で買える香水のほうが興味を持たれやすい。『金欠の時でも良い香りになる方法』や『2万円以上する人気ブランド香水と香りがほぼ同じのプチプラ香水』など。社会人ならば、『ワンランク上げる大人っぽい色気を出せる香水』とか。アカウント自体に年齢のペルソナは設けず、広く香水に興味を持っている方に訴求したいですね。

もともとは、香水好きが高じて開設したケンティーさんのアカウントでしたが、アカウント開設から2ヶ月で、一定の収入を得られるまでに。

先程のブログ経由でのアフィリエイト収入に加え、直接ブランドから連絡が入り、タイアップの仕事の相談が入りました。僕のアカウントの強みは、香水を“オフィシャル感”なく紹介できることに加え、フォロワーからすぐにコメントで感想をもらえることです。『香りをきっかけに好き な人と付き合えました!』という報告も何人かいただいているので、それは本当に嬉しいです。今後はそういった感想もメーカーにフィードバックしていきたいです。

TikTokのコンテンツマーケティングにおいて気をつけていること

では、今後ケンティーさんにならってコンテンツをTikTokで発信していこうと思う人にとって、気をつけるべき点はなんでしょうか。

いい時の話ばかりしてしまいましたが、伸びなかった動画もあります。ターゲットにそぐわな い商品の紹介はダメでした。たとえば、高校生向けのタイトルなのに1万円以上の高い香水を紹介したり。それから、実際に使えるシチュエーションが限られている商品は、実用性に欠けるので開設したばかりのころは特に投稿しないほうがよいです。

“実用性”とはどのようなものでしょうか。

わかりやすく言えば、『すぐにできること』。今あるものでできることを発信するのは実用的です。たとえば、『金欠の時にやっていたイイ香りになる方法』という投稿にはいいねがかなりつきました。フォロワーにとって自分でもできる有益な情報はシェアしてもらえます。昔の自分であったらどんな状況で、どんな悩みがあったか。昔の自分に向けた動画でも共感を得られると思います。結果として動画の再生数もグッとあがります。“インスタ映え”という言葉がありますが、インスタは雑誌みたいな感じだと思うんです。対して、TikTokではおしゃれな写真や動画よりは、実用的だったり、おっと引かれるバラエティ番組や情報番組のようなイメージです。

市場の大きいネタの見つけ方

TikTokにおいては、実用性を感じさせるコンテンツをつくるというところまではわかりました。では、具体的にどのような商品をアップしていけば高い支持を集めるのかについても、ケンティーさんは知見を持っていました。

実はケンティーさん、動画をアップする前の“ネタ出し”にかなりこだわっていたのです。

僕はまず、検索エンジンで香水と検索して、検索結果数が多い香水を調べます。それだけ興味のある人が多いからです。例えば、ZARAの香水の中でも一番売れ行きがよいものを調べる。それから値段を調べて、ターゲットを決める。1万円以上なら社会人向けの香水としてサムネイルを入れるし、3000円程度なら高校生向け。動画は最長でも18秒に抑えて、動画それぞれで尺が大きく違わないようにしています。

まずは市場調査。そして価格からターゲットを決める。「これなら私(僕)向け!」と思ってもらえるように整合性を意識するのです。

最後に音楽です。ビルボードランキングを見て、どの音楽にするか決めます。香水のイメージに合う曲にするのはもちろんですが、サビの部分と動画の見せ所を合わせるなど細かい調整がクオリティを左右するので、ここはもっとも手が込んでると思います。

ケンティーさんは、こうした市場調査から編集、動画のアップロードまでを短いときは20分程度でこなしてしまうそう。

平均で50万再生、いいねは1万くらいつきますね。いま、香水は100本近く持ってますが全て紹介しているわけではありません。あくまでフォロワーに合ったものを提供する。しっかり調査 をすれば、“香り”だってSNSで伝えることが可能だと思います。

最後に、ケンティーさんにシチュエーション別のおすすめ香水を3つ紹介してもらいました。 この説明なら、たしかに買いたくなってしまうかも…!

20~30代向け!仕事でも使える社会人日常使いNo.1

・Byredo ‒ Blanche (バイレード ‒ ブランシュ)

爽やかさの中に甘さがある日本人が好む香りです。この香水を嫌いと言った人に会ったことがありません。天気いい日に日差しを浴びている気分になる香水。値段も2万円ほどで、被りも少ないので“この人の匂い!”と認識されると思います。

初回のデートや女性受けがよい香水No.1

・Acqua Di Parma ‒ Arancia di Capri (アクア ディ パルマ ‒ アランチャ ディ カプリ)

こちらも万人受けするオレンジの香りです。甘いオレンジではなくオレンジピールとかカクテル を連想できる香りなので大人向け。丸の内を歩いているエリートサラリーマンがつけてそうな爽やかな香りです。日本人は爽やかな香りを好む傾向がありますので、好感度が上がる確率が高いです。


男の勝負所でつけたい香水No.1

・Creed ‒ Aventus (クリード ‒ アバントゥス)
または、
・Armaf ‒ Club de Nuit Intense Man (アマルフ ‒ クラブ デ ニュー インテンスマン)

爽やかなさと男らしさが出る香水で芯の強さを感じる印象です。時間が経過すると深みが出る のが特徴でデートにも向いています。アマルフは約5,000円とリーズナブルなので、クリードを買うのはハードルが高いという方はこちらがおすすめです。


クリエイタープロフィール

ケンティー香水学校|フレグランスクリエイター
愛知県出身の23歳。香水や香りにまつわる情報を発信。ディレクターとしても活動。2020年1月からTikTokの運用を始め、2ヶ月間で10万フォロワー獲得。多数メディアに取り上げられ、現在アンバサダーにも就任をする。

禁無断転載

この記事が参加している募集

私のイチオシ

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

Twitterでも、TikTokに関する様々な情報を毎日発信しています。ぜひフォローしてください!