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主婦ポリ2:民主勝利への道2-草の根運動のススメ~立ち上がる女性達

どもー。今回は前回に引き続きJon Favreauという政治ライター(元オバマ大統領のスピーチライター)のPodcast, The Wildernes Season2を教材にします。Chapter 2: Northeast - 草の根運動のススメ~立ち上がる女性達。じゃ、早速行ってみましょう!

アンジェラの不安

周りはトランプの札ばかり建ってた。”有名だからさ、女なんて股ぐら掴んでもいいんだよ"と言ったとき、さすがにXXさんちは4人娘だから、下げるだろう、と思った。下がらなかった。どんどん増えていった。

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富豪トランプサイン 画像元:https://www.columbian.com

ペンシルバニア州、ピッツバーグのWestmoreland地区に住むAngela Aldous。

就任式は見ていられなかった。翌日のWoman's Marchにも新生児がいたから行けなかったし、大体、そんな事やって何かが変わるのかな、、、と懐疑的になっていた。

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Woman's March 2016  画像元https://www.nbcnews.com

しかしAngelaはこの懐疑心から数ヶ月後に抜け出して、Voice Of Westmorelandと言う草の根運動団体を起こした。

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Angela Aldou(左端)画像元https://twitter.com

2020年。民主党の勝利はこのAngelaのような人達から生まれる。ボランティアや活動家、2016年トランプ勝利のショックから、自ら「市民の苦役」に身を投じた人達が大勢いた。そしてその多くが女性だった。

ペンシルバニアでは2014年から州議員は男性のみ。そんな場所で8人の女性が出馬し、4人が当選した。

2020年、大統領選挙人270人(米国選挙人制度の解説は主婦ポリ1で解説しましたのでそちらをどうぞ)と上院の過半数51席の獲得の道は今回語る東北部からだ。ペンシルバニアは奪還の可能性の高い州だし、メイン州では共和党上院議員スーザン コリンズを倒さねばならない。ニューハンプシャーでは民主党上院議員ジェネ シャヒーンの議席を守る。

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メイン州上院議員コリンズ氏 画像元https://ja.wikipedia.org/

これらの運動を今取り仕切っているのが女性達だ。

女性達の隆起

ハーバード大学、社会/政治学者のシーダ スコッチポルは言う。

私たち社会政治学者が「政治機会構造(political opportunity structure)(*1)」と呼ぶものが2016と2018の間に広まりました。活動家たちが、民主党本部の全国区の戦略にこだわらず、地元の州議員選など地域に根ざした活動を始めたのです。2008年、オバマに選挙を勝たれてしまった後に共和党側が行ったティーパーティー運動の広がり方に似ています。2016年には民主党が候補を立てる事も考えなかったような地域で、前代未聞の数のボランティアや候補者が立ち上がり、ブルーウエーブのきっかけになったのです。それは女性が引っ張っていました。

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スコッチポル氏 画像元https://ja.wikipedia.org/

[*1: 流石ハーバードの教授です。スコッチポルなんてかわいい名前なのに難しい言葉で私の勉強欲を根こそぎもっていきます。何だよ社会機会構造ってよー、、、。ググるといきなり論文とかに飛ぶので更に「ムーリー」となります。

wikiで読んだ限り、社会運動やムーブメントを成功させる鍵は、その時代の政治のあり方にある。そして例えば政治上の多様化が進んでいるとか、エリート層に分断があるとか、そういう社会運動に有利な構造が2016−2018の間にできてきた。と言う事。]

NY Magazineライター、レベッカ トライスター。

60年代から民主党の歩兵ー現場のボランティア達は黒人女性でした。白人女性の多数派は共和党。しかし2016のヒラリークリントンの敗戦で多くの女性が目覚め変化を遂げた。差別なんて過去のものと言う認識がありますね。「奴隷制、もう解決した。人種差別、もう直ってる。女性だって今はもう投票権もあるし。差別はないでしょ。」そう言うアメリカの”良い歴”を信じている限り、現在の社会に対して「これではまずい」と言う危機感は生まれません。「トランプ?当選する訳ないよ、このアメリカで。」と思っていた。でも、さあそれが間違っていた、となった時、女性達は変身しました。中産階級在郊外の白人女性達です。「実ずっとは民主の考えだったんだけど、黙ってた。でももう黙らない。」といって立ち上がり、政治活動に参加し、仲間や、自分のアイデンティティを獲得していった。

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レベッカ トライスター 画像元https://www.phillymag.com/

眠れる巨人だった女性の政治力が目覚め、咆哮と共に共和党に突撃したんです。女性投票者の81%が「政治のステージにもっと女性を上げるべき」と思っています。男性性の毒が政治でぶちまけられる様を見せつけられた。女性に暴行して何とも思わない大統領。男性議員に制限される女性の妊娠中絶の権利(*2)。深刻な性加害の罪をとがめられたのに、逆切れ戦法でわめき散らし結局生涯職である最高判事になったカブナー氏。女性達はもう飽き飽きしているのです。 --- ヘザー マギー(リベラルシンクタンクDemosの元プレジデント)


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ヘザー マギー 画像元https://www.demos.org/


元教師、元空軍で起業家のクリッシー フラハン

2016に一番有能だと思っていたクリントンが負け、一番無能だと思っていたトランプが勝ったとき、私にできる事はなにか?と考えた。出馬する事ぐらい何でも無いと思った。最悪どうなる?選挙に負けるってだけでしょ?

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クリッシー フラハン 画像元https://en.wikipedia.org/

で、彼女は負けなかった。17ptの差で下院議員席を共和党から勝ち取った。史上7人しかいないペンシルバニア州の女性議員に名を連ねた。彼女の選挙区では史上初の女性議員だ。

Color of ChangeMove Onなどいくつかの社会運動団体の役員ですが、女性が増えています。郊外の白人女性、郊外の黒人女性、田舎住まいの女性、若い女性、ラテン系の女性、アジア系の女性、彼女達が団体の活動基盤を作っています。--- Heather Mcghee
(現政権への)反対勢力の75−90%は女性。彼女達は図書館員だったり教師、元教師、准教授、医療機関勤務、NPOリーダー、小商いのオーナーだったりします。彼女達はアメリカが扉を閉ざし、狭量、非情に傾いている事を憂いている。--- スコッチポル
私のチームはほぼ女性です。仕事開けの午後、週末、朝、少しでも時間があれば有権者を訪問し、ミーティングをして勉強した。そうやって、史上最多の女性候補が出馬、そして勝利したんです。--- フラハン下院議員

注釈:女性の選ぶ権利

[*2:米国では宗教上、胎児の人権を重んじ、妊娠中絶=殺人と言う事でそれを禁止してほしい信心深い人が相当数います。じゃあ妊娠何ヶ月で胎児は人間と見なされるのか、妊婦の人権はどうなるのか、激しい議論が繰り返されています。妊娠中絶反対の主張をpro-lifeと呼び、母親の選ぶ権利を守る主張をpro-choiceと呼びます。今のところ73年に最高裁判所が州が法で女性の人工妊娠中絶を規制する事は違憲だ、中絶は女性本人の意思に任せる、と言う判決を出しており、これをロー ヴィー ウェード(ロー対ウェード事件、Roe vs. Wade)と呼びます。そして保守派の共和党は教会とのパイプが太いので、pro-lifeとなり、共和党優勢の議会/トランプ政権下で今でも特に南部で州ごとに女性の中絶を制限する法案が次々可決されています。逆行しているんです。レイプで妊娠しても中絶したら犯罪、とか。たまったもんじゃないです。もちろんこれはローウ ヴィー ウェードの前例から違憲ですが、州はこれを可決する権利があり、それを人権団体が訴え、司法の場で争って行く事になります。

そこでまた出てくるのがこいつ、カブナー

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ブレット カバナー 画像元https://ja.wikipedia.org/

穏健保守派だったアンソニー ケネディー氏の代わりに最高裁判事になっちゃった超右のミソジニー(女卑)野郎。学生時代に数々の女性の同級生に性的嫌がらせやレイプ未遂などやらかしていて、それが就任の過程で明るみに出て、公聴会になった。名乗り出た女性は心理学者クリスティン ブラジー フォード博士。


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画像元https://ja.wikipedia.org/

殺人予告などの嫌がらせまで受けながら、「アメリカ国民の義務だ」とカブナー氏の学生時代の暴行を告白した。最高裁判事は一度なってしまえば、任期は自分が引退するか、亡くなるか、まで。公聴会ではこのようなトラウマがどう言う障害を生み出すのかなど心理学博士ならではの淡々とした語り口で自身の辛い過去を振り返った。一方カブナーは「オリャーやってねえんだ!これは民主党の陰謀だ!」と酔っぱらった少年野球のコーチよろしく、くだをまいて、「ってかこいつ、性加害っていうか、ここまで”はい!共和党寄りです!”って宣言しちゃって、司法の長がつとまんの?三権分立どうなった?精神も弱いし。キレてんじゃん、普通に。だめじゃね?」と言われたのですが、結局共和党が議会を牛耳っていたので採用されてしまいました。あの時は国中があの公聴会を見ていました。公聴会でのカブナーの様子はマットデーモンがもの凄くうまく真似しているのでこちらをどうぞ。私は実際の方も見ましたが大体あってます。

で、このカブナーが「ロー ヴィー ウェードをひっくり返す!」って言ってます。]


アンジェラの戦い

トランプ就任式翌日のWoman's Marchを新生児を抱えてテレビで見ていたアンジェラは懐疑心に包まれていた。「だからなに?」「こんな事やっても何も変わらないよ。」

一週間後。それは劇的に変わった。

家の近くの市庁舎の前を通ったんです。雪が降っていて、トランプがイスラム教の国数国からの渡航者を制限する政策を打ち出した時だった。市庁舎の前に、6名ほど、片隅で「私たちは移民を支持します」「イスラムの人達を支持します」とプラカードを持ってプロテストしていたんです。車を止めて泣きました。「ここにも、このトランプランドにも、私と同じように思っている人達がいた。」赤ん坊を抱えて飛び出して「信じられない!あなた達いったい誰なの?コーヒーいる?」って叫んだ。面白いでしょ?Woman's Marchにいた数百万の人達を見ても湧かなかった希望を、近所の6人が持たせてくれた。この保守の町で、寒空の中、サインをもって歩いているたった6人が。ここで出会った彼らと、Voice Of Westmorelandを立ち上げたの。

アンジェラはペンシルバニアの前はウィスコンシンに住んでいた。看護婦として働いていたが、MS(多発性硬化症)が発覚し、杖を使わなければならず、視覚も減退していった。その頃共和党知事のスコット ウォルカーは看護婦組合を攻撃、予算を削る方針だった。夫はまだ学生だったし、組合の援助が無ければ薬代だって賄えない。反対運動に参加した。

毎日ラリーしたの。仕事の前に。本当に大勢の人達がそこにはいた。声を上げ、団結し、希望に満ちていた。MSNBC(全国区のニュースチャンネル)が取材に来た。もう大丈夫、これで行ける、と思った。

大丈夫じゃなかった。スコット ウォルカーを止める事はできなかった。


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スコット ウォルカー 画像元https://ja.wikipedia.org/

コーク兄弟(*3)が、大量の資金を投入して、組合員を悪者にするキャンペーンを行っていた。友達もたくさん失くした。そんな力の前には私たち一般市民にできることなんてないと思った。今にして思えば、あの運動の敗因は社会全体が同じ気持ち、同じ意見だと思っていた所。それは、私たちがラリーに参加してる既に同じ主張の人としか話をしていなかったからなんです。

注釈:Koch Brothers

[*3 Koch Brothers。これでコーク兄弟と米英読みします。

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コーク兄弟 画像元https://www.businessinsider.com/

この人たちの詳細はこの東洋経済の記事に書いてあります。石油系の大富豪で、政治ロビイスト、学術機関からメディアまでありとあらゆるところに金をばらまいて、アメリカ中を牛耳る悪の総裁みたいな兄弟。今は片方他界してます。カンザス産まれオイルマネー育ち、悪い奴は大体友達。

ただ、医療機関や、アメリカンバレーシアターやリンカーンセンターの文化系組織にも多額の寄付をしていて、各方面で縛りを効かせます。アメリカ人なら誰でも知っている兄弟です。]

アンジェラの気づき

さて、その失敗ふまえて今回ペンシルニアで彼女はどうしたのか。

毎週勉強会を開いて、ハーバード教授の講義を聞きました。どうやって組織を作り、ムーブメントを先導して一般市民に政治活動の力を生み出すのか。そこで分かったんです。歴史の授業で学ぶ過去の社会運動、簡単に書かれていますが、その裏には膨大な労力と計画が費やされているのです。ローザ パークスがバスの後ろに動かなかった。ただそれだけで市民運動が爆発した、みたいなイメージですが、違います。大勢の活動家の綿密な計画があって実現しているのです。お金を投入してテレビの宣伝時間を買ってるだけではだめなんです。

運動を成功させるには、プロテストに参加して誰かに声を聞いてもらうのを待っているだけではだめだと彼女は悟った。賛同してくれそうな人達個人個人に合った戦略を練り、対話をしないと、と。

例えば団体名だって、重要です。レジスタンス、revoltなどの言葉は疎外感があります。対話の相手が現政権の支持者だったらそこでアウトになってしまう。そこで私たちは自分たちをVoice Of Westmoreland、と名付けた。この地域の地元の声が中央に届いてないと言う感覚は誰もが共有するところだから。私たちは大体のケースで、健康保険の事をきっかけに話を始めます。誰もが、今の状況に大きな不満があり、未来を憂いている案件です。(*4)
初めての個人宅訪問2件目、ドアを叩いて自己紹介をしたら「あ、あなたたちとは話したくない。前回もトランプに入れたし、次回も気持ちは変わらない」と言われました。私は「それでいいんです。ただお話を聞きたいと思って伺いました。私、怖いんです。MSを患っています。薬代だけで月に8千ドル(80万くらい)かかるんです。組合の保険が効かなくなるとどうなるか分かりません。」と話し始めました。そうしたら彼は話を聞いてくれて、彼も、今の医療費はどうにかしている、政治家達は自分たちの事を全く考ず、保険会社の方ばかりに向いているように感じる、と話してくれました。15分くらい会話ができたんです。最後に「あなたの活動、応援します。」と言ってくれた。思想の上で右と左の分断が激しく、その壁は超えられないと言われています。しかし実際にはその分断は共和/民主の思想分断では無く、一般市民/一部の権力者達の階級分断ではないか、と感じています。

注釈:米国国民健康保険事情

[*4: 在米の方は悲しいほどご存知でしょう。アメリカの健康保険は半端ないです。っぱねぇっす。救急車など呼べば10万円とか普通にとられます。だからみんなタクシー呼びます。

え?オバマケアで国民皆保険、できたんじゃないの?と思われるかもしれません。オバマケア(Affordable Care Act、ACAとも呼ばれます)は、現存の私企業保険を維持、強制で個人が自費でプランを獲得するのを個人収入に合わせて政府が控除するよ、めっちゃ貧乏な人は国がなんとかするよ、って感じ。国運営の保険じゃ無いんです。全く何も無いところから国民皆保険的な枠組みを作ったと言う意味でめちゃくちゃ評価されていますが、オバマさん本人も「完璧ではなかった」と言っています。私の実体験では例えばオバマケアのせいで就職先の会社がより被保険者の負担の多い保険会社に鞍替えしたりして、割食った人が中産階級にある程度いるようです。我が家はオバマケア後に旦那がちゃんとした企業に就職したので比べようが無いのですが、前からいた人達は「月々の払いが高くなった」「保険効かない事が多くなった」と文句言っていました。もちろん無保険状態から解放されてオバマケアで命を救われた、という人もいます。3−4万人。しかし2700万人は結局無保険で、トランプに変わってからはその数は4000万人に増加。更に現在4000万人が「使えない」形だけの保険プラン。計8000万人が医療保険に関して非常に厳しい状況にある、という事です。

保険に入っているのに月$400とか$800とかの月額保険料(プリミアム、と呼ばれます)を払い、デダクタブルという「年でこの額までは実費でね」という訳の分からない制度(プランによって違ってもちろん低ければ低いほどいい)があり、眼科と歯科は普通の保険ではカバーされず、上乗せで買わないといけないとか、国家試験のような複雑なシステムになっており、保険を持っていても、医療費が払えず自己破産申告に追いやられるケースが相次いでいるとタイムズポッドで言ってました。現状ACAは日本や欧州で使われてる皆保険とは少し様子が違います。

国運営の国民皆保険は誰しもが望むものですが、国民全員をその国運営の保険に入れる、Medicare-for-allやSingle-Payerと呼ばれる方式(日本はこれ)と、今の私企業保険で満足している人はそれを継続できて、入りたい人だけ国運営に入れる方式(public-optionとか呼ばれてます)で、民主党大統領候補によって掲げている公約が違います。Medicare-for-allの「Medicare」は65歳以上の高齢者用の現存する国運営の健康保険制度。かなり巧く回っていて、これを全員に拡張しましょう、と言う事。

どっちでもいいような気がしますが、Medicare-for-allはそれこそ今ウホウホ言ってる保険会社を一掃してしまうプランなので、利権などのからみで、大体実行不可能なんじゃないか、という不安。public-optionだと、今もMedicareで発生している国営/私営健康保険と医療機関を統合して運営するためのお役所仕事的なものの支出、これが年間$500bil(50兆円くらい)かかる。]

アンジェラの勝利

2017、10年以上勤続していた共和党下院議員がスキャンダルで辞職。アンジェラ達は民主党の候補元海兵隊、元検事のコーナー ラムを支援した。トランプが20ポイントの大差で勝った地域だ。

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Conor Lamb 画像元https://en.wikipedia.org/

ここで勝てればブルーウェーブの始まりになると思った。がむしゃらに活動した。毎週末個人宅訪問、電話を繰り返した。3歳の娘を連れて訪問した。候補の名前がラムだから羊のコスチュームを着せて。娘が家で遊ぶとき、ティーパーティーごっこでもなく、プリンセスごっこでもなく、個人宅訪問ごっこをやるようになっていた(*5)。そして勝ったのです。目標より4%も多い得票で!

[*5: 「はい、3歳の頃から政治活動していました。」ってこの子はどんな立派な大人になるんでしょうか。うちの娘3歳の頃は紫色がいいと友達とおもちゃの取り合いばかりしていました。]

選挙はこうやって勝つんです。簡単じゃない。多くの人間と労力を必要としする。最適な戦略や、必ずしも同じ考えでない人達との長い会話が不可欠。でも、勝てる。トランプの名前すら出さなくていい。生活のこと、家族の事、何を恐れるかとか、どんな希望があるか。そんな事を、とにかく、聞いて、話す。

2018はそうだった。2020はどうだろう?

2020で民主に有利な点は民主の支持層である若い有権者、非白人の有権者が増える事。共和党に有利な点は、、、、なんと3つある。

1。2018投票にいかなかった中卒、高卒の白人有権者が2020には行く。彼らは主に共和支持でしかも東北激戦地(ニューハンプシャー、メイン、ペンシルバニア)に多数いる。

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2。トランプ以外興味の無いトランプファンが2020には投票に来る。

3。2016にトランプに入れて、それが暴走しないように2018には民主に入れたけど、2020にはまたトランプに入れる、って言ってる有権者が少なからずいる。

どう言う事かというと、民主の候補者はどんなタイプの有権者も無視できない、ってことだ。若者、非白人、新規、大卒白人、そして中高卒の白人もだ。

多くの有権者は候補者が「誰を嫌うか」では無く「何を目指すか」を語って欲しいと思っていると感じます。罵り合いに溢れ、仲良しグループ合戦のような今の政治にみんな飽き飽きしているのです。---フラハン下院議員

フィラデルフィア フォーカス グループ

有権者の声を聞くために、フィラデルフィアでフォーカスグループ(10−20人位で集まって意見を聞く会)を開いた。今回集まってもらったのはタイムズ紙などでよく語られるショッキングな「トランプ大好き人間」ではない。何となく民主だけど、まだどちらか決めていない、と言う”gettable”な人達だ。2016か2018に民主に入れていて、2020にも投票に行くとは決めているが誰とは決めていず、週に政治ニュースは2−3回しか見ない。

言い換えれば、民主候補者が絶対に見逃せない有権者達である。

「前回投票した理由は?」

トランプを当選させたく無かった。

「2016に不投票で、2018に投票した人、その理由は?」

ショックだったから。

「今の政治について何を思う?」

世界中の笑い者よ。恥ずかしい。
あんな大統領に代表される政府全体に敬意を失くした。
口が悪く、くだらないツイッター喧嘩ばかりやってる大統領に飽き飽き。モラルも何も無い。

「2020年投票に行くつもりですか?」

[全員挙手]

「トランプに入れようかと考えてる人はいますか?」

誰にも同意してもらえないと思うけど、私前回トランプに入れたの。間違いだったと思ってるけど。私はいつもは民主党何です。女権だって、LGBTQ権利だって大事に思ってる。ただ、経済は続けて良いですよね。株が上がってます。

トランプを考えるかも知れない、という人が一人いただけで、トランプの不人気は凄い。しかし、同時に彼らは民主にも満足していない。民主どころか、政治全体を信用していない。

議員達が色々な決議をする時、それが私たち有権者の生活に直接関わってくる、という事実をあまり考慮していないように見えます。簡単に決めているように見える。
政治って言うのは票取りのためにやるもので、人民のためにやるものじゃない、って言われてるみたい。
意見の違う人と政治の話すると喧嘩になるし、友達減るから政治の話はあんまりしたくない。
しっかり情報を得ている気がしない。俺の1票が何なんだよ、って気持ちもある。

「信頼置けると感じるニュースソースは?」

全体的に情報が偏り過ぎ。CNNだって信用できない。私は海外のニュース番組でアメリカの事を見るのが好き。

「Facebookはニュースとしてどう?」

ある程度はいいんじゃない?
(最近は色々言われてるから)俺はもうわかんねーな。

「民主党についてどう思いますか?」

大統領候補者が多すぎる。
バラバラ。統率とれてない。

「何を変えて欲しいと思いますか?」

健康保険をどうにかしてほしい。
教育制度を改善してほしい。
ロビイスト(政治の私企業への癒着)を廃止してほしい。

「民主支持と言う方。理由は?」

企業や権力者でなく、一般の国民のための党と感じるから。

「次も民主に絶対に入れる、という方は?」

いやあ、もっとリサーチしないと。

トランプは「考慮する」人が一人いただけだったが、同時に民主に絶対入れる、と言う人は一人もいなかった。

「オバマ氏だったらもう一度入れる、という人はいますか」

[全員挙手]
え?それありなの?(一同笑)

「民主党に望む事は?」

誠実さ。
争点を絞ってほしい。今はありすぎ。
政治家の口の悪い罵り合いをやめてほしい。政治の事に飽き飽き。
分からないんです。興味が無い訳では無いけど、自閉症の息子がいて、毎日忙しくて、、。自分が理解不足だという事も自覚してるけど本当に時間がない。

この最後の意見がフォーカスグループを去った後も頭に残った。みんな忙しいんだ。仕事、子育て、どのニュースを見ていいのかも分からないし、トランプは嫌いだけど、政治ニュースを見れば低レベルの言い合いばかり。民主はこのような有権者の政治全体への不信感や嫌悪感をその根源である共和党/トランプに結びつけて、しっかりとそれを超えた政治的目標を提示しなければならない。

メイン州の戦い

前オバマ キャンペーン マネージャーのDavid Plouffeは、今回の選挙でメイン州で共和上院議員のスーザン コリンズを打破する事は非情に重要だと語っている。民主党メイン州支部長のリサ ロバーツに話を聞いてみよう。

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 Lisa Roberts 画像元http://www.dailybulldog.com

2020に民主が上院過半数を勝ち取るために、メインの戦いは避けられない道です。妥当すべき共和党コリンズ上院議員は、1996に初当選。2014年には70%もの得票で再選しています。という事は相当数の民主党支持者も彼女に投票した、という事です。ただ、今の彼女はその頃の彼女とは違います。「言う事とやる事が一致しない」と言われています。彼女はずっと自分はpro-choiceだと公言していたのに、カブナー最高裁判事に承認票を入れていますし、トランプが次々ノミネートするpro-life系の連邦判事にも承認票を入れています。その数32回。

リサのチームは既に2018に大きい成功をもたらしている。メイン初の女性知事ジャネット ミルズ、歴史的に共和党支持の第2地区からの下院議員ジャレッド ゴールデンらの当選や、他選挙での州政治の民主掌握に深く関わった。

2020年はもっと大きく展開しないといけません。独自のアプリを使って、過疎地との連携をとっています。遠すぎて実際に人を送れない場所でも有権者に顔見せができて、話を聞く事ができます。地理的な分断を埋めようとしています。選挙直前にあわあわと動くのではなく、年中じっくりと関係を深め、対話を行い、戦略を練っています。

早くに動き、隅々まで動き、誰とでも対話をする。選挙の数週間前に候補者引っさげて訪問するのでなく、一年中、政治案件の話をする。

生身の人間の力

私の団体の目的は長く続く政治力を身につける事です。セクシーな活動ではありません。華やかではない。でも有権者がいるそこに寄り添ってともに立つ事がどんなに重要か身を以て知りました。だから選挙の年ではないこの11月に、個人宅訪問をもう初めています。---アンジェラ アルダス

アンジェラとチームはハードコアトランプ支持者で、家の前に巨大なトランプの写真を飾っている家に訪問していた。

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ハードコアトランプ支持者の家 画像元https://www.nydailynews.com/

こういうものが家にあるからと言って、対話ができない訳じゃありません。---アンジェラ
(こんこんこん)こんにちわ。私の名前はアマンダです。Voice of Westmorelandという草の根運動団体のボランティア員です。この地域の方々の声を州の中央やワシントンに届ける運動をしています。30秒でいいんでお時間ありますか、、、、---ボランティア員
「私は民主党員です」「民主党こそあなたが必要とする政党です」と話を始めない限り、びっくりするほどたくさんの人が心を開いて話してくれます。自分はどういう人間で、世界の何に恐れている、と自分の弱いところもちゃんとみせる。私たちがFOXニュース(共和党おかかえニュース番組)で見せられている「悪魔のような民主党員」では無い事を分かってもらう。---アンジェラ

私の元ボス、オバマ元大統領もいつも言ったのを思い出す。「タウンホールミーティングなど地元の集まりに出向いていって顔を見せる事が大事だ。テレビでみるオバマというキャラでは無く、生身の人間なんだと見せる。一対一の会話をすると、私たちは実は同じものを目指しているんだという事を分かってもらえる。」

政治家に自分たちの方を向いていて欲しい。人民のための大統領。みんなそれを欲している。みんな不安なんです。自分の生活はどうなってしまうんだろう、と。それを団結の糊として使うんです。トランプの当選は一夜で起こった事ではありません。白人達が何となく安心して、関心がなくなっていた。それが原因です。でも今はみんなちゃんと注目してる。勇気を出して一歩踏み出すんです。一年に一度、大きなプロテストに参加するだけじゃない。夜の社会風刺番組を見て政治の酷さを笑い飛ばし憂さ晴らしするだけじゃない。外に出れば、一歩踏み出せば、無限の可能性が広がっています。---アンジェラ アルダス


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