発売から3年後の小説が2.5万部増刷!奇跡のメガヒットを支えたのは大学4年生のTikTokクリエイターだった!<櫻いいよ先生×スターツ出版さん×けんごさんインタビュー>
そんな印象的な一言で始まるこちらのTikTok動画。
実はこの動画、単なるTikTok動画ではありません。
この動画は、昨年12月28日に公開されると、その後書籍市場に大きなインパクトをもたらす“事件”を起こしたのです。
同書を刊行したスターツ出版米山さんによると、『交換ウソ日記』(櫻いいよ・作)はこの動画の公開後わずか1ヶ月で約1.5万部を増刷。この投稿以降、合計2.5万部の重版を重ね、現在、累計で21万8500部となっています。続刊もあわせたシリーズ累計部数では、実に32万15000部にもなっています。
その後も売上を伸ばし続け、いまだにヒット作として書店の売上上位ランキングに食い込んでいます。
このように、いまTikTokの動画投稿が書籍マーケットを動かす存在になっています。
そして、『交換ウソ日記』、そして続編の『交換ウソ日記2 〜Erino's Note〜』は近年の成功例と一つとなっています。
同書は、作者・版元・TikTokクリエイターの三者の絶妙なバランス関係によって今日のヒットに至りました。
なぜここまでTikTokがきっかけで売れるようになったのでしょうか。
作者の櫻いいよ先生、小説紹介TikTokクリエイターのけんごさん、スターツ出版ご担当者の声から明らかにしていきます。
▲櫻いいよ先生
▲小説紹介TikTokクリエイターのけんごさん
「TikTokの投稿が売上増の大きなきっかけになっています」
まずは、担当のスターツ出版 米山さんに売れ行きについて聞いてみました。
スターツ出版の米山さんが続けます。
さらに本の売上は数日、数週間の一時的な“祭り”ではなく、継続的に売れ続けているそうです。
一人の大学生の投稿が大きく売れ行きを変えた
なぜこれほどまでに人気が広がるのでしょうか。
これに対し、同作を手掛けた櫻いいよ先生はどのように思っているのでしょうか。
いいよ先生が最初にTikTokで大きな“祭り”が起きているのを知ったきっかけはTikTokではない別のSNS。
実際にけんごさんの紹介動画を見てどのようなことを感じられたのでしょうか?
もちろん、こんなヒットはまったく予測していなかったそうです。
「TikTokは最初の3秒が9割」
こうした一連のヒットの要となった存在がTikTokクリエイターのけんご(@kengo_book)さんです。
けんごさんは現在、都内の大学に通う大学四年生の22歳。
ほぼ毎日、おすすめの本を紹介しています。
『交換ウソ日記』の紹介動画はこちら:
そもそも、なぜ『交換ウソ日記』を投稿しようと思ったのでしょうか。
けんごさんは極めて“客観的”な投稿を始めた理由を語り出しました。
さまざまなSNSや動画投稿サイトがある中で、けんごさんがTikTokを選んだ理由は「TikTokならフォローしていない人でもTikTokを見てくれるから」。
それまでは『交換ウソ日記』のようなライト文芸を見たこともなかったと言いますが、TikTokを見ている中高生にも響くのでは?と投稿することにしたそう。
他に投稿時に意識していることは?
「3年の差はかなり大きいんですよ。高校生は全員卒業して、入れ替わっていますから」
そんなテロップや話す内容も含めてすべて事前に台本を用意し、プロの書評家のように書籍を紹介するけんごさんに、なぜ『交換ウソ日記』がTikTokユーザーに支持されたか聞いてみると…。
当時、スターツ出版さんで続刊の刊行が決まったときいいよ先生は「3年も前の作品だけど大丈夫?」と思ったそう。
しかし、それは杞憂でした。
そんな状況でも、一人のクリエイターの投稿で。『交換ウソ日記』は多くの人の目に止まり、いわば古典のようなものになったのです。
近年、出版不況と言われ、大量生産大量消費される書籍市場において、大きな“例外”を作り出したスターツ出版ですが、今後はそれを“例外”ではなく“スタンダード”にしていきたいと米山さんは語ります。
本が売れない時代に、おもしろい本を作る作家さんと、それを伝える読者クリエイター、そしてそのマーケットを下支えする出版社。この三位一体によって、いま、書籍市場は新たな武器を手に入れていると言えるのかもしれません。
禁無断転載
▼その他のTikTokクリエイターインタビューはこちら