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ニッチマーケットにおけるマーケティングについて

私の会社は現代のベンチャー企業では珍しく、大きな出資を得ることなく、ほぼすべて自分たちのお金だけで回すビジネスを展開しています。
※多少の運転資金借り入れはあります。
そのため、「自分たちで世の中に提供できる価値を最大化」することにこだわってやってきた結果「ニッチマーケット」にたどり着きます。様々な文献も参考にしましたが、一番は経験と実験の結果のリアルです。
ここでは、ここ3年間でわかった「ニッチマーケット」の本当のリアルと戦略の優位性を綴っていきます。
※当たり前のことも多いですが、結構大手のニッチ戦略でもできていないことばっかりです。十分ではない資金の中、必死にやってきたこの体験こそ、「ニッチマーケット」の教科書になるのかなと自分で勝手に思っています。

コト消費をさせることを前提にするとSTP分析の「P」が超重要

私は、アメリカの経営学者でマーケティング論の権威、フィリップ・コトラーが提唱した、マーケティング戦略の超基礎的フレームワーク「STP分析」を結構大事にしています。
なぜSTP分析を行うのか。基本的に「あらゆる顧客を狙った商品は、誰からも必要とされない」というのが、マーケティングを考える上で忘れてはならない前提条件です。ましてや、資金が限られている企業は、投資を少なくしてさらに回収スピードを最速にすることが大前提。
その前提を把握した上で、新たなビジネスやサービスを展開する際にはまず自社を取り巻く環境を把握してから、どの市場(顧客)を狙い、どのような立ち位置でアピールしていくか、最も効果的な手段を決定するために重要なプロセスがSTP分析なのです。
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)、それぞれの頭文字を取って名付けられた分析手法です。中でも、私は最後のポジショニング分析にとても重きを置いています。
また、コト消費とは、商品やサービスを購入したことで得られる、使用価値を重視した消費傾向の事。ユーザーは体験を重視しているため、その商品を利用して得られる価値をいかに考えるかを重視します。
そのためのセグメンテーションとターゲティングだ。ただ、なんでも特化したり、小さくすればよいというものではない。
そして、一番大事なことは、セグメント後に決めるターゲットにむけてどんなポジショニングをとるかです。
諸々数字を分析したうえで、誰でもセグメント、ターゲットはある程度簡単に分析できますが、有効なポジショニング設定は非常に難しい…私は、有効なポジショニングとは【「コト消費」を満たすような「とがったコンテンツ」が作れるかどうか】だと考えています。有効なポジショニングが考えられなければ、必ず売れない商品になるのでやらないという判断をします。ほとんどの企業における、ニッチマーケットビジネスは単純にターゲットを狭めただけのものになっています。
それは全く意味がなく、ただ単純に「専門店にあるものを買うといったモノ消費的な形」になり、ユーザーはついてこない。「この専門店で探すと、私が好きなものがたくさんあって、わくわくして楽しい」など、そんなコンテンツがつくれるかどうかがポジショニング決定において重要である。
逆にターゲットの「コト消費」を満たすような「とがったコンテンツ」が作れないと、ただ、単純にマーケットを狭めただけの全く意味のない行為になってしまい稼げないニッチマーケットになってしまいます。魅力的なポジショニングが取れないのであればニッチマーケット戦略は成り立ちません。

セグメントとターゲットの決定

STP分析のスタートはまずセグメンテーション、つまり顧客を分類することです。ここではどんな「共通項」で括るかがポイントになります。
例えば下記のような括りがよく使われます。
・「地理的変数」・・・国や地域、都市の規模、発展度、人口、気候、文化・生活習慣、宗教など
・「人口統計的変数」・・・年齢、性別、職業、所得や学歴、家族構成など
・「心理的変数」・・・価値観、趣味嗜好、ライフスタイルなど
・「行動変数」・・・購買状況や購買パターン、使用頻度といった製品に対する買い手の知識・態度・反応など
これらの変数に沿って、市場や顧客を細分化していきます。と難しく書きましたが私は、まずそのマーケットの中で現状の結果を知ることから始めます。
例えば採用マーケットの中で明らかに結果の悪い「介護領域」「物流領域」「飲食領域」などを抽出し、上記の変数から、「いけてる」マーケットを絞り5R視点で分析をします。
”5R”での視点
・規模は十分? Realistic Scale
狙うにたり得る(利益の出る)だけのボリュームはあるか?
・成長性は? Rate of Growth
すぐに刈り尽くしてしまう恐れはないか? 今後も成長するか?
・優先順位と波及効果は? Rank & Ripple Effect
そのカタマリを獲得すると、他のカタマリが連続して取れる美味しさはあるか? そういう美味しいカタマリなら、優先順位を高める必要はないか?
・到達可能か? Reach
メッセージを発信して反応してくれるか? アクションに応えてくれるか?
・競合状況は? Rival
そのカタマリを狙う競合は多くないか?
5R視点で「いけてる」と判断したら次はターゲットです。
※競合が多いか多くないかは現段階(セグメントを決める段階)ではある程度無視です。後のポジショニング次第で競合は全く関係のないものになるかもしれません。上記のセグメントの中で、どういった課題(原因)があるのかという点に注目し、課題からグループを決定することをターゲット決定とします。
例えば「物流セグメント」の求人サイトでの課題は「ユーザーが字が小さくて通常の求人サイトでは文字が読めない」や「ユーザーが応募時の入力が面倒と思っている」といった課題(原因)を多く抽出することができれば「字が小さくて通常の求人サイトでは文字が読めない」や「応募時の入力が面倒」は現役の50代OVERのドライバーとおのずと浮かび上がってくるでしょう。 これがターゲット決定です。
そして一番大事なポジショニング。ターゲットが決まったら、自社の商品やサービスが選ばれるために、「ターゲットから魅力的に見える」「競合と比べても優位に見える」ように、自社の立ち位置やアピールの仕方を明確にしていきます。
ポジショニングのポイント
そのターゲットに「コト消費」を満たすような、とがったコンテンツ(そのターゲットのみ必要とされているが、重要なコンテンツ)
を明確にわかりやすく示すことができるかどうか。また、その際、それらが競合比較で自社の優位性があるポジショニングになっているかです。

有効なポジショニング設定

ターゲットに対して「コト消費」を満たすことができるかどうかが大事。
コト消費とは、商品やサービスを購入したことで得られる、使用価値を重視した消費傾向の事。ユーザーは体験を重視しているため、そのサイトを利用して得られる価値をいかに考えるかを重視する。

例えば「ドラピタ」のコンテンツ
・面倒な入力をできるだけ省いた簡単応募(メールアドレスの入力もなし)
・あえて自由度は省き、勝手に欲しい仕事にたどり着くような検索導線
・今までの求人サイトにはない、圧倒的に詳しい求人内容
・未経験の方には、この仕事が嫌いになるのではないかと思うくらいリアルな体験コラム
上記のような、コト消費を満たすコンテンツを用意している。
【面倒な入力をできるだけ省いた簡単応募(メールアドレスの入力もなし)】
ドライバーの平均年齢を考えると、50代がメイン。自分のメールアドレスを把握していないまたはメールの見方がわからない
といった人がほとんど。メールアドレスを非必須にするだけで、応募フォームの離脱率が18%も改善
ドライバーは仕事でショートメッセージを利用しているケースが多く、応募後は電話→出なかったらショートメッセージでやり取り
これを顧客に徹底させている。
【あえて自由度は省き、勝手に欲しい仕事にたどり着くような検索導線】
あえて検索時の自由を制限し、職種を選んだ際強制的にエリアを選ばせる、また、こだわりを選んだ際に強制的にエリアを選ばせる等の取り組みを行っている。自分で選んで、見つけたい仕事が見つけられないなら、多少自由を制限してでも強制的に到達させる。
【今までの求人サイトにはない、圧倒的に詳しい求人内容】
ドライバーに向けた求人サイトであるため、「素人目線ではない仕事の中身」を記載すること。
とにかく、ドライバーが欲しい情報を提供し、超リアルな仕事探しを体験させる。
【未経験の方には、この仕事が嫌いになるのではないかと思うくらいリアルな体験コラム】
未経験の方は、「リアル」を一番探している。
入社して続かないなら、見て面白そうと思った方のみに仕事探しをしてもらえればよい。
上記のように、そのターゲットに「コト消費」を満たすような、とがったコンテンツ(そのターゲットのみ必要とされているが、重要なコンテンツ)が作れないと有効なポジショニングにならず、会社にとって稼げないニッチマーケットになってしまいます。そんなニッチマーケットは捨てます。

最後に、某メディアのポジショニング設定の話。

「ミドルシニア世代」にむけた、某大手の総合求人サイト
ミドルシニア世代といっても様々な年齢、さまざまな経験を持ったミドルシニア世代の方がいる。この状態だと、とがったコンテンツの作りようがなく、「単に、シニアが歓迎されている媒体で仕事を探すという、ユーザーにとっては所有に近いようなモノ消費状態」になっているため、現状ではユーザーがついてこない。「コト消費」を支援できるセグメント決定をし、ターゲットを決めなおし「とがったコンテンツ」になるポジショニングを用意しなくてはならないと考えます。シニア世代でもスマホで画面を見やすくするために文字を大きくする+なんとなくの特集を企画するくらいでした。有効なポジショニング設定ができていない感があります。

某大手の「賃貸」の総合検索サイト
※今はサービスが終了しています。
suumoとHOMESに真っ向勝負状態で投資もかかり、回収にも時間がかかり、なかなか難しいマーケットである。私がマーケターなら
「●●ひとり暮らし賃貸」「●●同棲賃貸」「●●新婚賃貸」「●●リタイア賃貸」など「暮らしに」セグメントをかけそれぞれターゲットを決定していたと思います。それぞれのターゲットに対してコト消費を助けるようなとがったコンテンツが作りやすくなり、有効なポジショニング設定ができそう。
→ひとり暮らしの方が体験したいコンテンツと、新婚の方が体験したいコンテンツは全く違う。
とがったコンテンツ(そのターゲットのみ必要とされているが、重要なコンテンツ)を考えることが有効なポジショニングになることがよくわかる。
ユーザーのコト消費を手助けするためには、必ずセグメントとターゲットを明確にしなくてはならないしコト消費ができないメディアはユーザーがついてこない。それが現状なのかなと思っています。

参考になれば幸いです。

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