いちょうの黄色に負けている

葉っぱたちがくたびれた様子で道に臥している姿をよく見る季節になりましたね。

やれやれ、今年も紅葉し切りましたよ。これだけ色付けば十分でしょう。私はここら辺でお暇させてもらうよ。あらあら。ひらひら。ぱたり。

秋は1年の中で一番好きな季節だ。

湿度が低くて昼間は朗らかで夜は静かで食べ物が美味しい。「秋の味覚」なんて大それたものでなくとも、何でも美味しい。あと、外を歩いていると色んな匂いがするのも面白い。朝の冷気の匂いや太陽に照らされた落ち葉たちの匂い、絶対的な安心をもたらしてくれる毛布の匂い。

何だか気分がよい季節なので、読書もはかどってしまう。汗を抑える時間や花粉によるくしゃみをなだめる時間といった無駄な時間がないため、さくさく読めてしまう。素敵。

最近読んだ本について。

濱野ちひろ氏の『聖なるズー』を読んだ。開高健ノンフィクション賞受賞作品ということで気になっていた。やっと読むことができた。

読んでいる途中、そして読み終わった後、頭をぶん殴られ、両手で脳みそをつかまれて揺さぶられたような感覚になった。私が見ている、考えている世界なんてほんのぽっちりしかない。ほんのぽっちりとした世界の中で、やんややんや騒いでいるだけなんだ。ぽっちりの中に一滴水を垂らされただけなのに、こんなにも衝撃が走るのか。怖くも感じる。

気がつくと膝の上には儚い手触りと生き物特有の重みを感じる日常。私はこの生き物のことを「尊重」できているだろうか。この生き物にとって「尊重」されるとはどういうことなのだろう。

答えの出なさそうなことを、うとうとしながら考えてしまうようになった。




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