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「低評価の感想」を言いにくい時代だから刺さった映画レビュー。映画感想クリエイター「しんのすけ」が気づいたTikTokの本当の魅力 <しんのすけさんインタビュー>

しんのすけ

TikTokの人気クリエイターに、自身のストーリーや動画投稿のコツ、フォロワーの増やし方、ヒットするコンテンツの秘訣などを聞く「TikTokクリエイターインタビュー」。

さまざまなハッシュタグチャレンジが行われているTikTokで、特に人気を集めているのが、自分の得意分野を解説した動画を投稿する「#TikTok教室」です。この「#TikTok教室」、過去1年の総再生数が150億回を突破するほど大人気。

そんな#TikTok教室の動画の中で、映画作品のレビューを投稿して人気を集めているクリエイターがいます。

それが、しんのすけ(@deadnosuke)さんです。

しんのすけさんがTikTokのアカウントを開設したのは2019年6月27日。当時は映画の感想ではなく、映画のような撮影技法を使って自由に動画を投稿していました。

そんな中、2019年8月24日に投稿したある映画の感想動画が大きな反響を呼び、以後、彼はTikTokで有数の「映画感想クリエイター」となっていったのです。

生徒への課題がきっかけではじめたTikTok

「最初はなんとなくはじめたんですよ。現在、私は映画の助監督と大阪のデザイン専門学校で講師をしているのですが、そこでインターネット上の映像について教えています。昨年、夏休みの課題で、なにかネット上でコンテンツを発信してもらい、夏休み明けにその反響や成果を発表してもらう課題を与えました」

そこで、しんのすけさんはふと考えたといいます。

「生徒だけに課題を与えるのはあかんな、と思って。それで自分も何かコンテンツを出してみようと決めたんです」

そこで、当時なんとなく触っていたTikTokを始めることにしたと言います。

まずは自身の専門である映画の撮影技術を使った映像をアップしてみたというしんのすけさん。

しかし、再生数はまったく伸びなかったといいます。

「これじゃあかんなと思って。思い切ってその日見た映画の感想をアップすることにしました」

その日、たまたましんのすけさんが見たのは『ONE PIECE STAMPEDE』(ワンピース スタンピード)。

「これが、正直あまりおもしろくなくて(笑) 。もちろん、それには深い理由もあって、その気持ちをいろんなSNSに書こうと思ったのですが、TikTokって当時は映画のネタがなかったので、それなら自分が感想をあげてみようと思ってアップしてみたんです」

それが、2019年8月24日にアップされたこちらの動画。


すると驚きの結果が起きました。

これまでとは違い、1400以上のいいねがつき、1900以上のコメントがついたのです。

「賛否両論かなりコメントがつきました。『おまえにこの映画の何がわかる!』という想定内のコメントもあったのですが、意外だったのは『周りは絶賛してるけど、正直自分も微妙でした』という感想コメント。その時に、今ってみんな本音が言いにくい世の中なんだなと感じました」

その「本音」を求めるニーズを察知したしんのすけさんは、それから映画の感想を投稿するようになります。

「とはいえ、僕の映画の感想というより、知名度ある映画作品を取り上げているという事実があるから、僕の動画を見てくれているんじゃないかと思って、最初は疑っていたんですよ」

ところが、実態はそうではなかったのです。

「低評価の感想」を言いにくい世の中に刺さった映画レビュー

「『ワンピース』や『天気の子』などの有名作品以外の感想を投稿しても、同じように再生数は伸びていったんです。そこで、映画作品ではなく僕の映画の感想を見に来ている人が一定数いるんだと実感が持てました」

しんのすけさんがTikTokに投稿する際に意識しているのは、「本音で、映画評論家っぽくなく感想を投稿すること」だといいます。

どういうことでしょうか。

「現代は、SNSで個人が気軽に発信できる時代になりました。が、『おいしくない』とか『おもしろくない』とか、低評価の感想って言いにくい世の中になっていると思うんです。特に人気作品だとなおさら言いにくい。でも、僕が低評価な感想を投稿すると、『みんな絶賛じゃなくて安心しました』とコメントがつく。もちろん、絶賛してもです。そういう隠れたニーズに応えているのがウケているのだと思います」

誰もが発信できる社会は、誰もが窮屈さを感じている社会ーー。

いま、しんのすけさんのTikTok動画が支持され始めたのは、時代の流れなのかもしれません。

ウケる動画だけでなく、好きな映画だけを投稿したから起きた“事件”

これまでさまざまな映画レビューを投稿してきたしんのすけさん。

では、再生数が伸びやすい動画はどのようなものなのでしょうか。

「やはり有名な作品や、人気俳優やアイドルが出ている作品の感想動画は伸びやすいですね。 『クレヨンしんちゃん』など、人気作品だと見ている人も多いので、他の人がどんな感想だったか気になると思うので僕の動画も見られやすいのでしょう」


とはいえ、しんのすけさんは「人気映画ばかり投稿することは避けている」といいます。

「作品選びだけでなく、その作品からどんなことが読み取れるのかとか、僕自身の独自の解釈を入れるようにしています。あくまで僕の視点で好きなことを投稿する。すると、意外な反応が起きることもあるんです」

しんのすけさんのアカウントを見ている人は10〜20代が多いといいますが、昔の映画に反応されるケースも少なくないそうです。

「『シザーハンズ』という映画が人生で一番好きな映画なんですが、その感想を投稿したら、再生数が伸びて、コメントもすごくついたんです。1990年の映画なので、こんな昔の映画になんでこんなにコメントが?と思ったら『第五人格』というスマホゲームとコラボしていたそうで、若い人がすごく知っていたんです。そういう自分が知らないところを知れるのもTikTokならではの魅力ですね」

31歳しんのすけさんが感じるTikTokに投稿する“使命”

TikTokには、「好きなものだけを投稿する」と決めているしんのすけさんですが、実はその考えが変わった時期がありました。

「コロナが流行った時期に、映画とはまったく違うコロナの影響について解説した動画をアップしたんです」

いったい、なぜ?

「当時、中学高校はどこも休校になっていましたが、メディアでは大人向けの専門的すぎる情報しか報じられなかったんです。これはみんな困っているだろうなと思い、メディアで報じられている内容をわかりやすく解説する動画をアップしたんです。そしたらすごくコメントで感謝されました」

それがこちらの動画です。


そのとき、31歳のしんのすけさんの心境に、ある変化が起きていました。

「若いみんなにとって、いま必要な情報が届いていない。その現状に対しては、フォロワーが多い僕のような人が影響力を活かして、みんなにとっての不明点や疑問点を少しでも明らかにしていく使命があるんじゃないかと思ったんです。それがインフルエンサーとしてできることなんじゃないかって」

それまで、フォロワー数はいたずらに追わなかったというしんのすけさんですが、この時、中高生に影響力を持つ“メディア”として機能できる自分の役割に気づいたそうです。

「これからは、フォロワー数が多いことも武器だと思うので、数を増やすことも意識していきます」

#TikTok教室で先生になるときのコツ

では、私たちがこれからしんのすけさんのようにTikTokで動画を投稿する場合、どんなことを意識して投稿すればよいでしょうか。

「何より、自分が好きなことを投稿することです。#TikTok教室って、自分が先生になって好きなことを教える動画を投稿するものだと思いますが、その手段としてTikTokは本当に優れているんですよ。まず、ユーザー層が専門的な分野に詳しくない一般の人が圧倒的に多い。特に映画のようなマニアックな人がいくらでもいる分野ならなおさらです」

続いて、コンパクトにまとめること。

もともとTikTokは動画の再生時間が最大1分なのでコンパクトにならざるをえません。

「それがいいんですよ」としんのすけさん。

「だって、『1分だけあなたの時間貸してください』って言われたら、耳を傾ける気になりませんか?見てからどんだけつまんなくても、1分の動画なので、おもしろくなくてもそこまで怒ることもないんですよ。後悔がない(笑)」

「見て損した」にならないのがTikTokの魅力。だから、気軽に動画を投稿しても、見ても楽しめるのだと言います。

「さらに、1分の動画だとその場でみんなで確認できるのも魅力なんです。今、生徒たちに講義でおもしろかった動画をシェアしてもらう機会を設けているのですが、その際も1分以内で動画が終わるTikTokはみんなで見やすいんです」

対して、映画やドラマ、10分以上の動画となると、その場でみんなで確認できないといいます。

「尺が短いから、共通体験がその場でできるのはTikTokの何よりの強みです。あとは、小難しく話さず、自分のスタンスが見えるような発言をしたほうがいいです。僕は誰にも忖度せずに映画の感想を投稿しています。そのほうが、今のSNSを見ている人たちには届くんです」

しんのすけさん曰く、「1分くらいなら、興味がなくても見てもらえる」。

だからこそ、少しだけTikTokを開いている人の時間をもらって、たった1分間だけ自分が先生になる機会をいただく。

その気軽な心持ちこそが、人気アカウントに成長する秘訣なのかもしれません。

クリエイタープロフィール

しんのすけ

しんのすけ
京都府出身、31歳。『水戸黄門』の助監督として映画・ドラマ業界に入り、現在は映像作家、専門学校講師、2019年より映画感想TikTokerとしての活動開始。映画だけでなく、中高生に分かりやすい情報発信をメインとしている。

禁無断転載

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