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テキサス堕胎禁止法と最高裁

公共ラジオのニュース・エンタメ番組 It's Been A MinuteにSlate紙(https://slate.com/)の米国最高裁専門記者、マーク・ジョセフ・スターン氏がゲストで先のテキサス堕胎禁止法に関する最高裁の最新の対応を解説していましたので抄訳。

テキサスの堕胎禁止法SB8。問題は「一般市民が堕胎をする母親、それを手伝う医療機関及び支援者を民事訴訟する事で法施行する」のでこれの法律に対して訴訟を起こす際「相手がいない」件。

一度最高裁審議案件となったが「これ最高裁の範疇じゃないっす」と審議せず、そのまま法として通ってしまった。

現在クリニック関係団体とDOJ(米国司法省)が「テキサス州裁判所判事と職員」を相手取り訴訟。この相手でいいのんか?と言う最高裁審議が先週行われた。

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これに対して最高裁は大きく三割れ

アリート(オート右翼)
トーマス(オート右翼セクハラおじさん)
ゴーサッチ(イケイケ右翼)

ブライヤー(リベラル)
ケイガン(リベラル)
ソトマイヨール(リベラル)

で残りの三人ロバーツ、カブナー、バレットはゴリ保守ではあるのだが、この「違憲の法施行を一般人にやらせる」裏技を許すなら、リベラル州で、今度はgun rights、銃保持の権利(保守)に対して一般人が施行できる禁止法ができてしまうって事よね?

と気付いている。

もう一点、このスターン氏がずっと言っている「最高裁の権威の出所はマジックでしかない」と言う点。

独自の連邦警察持ってる訳でもない、人民に選ばれた訳でもないこの機関の決定を皆が守るのは、「雰囲気」であると。

「最高裁は一般人の人気とか議会のピーチクパーチクとは無縁の学者的な元老院みたいな所よウフフ」

としてるけど、実は結構世論に左右される。一度は「最高裁の範疇じゃないっす」と投げ出したこのSB8テキサス州法を結局審議する事になったのもあり得ないマグニチュードのバックラッシュが世論と議会から湧き上がったからなのだと。

今6-3と余りにイデオロギー的に偏った最高裁で「何だよ結局政治のオモチャじゃねーか。なんでアイツらそんなに偉いんだよ?」と言う感覚が蔓延してきているのを判事達は恐れている。

アンドリュー・ジャクソンが最高裁の「先住民領地は不可侵」との審判を無視して先住民を殺しまくった前例もある。

その最高裁の威厳の崩壊を一番恐れてるのが判事長のロバーツ。

この

-リベラル州で逆張りされる懸念
-最高裁って何なん?と言われちゃう懸念

の2点でこの三人の判事がどう動くかは分からない、との事。

でもどっちにしろroe v wadeが直で問われるミシシッピの案件(roe v wadeは24週未満の堕胎を州法で禁止することの違憲性を確立した最高裁判断。過去50年、女性の自分の身体への権利を守ってきた。これを15週にせよとの裁判がいま最高裁まで登ってきている。)が迫ってきてるのでその結果によってはSB8なんてどうでも良くなる可能性あり。それは困る。

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