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ブリオナ テイラー殺害

9/11 The Daily “The Killing of Breonna Taylor Part 2”

3/12, 前夜に夜勤をこなしたブリオナ(26)はその日BFのケニー ウォルカーと過ごした。

(Part 1 まとめ)ケニーとブリオナは大学時代から長年くっついたり離れたりしていたカップルで、ブリオナにはケニーと付き合っていない時に会っていた他の彼氏がいた。ホームシックで大学をドロップアウトした時、初めての救急隊員の仕事がキツくて1年で辞めてしまった時、彼女が人生で落ち込んだ時間を過ごす時。「早く結婚して早く落ち着こう」と言うケニーと離れ、自分の人生が落ち込んだ時に会っていたのは、ジャマーカス グローバー。薬物犯罪で何度も投獄されている難あり物件。ブリオナの家族、友達も皆彼の事が嫌いだった。

2020年1月初旬、薬物犯罪で逮捕されたジャマーカスの保釈後、警察は彼の家の見張りを続けた。ルイビル市警が新たに取り入れた犯罪摘発方で、犯罪発生頻度の高い場所を局地的に断定して、そこを見張るのだ。そこでブリオナの車が良く彼の家に来る事が分かった。そしてブリオナのアパートを見張れば、ジャマーカスが何度も来ている。二人が付き合っている事が警察に把握された。しかし、警察は二月以降のブリオナの人生の転機には気付いていなかった。

ブリオナは停滞していた自分のキャリアをまた見つめ直し、救急隊員の仕事を掛け持ちで2つの病院のERで始めた。ジャマーカスは色々あって結局二月半ばに別れた。ブリオナはケニーの元に戻ってきた。そして今回は子供の名前を一緒に考えるような真剣な付き合いになった。彼女の人生がまた上向きに戻って来ていた。

ブリオナが生まれた時、母は16歳。父はブリオナが6歳の時から投獄されっぱなし。それでもブリオナは母親によれば「とてもいい子だった。手のかからない子。他の子の面倒もよく見た。」。友達から好かれ、医学に興味があり、おばあちゃんの糖尿病のインスリンの注射に興味津々だった。家族で高校卒業したのはブリオナが最初。そんな過酷な生まれだ。

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3/12、ステーキレストランでデートして、ブリオナの家に戻った。いつもだったら同居している妹と、時々泊まりに来るGoddaughterがいるので、ケニーの家に行くのだが、その日はたまたま妹もGoddaughterもいない日だったので、彼女の家に行ったわけだ。UNOで遊び映画を見て、クッキーを焼き、アイスクリームと一緒に食べた。そしてうたた寝を始めたので、二人でベッドに移った。

それと同時に彼等が戻ってきた10時頃から警察は外で見張りを続けていたのだ。

難あり彼氏のグローバーは今でも違法薬物売買のシンジケートを運営していた。彼の出入りしていたネットワーク内4件の家宅と共に、このブリオナのアパートもその日の捜査のリストに入っていた。警察はブリオナは既にグローバーと別れていた事を知らなかったし、ブリオナはこのアパートで一人暮らしをしていると思っていた(いつもだったらいたはずの妹やGoddaughterの事は知らなかった)。12:30,警官達は、アパートに近づく。外から、寝室でテレビの青い光(留守では無い事)を確認。

ここから、チームをリードした巡査長マディングリー、ケニー、近所の人などの証言と、報告書からのレポートを交えて。時を追う。

           12:40 警察がドアを叩く(マディングリー、ケニー証言)
   ブリオナが”who is it(どちらですか?)”と叫ぶ。応答なし(ケニー)
           ドアの音に反応は無し(マディングリー)
   
    
   警察がドアを叩く(2回目)(マディングリー、ケニー)
   ブリオナがありったけの声で”who is it!?”と叫ぶが再度応答なし(ケニー)

   警察がドアを叩いて(3回目)、「警察だ」と叫ぶ(マディングリー)
   またドアの音。ブリオナが”who is it”。無反応。恐ろしくなり、パニック状態で服を着る。(ケニー)
   ケニーはグローバーが来たのだと思った。だから銃を握った。所持許可もあり、射撃場以外では撃った事のない銃。二人は裸足で、寝室から出る。

   警察はかなりの力でドアを叩き、叩くたびに「警察だ!」と叫んでいた(マディングリー)
   7−8回それを繰り返したのに反応が無いので、強制侵入を決めた。

   他の警官がドアノブ、ドア自体、と警棒で叩き、3度目にドアを押し破る。そして表のドアから中に入ると少し奥の寝室のドアのこちら側に男女が見えた。そして、自分の目が暗闇に慣れ、男性が銃を持っている事に気付いた瞬間、撃たれた。(マディングリー)

   ここが重要。マディングリー巡査長によれば、ケニーは自分=警官を目視した後発砲した、との事。

   ケニーの証言は違う。寝室のドアから半歩身を乗り出して見ていると、表のドアは爆発でもしたように、吹っ飛んで開いた。それとほぼ同時に1発発砲した。(誰が入って来たかは見ていない)

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マディングリー:自分の太ももが撃たれたと知って、すぐその方向へ4発。その後2発撃った。その後に「撃たれた。動脈だ。」と仲間に告げた。

   彼が撃たれたのは運悪く大きな動脈で、数分で出血過多で死んでしまう可能性もあった。ここから現場はカオス。呼んだ救急車が団地の入り口を間違い、柵のある他の入り口で立ち往生、柵に突っ込んで突破しようとするができない。しょうがないので歩けない巡査長をボンネットに乗せてゆっくりとパトカーで救急車まで運んだ。

   この混乱の中、表の玄関で並んでいたもう一人の警察官ハンキンソン氏は、隊列を離れ、駐車場まで出て、ブリオナの寝室の窓、庭口のドア窓、両方ブラインドが下がっているにも関わらず駐車場からその窓とドアに発砲。彼の銃弾はブリオナの隣人(妊婦と5歳の娘)のアパートにも着弾。幸運にも彼女達には当たらなかった。


   ケニー:銃撃がいつ止まるのかも分からず、二人で床に伏せていた。恐ろしくてどうしていいのかも分からなかった。四つ這いで第2寝室に移ったころ銃撃は止まったが、ブリオナは倒れたまま出血して動かない。誰も助けにこないし、どうしたらいいのか分からなかった。12:46、ケニーは母親に電話をかける。母は「警察に連絡しなさい」と言う。12:47、ケニーは911をかける。

   「誰かが家に入ってきてガールフレンドが撃たれたんだ。彼女は26歳」
   「どこを撃たれていますか?」
   「分かんないよ、とにかく倒れてる。」
   「彼女話せますか?」
   「話せない、ブリー(ブリオナ)が、もう、、、助けてくれ!ブリー!助けて!助けて!」

   このケニーの911通報で、外の警察は中でブリオナが瀕死の状態だと初めて知る。
 
   12:47、ケニーはブリオナの母親に電話をする。その時初めて、外にいたのが警察だと気づく。「出てこい!警察だ!出てこい!」と叫ばれたからだ。

   ここからは隣人が記録した携帯の画像がある。

   ケニーは「無防備だ」と叫んで、手を後頭部に当てて、建物を出る。

   「後ろ向きで出ろ!後ろ向きで出ろ!」

   ケニーは言われる通りにした。泣きながら、「怖いんだ、怖いんだよ。」と訴える。
   
   ケニーが後ろ向きに歩く自分のすぐ後ろに恐ろしい警察犬が吠えまくっていた。そして手錠をかけられて、連れ去られた。それでおしまい。

   ケニーが外に出て初めて警察がアパートの中に進む。この時点で、ブリオナは息を引き取っていた。


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この結末に繋がった要因はいくつかに纏められる。

1。警察の情報不足:
ブリオナは一人暮らしで、犯罪人のジャマーカス(元彼)以外に彼氏はいない、と言う認識だった。

2。非通知捜査:
裁判所からは「警察」と名乗らず、いきなり侵入してよしとする捜査状、no knock warrantが出されていたが、警察内で、名乗る事に決めた。マディングリー巡査長の証言によればドアを叩いた時何度も「警察だ」と名乗ったと言うが、記者の隣人達(十余名)のインタビューで、警察の名乗りを聞いたのはただ一人。ブリオナのアパートの上の住人。彼ですら「一度しか言わなかった」と言う。他の隣人は全て「警察だ、なんて名乗って無かった。」と言う。

3。窓の外から撃ちまくったハンキンソン:
これを受けて六月に免職となっているが、その時の署の声明では「命をここまで軽く扱い、自ら、盲目に、10発撃った事は良心を疑うものだ」。

事後の動き。

1。情報公開:
この様な事件があった時に、大抵の場合警察署から公開されるべきベーシックな情報が全く出てこなかった。検視解剖結果、ボディーカメラ、そして現場にいたマディングリー巡査長以外の警察官の証言などが、未だ発表されていない(事件は三月中旬)

2。本当にブリオナはジャマーカスと手切れていたか:
事件後の調査で、事件前、ジャマーカスが獄中からかけた数人の他のGF,友人との会話で「ブリオナの所に$14K(140万円)隠してあるからそれを保釈金に使ってくれ」と言っている事が分かった。それは証明されてないが、それが真実だったとしても、ブリオナが射殺されていい理由にはならない。

3。プロテスト(成功要求)
ブリオナの死に正義を求めるプロテストは止まずに続いた。このプロテストは実際に変化をもたらした。ルイビル市警署長は辞任に追い込まれ、黒人女性警官が役職についた。市議会は「ブリオナ法」を可決。警察が「警察だ」とのアナウンス無しで侵入捜索できるno knock warrantの発行を禁止する法。このブリオナ法をケンタッキー州に留めず、全国に、と言う運動も起こっている。

4。プロテスト(不成功要求):
プロテストの要求の根幹は「3人の警察官の逮捕・殺人罪起訴・投獄」であるのだがそれは実現していない。
●ケニーの発砲が最初だった事。州法によれば市民が侵入者に対して発砲する事は合法。同時に、警察官が相手からの発砲を受けて応射するのも合法。故にマディングリー巡査長とその隣にいた警察官の起訴は非常に困難。
●窓の外から闇雲に撃ったハンキンソン。彼の行動が警察としての規律を破っている事、犯罪的である事は誰もが認める所。しかし証拠解析で、ブリオナに当たった銃弾が彼のもので無かったとしたら、彼を殺人罪で起訴するのもまた難しいだろう、との事。

余談ですが、Democracy Now!の報道によるとこのハンキンソンと言う警察官は、制服のままバーの外などで「家まで送りましょう」と女性を載せ、触ると言う市民へのセクハラを繰り返していました。さらにこの事件と同じ様な過剰発砲で苦情が寄せられていたにもかかわらず、署は特に大きな対応や懲罰を彼に与えていなかった。要はとんでも無いヤツっぽいです。こちらの報道では事後の警察の対応の不誠実さがよく分かります。


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この記者はテラバイトにも登る量の資料を検証し、ブリオナに何が起こったのか知ろうとした。記者の心に最後まで残ったのは、ブリオナが作っていたスクラップブックの中の彼女の言葉。高校の卒業式。

「留年せずにちゃんと卒業する事は本当に大切な事だった。だって、私の家族でこれができたの、私が初めてだもの。
お母さんは現役で卒業できなかったから、私がそれをする事が彼女にとっても大事だって知ってた。
家族親戚全員に、これからの世代の為にいいお手本になる事を期待されてた。責任重大だと思った。
大きい期待に絶対応えたいと思った。どんなに難しくても。
この家系の、非教育の歴史を断ち切る人間になるんだ。やっと、この家族に変化をもたらす人に。
後からくる若い世代のお手本になり、笑顔で私を見つめる彼らに”あなたも頑張ったわね!”と言う人に。
その人に、なるんだ。

ブリオナ シャクイル テイラー」

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