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「中川翔子さんとNPO不登校新聞 8.31ライブ~今ここから、生き続けるキミへ~」イベントレポート

TikTok Japanは2023年8月31日、「中川翔子さんとNPO不登校新聞 8.31ライブ~今ここから、生き続けるキミへ~」と題してTikTok LIVEを実施しました。多くの地域で夏休みが終わり新学期が始まる8月末から9月はじめにかけては、1年で最も青少年の自殺が多い時期です。

今年もその日が迫り、追い詰められる子どもたちを救うために何かできることがあるのではないか。そんな思いから歌手・タレントの中川翔子さんとNPO不登校新聞が立ち上がりました。TikTokと連携して8月31日夜に不登校について考える特別なTikTok LIVEを開催。視聴者の皆さまが抱えるモヤモヤや悩みを共有し、一緒に考えました。

LIVE配信に出演したのは中川翔子さん、不登校新聞代表の石井しこう氏と、NPO法人全国不登校新聞社が運営する「不登校ラボ」のスタッフであるさゆりさん、かんたさんの4名。いずれも不登校の経験者です。LIVE配信では自らの体験も踏まえながら寄せられたコメントに答え、不登校について語り合いました。

1時間にわたって意見が交わされたTikTok LIVEの様子をレポートします。

石井 私は「不登校新聞」の代表をしている石井しこうです。今日8月31日は不登校当事者にとっては特別な日だと思います。夏休み明け前後は学校へ行くことがつらくて死に追い詰められたり、不登校になってしまう人が多い時期です。

この日は、学校に行っていない人だけがつらいわけではありません。子どもの不登校に悩む親も苦しいはずです。また学校は休んでいないけど行きたくない、休むのは怖いと思っている人もいるでしょう。そういう人も全部引っくるめて私たちは「不登校」の当事者だと思っています。

今日はみんなでモヤモヤや苦しい気持ちを共有したいと思います。

不登校新聞では、不登校経験者や学校へ行きづらかった人たちが出会って一緒に取材をしたり交流したりできる「不登校ラボ」という場を用意しています。今日はその不登校ラボの特別版をしようということで、私と不登校ラボのスタッフ2名に加え、なんと中川翔子さんを招いてのスペシャルTikTok LIVEが実現しました。中川翔子さん、よろしくお願いします。

中川 よろしくお願いします。この時期は、いろんなことを思い出します。私も不登校を経験し、中学では卒業式も行きませんでした。今でも「行っていたらどういう人生だっただろう」と考えることもあるけれど、「全部意味があったからこそ今生きている」とも思います。今日はよろしくお願いします。

石井 そして今日は不登校ラボのスタッフも2人、参加しています。

さゆり 私は現在22歳で、中3のときと美容の専門学校生のときと、2度の不登校を経験しています。

かんた 僕は今23歳で、高校3年間はずっと不登校でした。進級のためにたまに学校に行こうとしても、学校の近くのコンビニのトイレにこもって音楽を聴いては泣く、という日々でした。

不登校の日々に、突然違う風が吹いた

石井 しょこたんが不登校になったのは、何かきっかけがあったんですか。

中川 小学校までは学校が楽しいところだったのですが、中学に入って休み時間に絵を描いていたら、「絵なんか描いててキモイ」と言われはじめました。最初に友だちグループに分かれるタイミングで、入り方を失敗してしまったんですね。

そんな中で、ある日靴を隠されたのが決定打でした。学校の先生から「今日は靴を貸すけれど早く靴を買いなさい」と言われ、「私は悪くないのに、なんで?」と。そんな大人がいる学校にはもう行きたくない、と翌日から休むようになりました。母とは「学校に行け!」と「ヤダ!」と鍵をかけたドア越しに怒鳴り合う日が続き、とうとうドアを蹴破られて、取っ組み合いをしたこともあります。

でも、その後母が通信制の学校を見つけてくれました。そこに入ってみると、いろいろな事情の子がいたのです。不登校の子もいれば、全然しゃべれない子もいました。ヤンキーやギャルもいて、私が絵を描いていても「うまいじゃん」と普通に接してくれるのです。

それでもまだ学校に行けない日も多かったけど、母が16歳の誕生日に香港旅行に連れて行ってくれました。そうしたら、たまたま隣の席にジャッキー・チェンがいて…。不登校で引きこもっているとき、ジャッキーの映画を見ている時間、絵を描いている時間だけが幸せでした。でもそのおかげで、本物のジャッキーに会えたのです。「死ななければ、生きていれば、またありがとうと思える日がくる」と、はじめて前向きに考えられるようになったんです。そんなふうに、ある日急に「違う風が吹く日」がやってくるんですね。

石井 ネットに救われたところも大きかったとか。

中川 当時はまだSNSがなくて、ホームページのチャットでした。昔は「テレホーダイ」といって深夜23時から朝5時までインターネット回線を定額利用できる時間があったのですが、同じ趣味だけどリアルでは知らない人たちとおしゃべりをするのが楽しかったです。学校じゃない場所で、誰かとコミュニケーションできることにすごく救われました。

「何がしんどいのか」自分でもわからなかった

石井 視聴者の皆さまからいただいたコメントで「なんで学校に行きたくないのか、自分でもわからない。休むことに罪悪感も感じています」とあります。これについてはどう思いますか。

中川 さぼりたいとか、怠けているのではなくて、「しんどい」ということ。「同じことがどうしてできないの?」という周りの目もあるし、自分でもみんなに合わせようとがんばっているんです。でも、それで心が疲れてしまって、休んだほうがいいところまできているんだと思います。

かんた 僕も自分で学校に行けない理由が分からないのがつらかったです。どうしてなのか、その理由を語る言葉が出てきませんでした。

石井 もう一つコメントを紹介します。「学校を休んだ日はゲーム禁止と親から言われています。当たり前ができない自分を責めてしまうし、全部から逃げ出したいです」とあります。

中川 ゲーム禁止は親心で言っているというのは分かるのですが、私自身も、自分でも「ヤバい」と思うくらいゲームをしていました。ゲームをしているときだけは、何かに守ってもらえている感覚だったんです。

今、思い返してみると、そういう経験はすべてイマジネーションの糧になっています。やってきたことで意味のないことはありません。渦中にあるときはどうしても不安だと思いますが、ぼーっとしたり、クヨクヨすること、学校に行っていないことも、すべて自分の経験値になるんです。

かんた 僕はゲームはもちろん、スマホもパソコンもダメでした。小遣いももらえなかったので、自由になるのは自転車だけ。人とつながるきっかけがなかったので、SNSができる人がうらやましかったです。

「○○障害」も個性として尊重するようになってきた

石井 次の質問をご紹介します。「病院で起立性調節障害と言われました。生きていく自信がなくなって、自分に何ができるのだろう?と思っています。起立性調節障害の人はどうしているのでしょうか?」。

「朝、起きられない」と悩む人は多いですよね。私も発達障害、ADHDと40歳手前で診断されました。「障害」と言われるとドキッとする人も多いと思いますが、しょこたんはどう思いますか。

中川 私も感情の浮き沈みが激しかったり、思い詰めてしまうところもあり、診断を受けていないだけで当てはまる点はたくさんあります。朝は肉体的というより精神的に起きられないことも多く、朝は全部ムリです。

さゆり 私はストレスが体に出やすいタイプで、よくおなかが痛くなったり動悸(どうき)がしたりして、不安障害と診断され通院しています。そうなったきっかけも、学校でのストレスで、ある日突然パニック発作が起きてしまいました。不安障害と診断されたことも「まさか、私が?」と大きなショックで、今までできていたことができなくなったような気がしました。こんな私に生きる価値があるのだろうかと、当時はすっかり塞ぎこんでしまいましたね。

中川 数年前と比べると、著名人も含めて「○○障害」とカミングアウトする人も増えてきて、今では特別なことではなくなってきたと思います。そういう「○○障害」も個性として尊重し合おうという社会の空気の変化を感じています。

石井 いじめが終わったあとも、長い間、苦しむ人が多くいます。「小学校時代のいじめの後遺症(PTSD)で、中学校でも学校に行けないことがあります」というお悩みも寄せられています。

さゆり 私もフラッシュバックのように、いじめの記憶がふとしたときに鮮明に蘇ってしまい、現在進行形で悩んでいます。もう12年も経つのにいじめの加害者への怒りや憎しみ、つらい記憶にいつまで苦しまなくちゃいけないんだろう、と。

「普通じゃない」「将来が不安」という悩み

石井 かんたさんは「自分が普通じゃない」という悩みが強かったそうですね。

かんた 学校に行けない、勉強できないのは「普通じゃない」と思っていました。それまでできていたのに、学校に行けなくなってから普通じゃなくなってきて、「ちゃんとしなきゃ」という思いで苦しくなってしまいました。それを親のせいにして責任をとらせようとしていた部分はありました。「普通」が何かは分からないけど、自分は確実に何かから外れている、抜け落ちているという実感はありました。

中川 抜け落ちているのではなくて、個性を見つけている最中だと思えるといいんだけど、探している最中はなかなかそうは思えないんですよね。

石井 さゆりさんは、将来、自分が働けるかがすごく不安だったそうですね。

さゆり 通信制高校を卒業した後、自分で美容の専門学校への進学を選択したにも関わらず、しんどくなって行けなくなりました。「こんなことで逃げていたらまともな社会人になれないんじゃないか」「学費もかかっているから返さなきゃいけないのに」と、どうしていいかわからなくて、自傷行為をしてしまいました。しかも、それを母に見られてしまったんです。

そのとき母が泣きながら「大事な自分の体を傷つけるくらいなら、学校をやめたほうがいい。家にいながら、自分のペースで仕事を探す方法もあるよ」と言ってくれたんです。不登校新聞で働くようになったのも、母の助言がきっかけでした。「文章が上手だから、そういうことを生かした仕事を探してみたら」と。

中川 私もそうだったからすごくよくわかります。「消えたい」という気持ちしかなくて、そのゾーンに入ってしまう。でも、そんな自分を見て泣いてくれる人がいることで、「ああ、私のことで誰かが悲しんでくれるんだな」とわかったりしますよね。

それなのに、どうしてもまたその波がきてしまう、ということもあると思います。そうやって今、「詰んでる」「環境を変えられない」と思っている人もいるかと思いますが、選択肢はいっぱいあります。通信制高校でも、フリースクールでも、今と違う道が選べるができることを知っておいてほしいですね。

つらいときに「休むべきサイン」とは

石井 ここで児童精神科医に聞いた「精神的につらいとどうなるのか」についてご紹介します。精神的につらいと自分の意思とは関係なく、次のような状態があらわれます。

  • 疲れやすい

  • 眠りづらい

  • 勉強がしづらい

  • 人とうまくいかない

こういう精神的につらい状態に陥りやすい人は、決して「弱い人」「怠けている人」「努力不足」ではありません。苦しんでいる人に「ラクをしたいだけでしょ」という人もいます。自分自身も「甘えすぎているのではないか」と思うこともあります。でも苦しむ原因は自分ではなく、環境です。特定の性格の人に起こるものではないのです。

さゆり 自分が弱いから、自分が悪いからではなくて、むしろがんばってきたからこそ、そういう状態になってしまうんですよね。

石井 人は苦しいときほど、自分の心を休ませられないものです。次に、「休んだほうがいいサイン(黄色信号)」と「休んだほうがいいサイン(赤信号)」を紹介します。

黄色信号「休んだほうがいい状態」

  • 最近すごくイライラする

  • 人の視線や噂話がすごく気になる

  • 週に1回以上は遅刻や早退がある

  • 人間関係がつらいと感じている

赤信号「休んだほうがいい状態」

  • 何度も夜中に目が覚める

  • 登校時間が近づくと身体症状が出る

  • 「死にたい」「消えたい」とよく思う

  • いじめを受けている

中川 渦中にいると、赤信号なのに「休んじゃいけない」と脅迫されているような感覚になったりしてしまうものです。私も「一度休んでしまったら、もう学校に行けなくなる」と分かっているから怖いという思いもありました。でも心が悲鳴をあげていて、もはや物理的に危ない状態です。勇気を出して休んでほしいし、周りの人も暖かく見守ってほしいですね。

つらいときに相談する場所はある

石井 赤信号の症状は、体が「もうダメだよ」と教えてくれているということですから、そんな体の状況を大切に考えてほしいですね。そして苦しいときは「相談する」のが一番かもしれません。相談先をいくつか紹介します。行政やNPO法人などの団体が行うさまざまな電話相談やチャット相談があります。

電話相談

  • #いのちSOS :0120-061-338

  • チャイルドライン:0120-99-7777

チャット相談

  • あなたのいばしょ

  • ユキサキチャット

また不登校新聞は相談窓口ではありませんが、不登校経験者が集う「不登校ラボ」をやっています。しょこたんはいませんが(笑)、さゆりさん、かんたさんはいますので、ぜひ遊びに来てほしいなと思います。

最後に、今日参加していただいた3人から感想をひとことお願いします。

さゆり 今日いろいろお話を聞いて、当時の自分に「赤信号出まくっているから、もうストップだぞ!」「自分にそんなに厳しくしないで休みなさい」と言いたくなりました。ほとんどすべて当てはまっていたので。かつての私のようにしんどいと思っている人には、ひとりじゃないと伝えたいです。

かんた 不登校からもう5、6年たちますが、当時の自分に伝えたいことがあります。同じように、5、6年後の自分から見たら、今の自分に伝えたいこともあると思うんですよね。今の自分だけを考えるとギュッと視野が狭くなってしまうから、いろいろな情報も含めて広く考えていけたらと思いました。

中川 学校に行けない、行けなかったという人、先生、親など、多くの人がこのLIVEを見たり、コメントを寄せてくれて、つながることができました。あとは当時の自分も召喚したかったですね。そして今日ここにオンラインで来てくれたみなさん、そして当時の自分に「生きていてくれてありがとう、息をしてくれていてありがとう」とすごく思いました。

いろいろ傷ついたり悩んだりしたからこそ、寄り添ったり共感したりすることができると思いますし、そういう「分かり手」が増えてほしいなと思います。今悩んで傷ついている人は、きっと「あなたはひとりじゃない。大丈夫」と言える大人になれるのではないでしょうか。

今日は当事者の皆さんの生のコメントに触れる貴重な体験となりました。これからも、みなさんが「息をしてくれる」「生きていてくれる」ことを祈り続けています。

石井 最後に少しコメントを紹介します。「とてもよかった。改めて、不登校は誰にでも起こり得るし、悪いことではないと思った。みなさんとても魅力的でした」「すてきな4人の先輩の話、すごく安心しました」「めっちゃ共感した。ひとりじゃないんだってうれしい」「この配信を見て気持ちが救われました。今も苦しんで飲み込んでいる部分もあるけれど、分かってくれる人がいるだけで安心しました」。

中川 1人じゃないよね。つながるから大丈夫だからね。

石井 今回のLIVEはたくさんの方にご覧いただき、ありがとうございました。今ここから、生き続けるみなさん、またお会いしましょう。

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