「家出少女」を見つけたら……セックス以外にもできることがあります、という話
少し前、未成年の少女たちを買春する成人男性について、“いびつな形で支援する存在”と書かれた記事が出ました。
改めて問う。「私たちは『買われた』展」に意味はあったのか?
心身の成熟度合いや経験値の多少、また判断力の有無などは
年齢では推し量れない範囲のものではありますので、一旦置いておきますが
未成年(女性に限りませんが)については、確実に言えることがあります。
未成年者は、社会的に不利な場におかれています。
どれだけお金があっても、携帯を買ったり、住処を借りたりことすらできません。
18歳未満だと夜は出歩いてはいけないことになっていますし(そういう条例がたくさんあります)、
借金することだって、基本的には20歳以上で、とされています。
人工妊娠中絶だってそうです。(結婚していればまた別ですが……)
(なお、法的には保護者の許可は必要ないはずなのですが、実際は多くの医療施設で保護者の許可を得ることが条件とされているようです)
明文化された社会的不利の中に立つ相手では、対等な立場でビジネス・金銭取引をすることは困難です。
セックスにおいて、
成人女性を相手とすることと、未成年女子を相手にすることとには、根本的な違いがあります。
そもそも、
自身(や家族)の健康や安心や安全、暮らしや、進路・進学のために、未成年者が金を調達してこなければならない状況
というのは、それ自体を解消するのは行政の役割です。
根本的な話をするのであれば、売る・買う側の個人たちがどうこうという話ですらなくなります。
“買う”人がひとりもいなくなったとしても、未成年者の困難は残ったままです。
……と、いう点を前提にしての話です。
「金に困っている・金が必要な家出少女が目の前にいるんだったら、“買って”あげたほうが助かるだろう?」
「本人たちが“売り”たがってるんだから、支援にもなるし、いいじゃないか」
と、
それでも思う人たちに向けて、「そんなことはないよ」と言ってみたいなと思い、この記事を書きました。
根本的解決を目指すための記事ではなく、専門的な知識も経験も立場も持たない、私たち素人が、素人としての範囲内でできること。
“家出少女”を見かけたら、できること。の話です。
1、金を渡す
これが、きっと一番簡単な方法です。
お金があったからといって全てが解決するわけではありません。
上述の通り、お金があっても、未成年者にはできないことがたくさんあるからです。
でも、できるようになることもきっとたくさんありますよね。
お金って便利です。
お金を渡す際には、セックスという“対価”を受け取る必要はありません。
実はセックスって、“家出少女”を支援するときの必須項目じゃないんですよ。
セックスをしないで金を渡すのであれば、
・何かしらの足しにしてもらえる
・妊娠させてしまうリスクがない
・性感染症に感染させてしまう、感染させられてしまうリスクがない
・“淫行”条例にひっかかってしまうリスクもない
と、いいことだらけです。
これまで
1、金を渡す
2、セックスする
という2ステップだったところが、ワンステップでよくなるんです。
よりお手軽ですよね。
時々「自分から売ってくる女子高生がいる」ことを“買ってしまった”理由にあげる人がいるようですが
あなたには、買わない自由がありますから安心してください。
未成年者との性交渉経験を買う自由なんてものはありませんが、買わないでいる自由はあるのです。
シンプルな話ですね。
2、虐待を受けているようであれば、“通告”してみる
虐待を受けていることが確実で、
ともかく安心して眠れる場所が欲しい、という場合であれば、
ともかく通告してみましょう。
通報なら110番ですが、通告は“189”です。
イチハヤク、ということだそうです。
通告というのは、「この子、虐待を受けているみたいなんです」と、専門機関に報告をすることです。
通告は、罰則はありませんが、実は私たち全員に義務として課せられていることです。
医療機関や教育施設にお勤めの場合には、特に重点的にその義務を果たすようされてしまうので、ご存知の方も少なくないかもしれません。
“189”へのダイヤルは、匿名で行うことができます。
・虐待かどうかが疑わしい場合
189にダイヤルしてしまって大丈夫です。
虐待であるかどうかの判断は専門家が行います。判断は、あなたが行うことではありません。
・深刻な虐待ケースで、今すぐにでも保護が必要と判断された場合
この場合でも、189へのダイヤルでOKです。
ただ、どれだけ深刻か、深刻に違いないと思われた理由を申し伝えるようにしましょう。
同時に、警察にも連絡をし、保護してもらいましょう。
警察には、未成年者を“保護”する、という仕事もあるのです。
189では「警察にも連絡する」旨を、
また警察には「189にも連絡している」旨を伝えましょう。
「まぁ大丈夫だろう」と判断され、家に帰されてしまうというリスクを軽減させるためです。
場所が東京(らへん)の場合には、
東京弁護士会が行っている「子どもの人権110番」にかけてみるのもよいかもしれません。たとえば、ですが。
かけるのは、子ども本人です。
番号を紹介してあげるとか、子どもが望むなら、隣にいてあげてもいいかもしれません。
東京弁護士会ですと、
カリヨンという子ども向けのシェルター(緊急避難場所)と繋いでくれる可能性もありますし、
そうでないにしても、弁護士さんを挟み、「帰りたくない」という子どもの意思を伝えてもらうことで、「今日はいったんお家に帰ろうか」という事態になってしまうリスクをさらに低減してくれる、可能性があります。
なお、法務省はじめ「子どもの人権110番」は他にもありますが
機動力的や即時的なことを考えるなら、弁護士会さんのところにたよるのがいいような気がします。
あくまで東京、なんですけどね……。(すみません)
相手に「家に帰りたくない」と言われたら、ともかく、できる限り、家に帰らないですむようにしましょう。。(簡単ではない可能性が高いので、そうすることが子の身を守ることであると、説得できるだけの能力のある専門家、第三者を絡ませることが得策かなと思います)
なおこうした電話は、
かけるだけかけてみて、「あ、いやだな」と思うことがあれば
そこで切ってしまってかまいません。
東京弁護士会しかり、189しかり。
気軽にかけて、気に食わなかったら、ガチャンで終了。
それでいいのです。
・本人が通告や保護を望んでいない場合
無理強いはできません。
番号の紹介だけして、(もしくはお金だけ渡して)(そうでなければ何もせずに)立ち去りましょう。
「何もしないでいるなんてできない」
と思うのであれば、のちのタイミングであらためて、189にダイヤルしてみてください。
そして、“次にこういうケースがあったら、どうしたらいいか”相談してみてもいいでしょう。
子ども人権110番は子どもがかけるためのダイヤルですが
189は、子ども本人がかけても、大人がかけてもいいダイヤルです。
実際になにかケアが必要と思われるケースを見かけたとき、
私たちの大半は力不足です。
自身に専門的知識や経験がないから、だけでなく
制度として根本的解決に関わる術を、基本的には個人では持ちにくい社会だからです。
残念ながら、制度に足りないところや不備が多々あることは、広く知られている通りです。
しかし、どうにか術を見つけ、機能させるかたちで利用できるようになりたいところです。
3、ひとりで街中に残しておくのが心配だ、と思われた場合
通告は不要と言われ、
しかし、お金だけ渡して去ってしまうのは心配だ……と思われた場合
明るくなるまでの居場所を探してあげることくらいは可能かもしれません。
自宅や、ホテルの同じ部屋にとどまることは危険です。
“淫行”でなくとも、家出した未成年と一夜を過ごすというのは、法的に困難の多い行為なのです。
22時以降、未成年者は出歩いていると“補導”されてしまうことが多いです。未成年者の安全のため、に行なわれていることなのでしょうが
補導を避けたい未成年者たちは、ファミレスやコンビニなどより人目のある、より安全に思われる場所に、簡単にはいられないようになっています。
家に帰らないでいるために、より目立たない場所、より人目につかない場所を探さなければならないことが少なくないのです。
より危険ではない居場所を、探す手伝いをしてみましょう。
最後になりますが、これらは“家出少女”を見つけた“成人男性”だけに有効な話、というわけではありません。
今回の話は、対象者が
・家出していなくても
・少女じゃなくても
できますし、支援者は”成人男性”じゃなくてもいいものばかりです。
また「セックス以外にも」の部分は「SNSで拡散する以外にも」との置き換えも可能です。
「ひどい親がいた!」と、虐待シーンが動画におさめられ、SNSで拡散されるような事態もたびたびありますが
それは被害者への二次加害となり得るものですので、どうかやめて欲しいです。
また子どもに暴力をふるってしまう保護者の場合、
保護者自身も、追い詰められ、助けを必要としている場合が多々あります。
暴力をとめられる機会がつくれれば、子どもにも、保護者にも、こんなにいいことはありません。
“自分が直接わって入って行って、暴力を止める”必要はありません。
離れたところから、専門の機関に電話をかけるだけでいいです。
駅や病院、また学校などの公的な場所であれば、
職員さんに「あそこでこんなことが起きています、通報してくださいor通告してください」と言うだけでもいいです。
ところで冒頭で紹介した、未成年少女を買春する人が“いびつな形で支援する存在”と書かれていた記事(http://best-times.jp/articles/-/4527)では、
その直後に「(あるいは搾取する存在)」とも書かれていました。
実はよく意味がわからないというか
結局「問題の元凶そのものではない」と言って、未成年者への買春行為そのものについては何も問わずにいたい、もしくは行為に及ぶことによる何かしらを薄めたいだけなのだろうな、ということしか感じ取れませんでしたので、これ以上のコメントは、今回はしません。
連載の続きなり、出版物を読むなりすることがもしあれば、(そして気が向けば、)そのとにに。
お金や居場所を必要とする目の前の未成年者に対し、大人個人としてするべきは
まず目の前の存在に対して何ができるか(=できないことは何か)を把握し、できることだけをする、
ということです。
一般人の大人にとっては、これがまず大事で、何よりも大事です。
ですから、みなさまももし、「家出少女」を見かけたら
セックスをする前に、ぜひできることをしてみてください。
なお末尾に、家出している未成年者に関して相談できそうな場所一覧を載せてみます。
私が詳しくないので、ほんの少ししかありません。
情報・要望をお寄せいただければ、(タイミングにもよりますが)加筆・更新するかもしれません。
おわり。
以上、全文無料でした。
※100円の支援をいただけると、「缶コーヒーの1杯くらいおごってやってもいいよ」と思っていただけたんだな、と感じて喜びます。
※2300円の支援をいただけると、この記事を作成する時間分、子どもを安全な環境に預けるのに必要な保育料程度のカンパになります。
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相談先一覧
(以下更新していく可能性があります)
189 (児童相談所全国共通ダイヤル)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/gyakutai/
なお、「音声案内の時間が長すぎる」問題については、改善された模様です。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000117813.html
子どもの人権110番(東京弁護士会)
03-3503-0110
http://www.toben.or.jp/bengoshi/madoguchi/children.html
『よりそいホットライン』
0120-279-338
http://279338.jp/yorisoi/
24時間無料で、どんな人からのどんな相談でも、一緒に解決方法を探してくれます。セクシュアルマイノリティからの相談にも強みがある、ようです。
『colabo』
https://www.colabo-official.net/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E6%A1%88%E5%86%85/
緊急時の仮眠・宿泊施設があるそうです。
SNSでの相談がよいのかな……?
『BONDプロジェクト』
http://bondproject.jp/index.html
水曜は深夜でも相談電話がつながるようです。
弁護士、警察、支援機関などを通じてシェルターへの案内もしてもらえるよう。
そうした専門家への相談を前提としない相談にのって、「じゃあどうしようか」というところも一緒に考えてくれるそうです。
『女性センター』
DVなどの被害にあっている女性の相談にのってくれます。
内閣が作っている、地区ごとの相談ページ一覧です。
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/06.html
相談電話は、
かけるだけかけてみて、「あ、いやだな」と思うことがあれば、そこで切ってしまってかまいません。
東京弁護士会のところしかり、189しかり。
気軽にかけて、気に食わなかったら、ガチャンで終了。
それでいいのです。
(大事なことなので2度書いてみました)
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