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「スポーツSDGs概論」から学んだこと、感じたこと

文:菊地 駿斗

 第12章に記載されていた「総合型クラブとSDGsを関連づけて考察する2つの見方・考え方」から組織とSDGsの関係性について整理してみた。1つは組織がこの先の取組においてSDGsに貢献するという見方。1つは組織がこれまで行ってきた取組をSDGsというフィルターを通して、改善・改良に努めるという見方だ。

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スポーツイベントとSDGsの関係性についても似たようなことがいえる。本書の16章において、「スポーツイベントとSDGsの関係は、2つの観点から理解されるべきである」と記載されている。整理してみると、1つはイベントの目的の中にSDGs達成に寄与出来るものを組み込んでいくという方向性。1つはイベントの持つマイナスの側面を持続可能という点から見直すことによりSDGs達成に貢献していくという方向性である。組織しかり、イベントしかり、共通しているのはSDGsに関連づけた取組をし、SDGsでこれまでの取組を改善していくという点である。
 組織とSDGsの関係性を考える際に、組織を具体化すると違った見方もできる。例えば、スポーツ団体とSDGsの関係性を考える。感動や喜びの共有を通じて、地域生活を豊かにするや身体的諸能力を洗練するなどといった「スポーツの力」を世の中に発信することもスポーツ団体がやるべきことの1つである。その際に、SDGsに関連した取組を発信することにより、スポーツ団体は多様なステークホルダーと連携できるメリットが生まれる。これもまた、組織とSDGsの関係性である。このように、組織とSDGsの関係性というイシューは組織を具体化すれば、いくらでも深めることが出来ると感じた。

 「JAPAN SPORT COUNCIL(JSC)」が2017年に実施した「地方スポーツ推進計画とSport for Development and Peace(SDP)に関するアンケート」を通じて、日本の地方自治体のスポーツ施策担当者はSDPのようなスポーツを通じて社会課題を解決するという国際的な潮流に追い付けていない、スポーツを社会課題解決の手段としてどのように活用すべきか分からないといった事実が浮き彫りになった(1)。この現状を改善すべくJSCは「JAPAN SPORT NETWORK」という地方間で「スポーツと開発」における情報やノウハウの共有できるプラットフォームを開設した。また、調べてみるとスイスに拠点を置く国際NGO、「Swiss Academy for Development」も「sportanddev.org」というプラットフォームを運営しており、日本もスイスも取組の方向性は類似していると感じた。
 参考文献
(1)笹川スポーツ財団『スポーツ白書2020』 第11章スポーツと国際開発pp.276)

 JSPO(日本スポーツ協会)、JOC(日本オリンピック委員会)の前身である大日本体育協会の創立100周年を記念し、公表された「スポーツ宣言日本」においてグローバルな課題解決に向けてスポーツが貢献できることとして、3つの使命が挙げられている。1つ目は、スポーツは運動の感動や喜びの共有を通じて、人と人との絆を培うという文化的特性を持っており、絆を培うことにより人種や思想、信条等の異なる多様な人々が理解しあえることで地域生活の豊かさへの貢献の可能性を持つということ。(公正で福祉豊かな地域社会の創造)2つ目は、スポーツは身体的諸能力を洗練化させ、研ぎ澄ましていくことができ、これによって他者の営みや自然環境の破壊への思いといった感覚を体を通して受け止めることができ、環境と共生の時代を生きるライフスタイルの創造に寄与する可能性があるということ。3つ目は、相手が自分を尊重してくれているという思い(相互尊敬)を基調とする文化的特性を持つスポーツは、真の親善と友好の基盤を培う可能性を持つということ。これらのスポーツの価値や意義は、自らスポーツに取り組み、その楽しさや喜びを享受することで生み出されるものであり、SDGsのためにスポーツを手段的に活用することではないということである。という考えが興味深く、共感できた。

 このように、僕は「スポーツSDGs概論」を通してスポーツとSDGsの関係性、スポーツを社会課題の解決に活用するという考え方の地方レベルでの浸透具合、それを受けての対策、スポーツの価値と意義を学ぶことが出来た。

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