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空気がない。
風がない。
音がない。
聞くためのものがない。
暗闇に漂う僅かな声、振動、その発信源。
糸のように細いそれは動いていないから、辛うじて、わたしが落下していないことの証明。
しかし。しかしだ。
それが消えても、風がない。空気がない。
だから、落ちてはいない。落ちてはならない。
はるか遠くの空を見上げたいのに。
美しく誰のものでもないあの空にかかる雲。
蜘蛛の張り巡らせた糸のよう。
留まる人々とともに、目を開くごと増えていく。
それはわたしが落下していることの証明。
わたしは下を向いている。
その速度に気が付けないまま、でも目を閉じられないまま。
また夜が来る。
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