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まったく同じ意匠が他人により不正に出されているって、ご存知ですか?【中国編】

前回、日本の意匠不正出願事例を取り上げました。

それでは中国の状況はいかがでしょうか?
こんなこと、中国では起きてないでしょうか?

実は、こんなこと、中国では非常に当たり前のように、広範囲で起きています。
以下、1つの事例をあげますが、こんな事例腐るほどあると思います。

先ず、
これは、中国の登録意匠①になります。

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こんな感じの顔マッサージ機。
出願日:2016/06/03
登録日:2017/01/18
権利者:A社
A社は外国企業で、このスタイルの顔マッサージ機を世界初商品化した会社で、大元になります。
この会社は、中国で、2016年に意匠出願して登録されました。

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こんな感じで使うものです。

次に、この意匠をみましょう。
これは、中国の登録意匠②になります。

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こんな感じの顔マッサージ機。
出願日:2017/06/19
登録日:2017/12/22
権利者:B氏
B氏は、中国の個人で、大元に当たる外国企業の中国意匠出願より1年後に、大元の企業の製品とそっくりの写真で、中国で意匠を取りました。
中国では、意匠無審査登録制度なので、このように、既に存在するものでも、出したらそのまま登録になり得ます。

次に、こんな意匠もあります。
これは、中国の登録意匠③になります。

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こんな感じの顔マッサージ機。
出願日:2018/06/12
登録日:2018/11/06
権利者:C社

C社は中国の企業であり、大元に当たる外国企業のA社より2年後、そして最初の不正出願業者であるB氏より1年後に大元の企業の製品を設計図レベルに落として(多分、本当にこんなものを作ろうとしたと思う)、このように設計図を書いて、その設計図で中国に意匠を取りました。

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ここまでは、全く同じものです。ここで終わりではありません。

最後に、この意匠をみましょう。
これは、中国の登録意匠④になります。

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こんな感じの顔マッサージ機。
出願日:2019/04/29
登録日:2019/11/01
権利者:D社

D社は、中国の企業で、大元に当たる外国企業のA社より3年後、最初の不正出願業者であるB氏より2年後、そして、2番目の不正出願業者であるC社より1年後、意匠の類否判断の観点からすると、大元の企業の製品とは違うとも言えるレベルにまで改良した形で、中国に意匠を取りました。

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ここまで進化して来ると、大元の会社としても、権利行使が難しくなります。
そこで、このD社は、他にも、オリジナルデザインの意匠も出しているのでは?と思って、調べてみたら、やっぱり、下記のように、この顔マッサージ機のカテゴリで、かなり違った形の意匠を幾つか取っていました。

(その1)

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(その2)

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D社は、多分、これらの中国での意匠権を使って、原告になって、後から付いてくる模倣業者に対し権利行使するのでしょう。

まとめ

前回、中国での模倣品対策の話をしたことがあります。

・中国での模倣品対策って、商標権だけでは足りなく、意匠権の確保も必要
・スタイルを丸コピーする製品は益々少なくなっている
・中国で模倣品対策をするには、回避可能なデザインまでの確保が必要
・究極的には、特許権確保も必要

と言いました。

それに加え、今回、ここで言いたいのは、

例えば、中国進出してない日本の中小企業、もしくは、代理店経由で非常に消極的に中国に商品を売っている日本企業があったとします。

この日本企業は、中国で意匠権を取っていて、商品もぼつぼつと売っている状態で、中国での模倣品対策は一切やってない状態だとします。

その場合、中国で、何が起こっているかとすると、

御社の製品が中国で売れ始めた最初の1~2年間は、御社の製品と全く同じ形で中国で意匠を取った業者(A氏だとします)が、自分のその意匠権で中国で権利行使する可能性があります。

その後、2~3年経ったら、A氏に権利行使されてひどい目に会ったB社が、改良設計されたデザインで、中国で意匠権を取得します。

B社のデザインと言うのは、中国の消費者に合う流行りのデザインになっている可能性が高いです。

そして、今度B社が原告になって、模倣してくる中国のC社、D社、E社…に対し、権利行使をしまくっている状況。

これが、2021年現在の中国の現状です。

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