分別する

「冬」がテーマの1話完結・読み切り短編BL集『冬箱』収録作品です。

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身体中が痛くて目が覚めた。手首、腕、喉、太ももの内側。けれど一番痛むのはケツだ。少し無茶をされた。
毛布からはみ出たままの、裸の肩は冷え切っている。隣に残った布団の中の温みとの差に、虚しさが増した。

ぼおっとしたまま時計を見る。
もうこんな時間か。起きなければいけない。
身体を動かすと、後孔で少し乾きかけた粘液の存在が感じられて不快だった。

布団をあげると、固くなったカイロが転がってきた。
おれが起きる前にさっさと帰ったらしい、昨夜連れ込んだ男のものだ。

ろくでもない男だろうと、見た時からわかっていた。
けれど言葉だけはあたたかく、優しく、甘かった。

あたたかいと思っていたのだ。そしてそのぬくもりが欲しいと、昨夜はたしかに思っていたのだ。今だって少しは。

大学を卒業したら、地元に帰って家業を継ぎ、数年の後には結婚する。
そして子どもを作って、その先は、引き継ぐためだけに生きていく。
つまり大学を卒業すれば、そこでオレのゲイとしての人生も終わる、ということだ。
それが約束だった。そうすることを担保に、おれはこれまで、安定した生活と金とを与えられて生きてきたのだから。
借りたものは返さなければならない。

焦っていたのだろう。
もうあと4年もないのだから、と。
どんな男のものでも棒は棒なのだから、少しでも多く味わっておきたい、と。

でも、無駄だった。
たしかにどんな男のものでも、棒はちゃんと棒だった。けれどゴミはゴミなのだ。
たとえどれほど性能のよい棒だとしても、どうせ時期が来たら捨てなければならないようなゴミを抱き、ゴミに抱かれる余裕はない。
ちゃんと選んで、期限までと割り切り、それでもその先も繋がっていたいと思えるような、そんなセフレを作らなければ。
……そんなもの、作れるのだろうか。わからないけれど。

冷えて固くなったカイロを、部屋の隅のゴミ箱へと放り投げた。淵にあたってグラグラと箱を揺らし、それでもなんとか、中に落ちておさまった。

分別だ。
おれにいま、必要なもの。
大丈夫だきっとできる。
ほらこの生まれたてのゴミだって、ちゃんと捨てることができた。

卒業までのカウントダウン。1日にひとつずつ進む針が、また1日分の音を立てた。胸のどこかが軋んだけれど、今はともかくシャワーを浴びて、朝食だ。
まだ残っている気がした気怠い温もりを振り切って、冷たい朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

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リクエストテーマは「カイロ・朝・あっさり」でした。ありがとうございました!

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