43.スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(一之倉聡)


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※スピンオフ
※42話の続き

完全自己満、創作なので苦手な方はご遠慮ください。誤字脱字あり。すみません。


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「あいつって、いっつもスカート短いよな。」
「ワイシャツも透けてるし。」

なんか、懐かしいなぁ…。と
山王にいた頃を思い出す会話を
生徒の横を通り過ぎながら聞く。

あの時はなんでも楽しかったしな。と
思い出しながら部活から帰る。
男子高生が会話する先に視線を向ける。

足が一瞬止まる。

また…目立ってる。

気づかれない様に男子生徒を睨みながら
その子の元に向かう。
いつも引き寄せられる。

「ミレイ。」

「わっ。」
急に話しかけられて驚いて振り向く。
いつもの目で俺を見る。

「一之倉。」
そう言って顔を見つめて隣に並んで歩き出す。
年頃の男子高生に、刺激的なその風貌を
隠せないかな。と
バックに何か入ってなかったかとあさる。

「どうしたの?」
バックからまだ着てないadidasのハーフジップジャケットを引っ張り出す。

何も言わずに上から羽織らせる。
「えっ。なに?」

何かと言われたら説明できないけど…。

「こないだ風邪引いたかなと思って。」と
雨に濡れていた時を思い出して言った。

そう言われてみたら、あの時も充分刺激的だったな。と心の中で呟きながら邪な考えを排除する。

「…ひいてないよ?」
そう言いながら不思議そうにしてるミレイを横目に「いいから着て帰って。」という。

俺は何してるんだろう。とため息をつく。
らしくない行動。

これって犯罪なのかな…?
こないだから、そう思い詰めては考え込んでいる。

「一之倉なんか、疲れてるね?」
「え?そんな事ないよ。」

正直最近眠れてない。
なぜかはよくわからない。
目の前の眩しくみえる閃光みたいな子が
原因かもしれないけど
あまりそれは考えない様にしてる。

「ミレイはなんか元気そうだね。」
「わ、わたし?」
そう言って、動揺する姿が可笑しい。
「あの、一之倉これ。」
ミレイがバックから何かを取り出そうとする。
なんだか焦っている。

そうこうしてる内に、手元に集中しすぎてつまづいた。

バックが手から落ちる。
「あぶな。」
転ぶミレイの体に手を回して腰を支える。

細いウエストに驚きながら、冷静を装って
「大丈夫?」と聞く。
顔が真っ赤になるのを見て
こっちが恥ずかしくなる。
「あり、がと」

こんな今時のツンツンした子なのになぁ。
そう思いながら手を離した。

「あっ。」そう言ってカバンを慌てて拾う。
しゃがんだまま、今にも泣き出しそうな顔。
「えっ、なに。どうしたの?」
思わず慌てる。

「ぐちゃぐちゃになっちゃった…。」
そう言って、可愛くラッピングされてたであろう箱を出す。

「なに?」
「…誕生日プレゼント」
「え?」
あまりにもショックを受けてるので
呆気に取られて、手に持った箱を見つめる。

「初めて作ったのに…。」
勝手に開いた箱の中にパウンドケーキとバスケットボールをデコペンで書いたクッキーが出てきた。

もう一回言うけど、こんなにツンツンしてるのに
こんなのずるすぎるでしょ。
両手で顔を抑えてへたり込む。
その様子を不思議そうに見つめてくる。

「ちょうだい」そう言って片手を差し出す。
「ぐちゃぐちゃだよ?」

「今まで貰ったプレゼントの中で1番嬉しい。」
自分の言葉を聞いて、恐る恐る渡してくる。

「一之倉、誕生日おめでとう。」
「ありがとう。」

君が嬉しそうに笑う。
その顔だけで充分だった。
初めて会った時、壊れそうだった君はもういない。

「えーめっちゃうまいじゃん。」
夕方、誰もいない校舎裏でしゃがみながら顔を見合わせて話す。
学生に戻ったみたいだった。

「嘘…つかなくていいよ。」
そう言って恥ずかしそうにする。
「本当だよ。」

「ミレイは高校卒業したらどうするの?」
「えっ、やめてよ。先生みたいな事いうの。」
そう言って、急に年相応な表情をするので可笑しくなる。

「気になるから。」
そう言ってクッキーを食べながら笑う。
「…笑わない?」
なんだろう。と思ってうなづく。

「文化服飾学院に行きたい…。」
「え?なんで笑うの、いいじゃん。」
そう言ったのを聞いて、ころっと表情を変える。

「ファッションの仕事したいの!」
「うん。絶対向いてると思う。」
「みんな…笑うんだもん!」
そうなんだ?と不思議そうに見る。

「好きなことに夢中になれる性格だよね。ミレイは。」
そう言って、クッキーを食べながら笑った。
どこか気恥ずかしそうにする様子がおかしい。

「よかった。授業もちゃんとでてるし。後は勉強するだけだね。」
「ハイ…頑張ります。」
そう言って、上目遣いでチラチラ俺を見る。

何度も言いかける言葉を飲み込む。

お願いだから。
何も言わないで欲しい。
完璧な君との時間を、目に焼き付けておきたいから。
長いまつ毛と、初めて会った時より伸びた髪。

日が沈んだら、さよならしよう。
もう今日には戻れないから。

瞬きして想像する。
手を握って無責任なことを口走る。
わかりやすく君は喜んで

また、君がひとりぼっちになる。

一瞬の欲を満たすより、心から祈ってる。
また夜が来る前に
君が笑えればそれでいい。
目の前の君は笑ってて、未来を見てる。

これ以上完璧なものはなくて
痛くて甘くて、こんなに最高な誕生日は初めてだった。

「帰ろうか。」そう笑顔で言う。
「また、明日ね。」
最初で最後の嘘をついた。




吉原が朝から私の近くにいる。
休み時間になるたびに、視界に入ってくる。
こういう時は、絶対何か言いたいことがあるって知ってる。

「ねぇ、なに?」

「…。」
私の様子を伺う。
「なんなの。」

「別に関係ねぇんだけど。」
すごく言いにくそうに、周りをキョロキョロする。
そして小さい声で言った。

「バスケ部に聞いたんだけど…、あいつ辞めたんだって。」

少し、心がざわつくけど
吉原の言葉を待つ。

「あいつって?」
「知らねーのかよ。やっぱり。」
なんだか悔しそうな吉原を見て
嫌な予感がする。

「あの、バスケ部のコーチ。名前はしらねぇ。」

それを聞いて頭が真っ白になる。

「へぇそうなんだ。」
なんともないふりする。
「…それだけ。」吉原が、私の返事を聞いて
どこかへ歩いていく。

聞いてないよ。
ずっと浮かれてたから
頭が真っ白になる。
一之倉が
私に言う必要もないんだけど。
そう思いながらも
立ち上がって、隣のクラスに向かう。

「ねぇ、コーチの人もう来ないの?」
同じ中学の女の子に話しかける。

「…え?」急に話しかけられて驚いていたけど、必死な私を見て
「男子の方のコーチの人?」そう聞き返される。

何も答えられない。

よく知らない。
知らないから、聞くしかないんだよ。
私、一之倉のことよく知らない。
少し泣きそうになる。

「多分。そう。」そうやっと言って目が泳ぐ。

「あの人かなぁ…。最初から、病休になる先生の代理だったから長くはなかったみたいだよ?」
「そう、なんだ。」


「うん。うちの学校有名じゃないし
実業団の強いチームの人だから、
なんでボランティアでうちのバスケ部
見てくれたんだろう。って男子が言ってた。」

私が目に見えて落ち込んでいくから
その子が心配そうに見つめる。

「でも、今日は挨拶にだけ来るって言ってた気がする。」

それを聞いて、顔を上げる。
「ありがとう!」

そう言って、駐車場に向かって走る。
久しぶりに走ったから息が上がって
あまりうまく足が進まない。

駐車場に、車を見つけた。
多分、学校には来てる。
職員室かな…?
なんで、今日に限って見つけてくれないの。
何も言わないでさよならする気だったんだ。

職員室にもいない。
校舎裏にいるのかな。
初めて会った場所、頭に初めて会った時の顔が浮かんだ。

なんで一之倉あそこにいたんだろう。

足を走らせる。
やっぱりここだった。

「一之倉!」
大好きな後ろ姿を見つける。
少しビクッとして、ゆっくり振り返る。

「珍しいじゃん。」
いつも通り、あの目で見つめる。
私を見てる。

「ミレイが授業さぼってるの」
いたずらっぽくそう言って
少し眉毛を下げてる。

息が上がってうまく話せない。
その様子をずっと一之倉が見つめていた。

「やめちゃうの?」
やっとさっき聞いたことを口走る。

「辞めるとか、寂しい事言わないでよ。
契約満了だよ。」

「…そういうことじゃなくて。」
少し怒りながら近づく。

もう会えなくなっちゃうの?
そう聞きたいのを我慢する。

何から伝えればいいんだろう。
何を伝えても君を困らせる。

「私…。」
言いたい言葉が出てこない。

「俺さ」
一之倉が遮る様につづける。
「コーチ出来るか自信なかったんだよね。
興味あって大学の時コーチングの資格とったくせに、勇気出なくてさ。」

ただ耳を澄ました。
「でも、ミレイに会って見てたら出来るかもって勇気もらった。」

「ミレイのおかげだよ。」
そう言って弾ける様に笑う。

私だって、一之倉に会って毎日が楽しくなったんだよ。
一之倉が私を変えたんだよ。

「だから、もっと勉強してバスケ続けながらまたコーチになるよ。」
そう言った後、近づいてきて小指を立てる。

「ミレイは、文化服飾入るんでしょ?」

黙ってうなづいて、もう一度一之倉の顔を見る。

「入学したらもう一回会おう。約束。」
私も小指を立てて指を交える。

あの夜のキス以外で、初めて一之倉に触った。

「絶対だよ?」
「うん。だから俺との約束守って、勉強して。」
そう言って顔を覗き込む。

「わかった。」
私が今にも泣き出しそうに言う。
またあの目で私を見つめる。
一之倉の黒目が揺れるのを初めて見た。

こんなに散らかった気持ち。
上手に拾ってくれる。
でもこんなに溢れてるよ。

頭に手を置かれて引き寄せられて、
おでこにキスされた。
世界の真ん中にいる気分になる。

大好きなニオイがして、ドキドキする。
本当に、本当に、大好きだった。
「またね。」

私達は終わった。
初まってもいなくて。
お互いの事もよく知らない。

私はまだ18で、

求め方もわからなくて
好きって伝え方も曖昧だった。
ただ痛くて甘いこの気持ちだけが
この時を思い出すといつも蘇る。

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